あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

絶対君を好きにならない(DQ6ランド主)

2020年04月18日 | スクエニ関連

 

 

DQの主人公の名前は「イザーク」です。

物語最初の頃の「ランド×主人公」のギャグSSの再掲です。

再掲にあたり、後半をほぼ書き直し、改訂しています。

噛み合わせない会話を楽しんで頂ければ嬉しいです。決してBLにはならないマン。

大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<絶対君を好きにならない>


差し出された見慣れた菓子に、イザークは何回か瞬きを繰り返した。
差し出したランドは照れ臭そうに、口をへの字に曲げて、そっぽを向いている。
イザークは顔を上げ、もう一度その菓子を見下ろした。
「黙ってないで何か言えよ」
自分と菓子を交互に見るだけで無言のイザークに、とうとうランドが痺れを切らして不機嫌そうに唸った。
その様子にイザークは困ったように身を引くと、
まるで組み手でもするかのように半身を逸らし、顔を引き攣らせた。
まるで真夜中に幽霊にでも出くわしたかのような反応だった。

「早くこれを受け取れ。そして即行、俺に寄越せ!」
「意味が分からないよ」

イザークはランドが言い終わる前に台詞に被せるように言い返した。
ランドが押し付けようとしている菓子はチョコレート。
そう明日はバレンタインなのだ。
幾ら世俗に疎いイザークでも、此処数日ターニアが嬉しそうに、
チョコレート三昧なおやつを作ってくれるので、分かっていた。
バレンタインは普通、女の子が男の子にチョコを渡して告白するというイベントの筈。
ランドが自分に押し付けようとしている意味が分からない。
然もまた自分に渡せと言うのだ。
イザークの素早い反撃に絶句していたランドはやっと我に返った。
言い返そうと口を開閉しているのだが、なかなか上手く言葉に出来ないようだ。

「君に戻せって言うのは、これを僕がターニアに渡して、ターニアから君に渡すように言えって事?
イヤだよそんなこと。ターニアからチョコが欲しいなら、君が直接彼女に頼むべきだ」

ランドがターニアを好きな事は村の誰もが知っている事だ。
ターニアは幼い頃に両親を失くし、長年たった一人で暮らしてきた。
ターニアは、顔が可愛いだけじゃなく気丈で優しく、村の誰からも愛される少女だった。
そんなある日、村の外れで血塗れで倒れていたイザークを見付け、懸命に看病し、
イザークが記憶を失くしている事を知ると、血の繋がらない兄として自分の家に住まわせたのだ。
そんなイザークをランドが歓迎する筈も無かった。
何処の馬の骨かも分からない男が、恋焦がれるターニアと一つ屋根の下暮らしていると言うのだから、
好きになれる訳が無かった。
何とか村から追い出そうと、イザークは毎日言われのない難癖を付けられたり嫌がらせを受けたりしてきた。
今回もそうなのだろうか。
超が付くほど気が優しく、基本的に争いを好まないイザークは顔を曇らせる。
自分が困るだけならいい。ターニアに迷惑を掛けたくなかった。

「違う!そうじゃない!」

急に大声で怒鳴られ、今度はイザークが絶句する番だった。
余程興奮したのかランドは顔を真っ赤にさせている。
まるで全力疾走をしてきたかのように荒い息だ。
イザークは圧倒され小鹿のように身を竦ませている。

「俺は、お前からのチョコが欲しいんだ!」
「………え?」

それは新手の嫌がらせなのかと聞きたくなったが、ランドの真摯な瞳に射竦められ、
イザークは身動き出来なくなった。
必死に今言われた事を理解しようと試みる。
それは余りにも突拍子の無い事で、イザークの理解の範疇を超えていた。
詰まり、自分からのバレンタインのチョコが欲しいという事は、
即ちイザークにランドを好きになって欲しいと言う意味なのだろう。
今迄嫌がらせばかりされていた相手を、どうして好きになどなれるだろうか。
イザークはランドが正攻法では自分が村から出て行かないと思い、
やはり新手の戦術を持ち掛けて来たのかと思い始めていた。
そうで無ければ男である自分からチョコが欲しいなど、思わないだろう。
あんなにターニアが好きだと公言しているランドが、
今更、血の繋がらない兄である自分を口説くなど到底理解出来ない。
イザークは名前以外、自分の事は何一つ思い出せない。
何が出来て何を知っているのか自分自身分からない。
村に暮らし始めて分かったのは、剣の腕が立つ事だけだった。
それと記憶が無いという事は不安で仕方無いと言うことを思い知らされた。
ランドに何度も村から出て行けと言われている。
しかしイザークは自分を知るという事が怖かった。
ライフコッド村から出たくない。その勇気が持てなかった。

「僕は行く処が無いんだ。だから…君が何と言おうと…」
「ちょっと待て!」

ランドがイザークを呼び出してから、全ての会話が噛み合っていなかった。
いい加減、回りくどい言い方では鈍いイザークが気付かないとランドも腹を括ったのだろう。
顔をタコのように真っ赤にさせて怒鳴った。

「からかってなんか居ない!嫌がらせでもない!俺は本気だ!本気で俺を好きになって欲しいんだ!」

イザークは混乱した。ランドはターニアが好きなのだ。本気で好きなのだ。
ランドはイザークを村から追い出したくて長い間嫌がらせをして来た。
追い出したい相手から好きになって欲しいなどと、有り得ない感情だ。
そして、ある可能性を見付けてイザークは憮然とした。まるで子供に諭すように口を開く。

「仮に僕が君を好きになっても、ターニアが君を好きになるかどうか分からないよ」
「あぁぁ!もう!何で分からねぇんだよ!ターニアは関係ねぇ!俺が好きなのはお前なんだ!
…だぁぁ!何だってんだ!…俺がお前を好きになっちゃ悪ぃのか!?あぁ!?」

ランドは髪の毛を掻き乱してぶんぶんと頭を振り、身体を仰け反らした。
鈍い。
イザークは鈍過ぎるのだ。
今迄の言動のせいで、イザークがランドの言う事を信じられないのは無理も無いのだが、
自分本位のランドは次第に腹が立って来る。
好きだと言いつつも獲物を捕らえる前の肉食獣のような眼光でランドはイザークを睨み付けた。
そのまるで脅すかのような物言いにイザークはすっかり萎縮してしまう。

「そんなに分からないなら、こっちに来い!直接分からせてやる!」

徐にランドはイザークの手首を握り込み、捻じるように上に引き上げようとした。
しかし、イザークは既に村を一人で出られるような細身ながら戦士である。
ぶんと振り回して、ランドの手を振り解いた。驚いたのはランドである。
華奢で可愛らしいとさえ思っていたイザークが屈強な自分の手を振り解いたのである。
固まった状態で動かないランドの顔を恐る恐る覗き込んで、イザークはランドの名前を呼んでみた。
しかし反応は無い。逃げ出すなら絶好の好機だろう。
ランドは棒立ちになっていた為にイザークは上手く其処から抜け出した。

「こんな乱暴な事する奴だとは思わなかった。
ターニアだって、絶対君を好きにならないと思う」

呆然とこっちも見返してくるランドを無視して、イザークは時刻の変わりになる太陽を探す。
今は何刻だろうか。
ふと転がったままの小さな菓子が目に入りイザークは憮然として頬を膨らませた。
そして背を向けて座るランドを一瞥すると「べっ」と舌を出しその場を後にした。

「あ、お兄ちゃん。お帰りなさい。お夕飯出来た処だから食べましょう」

イザークが帰宅するとターニアが棚から食器を出して微笑んだ。
いつもと変わらぬ日常の風景だ。イザークはほっと胸を撫で下ろした。
今日遭った出来事は全て忘れよう。悪い白昼夢を見たのだ。
そして明日のバレンタインは隣の山まで剣の稽古に行こう。
そうすれば乗り切れる。後少しで山の精霊のお祭りなのだ。
ターニアの美味しいシチューを食べながらイザークは握り拳を振り上げ気合を入れた。

「…お兄ちゃん。剣のお稽古、気合が入ってるのね。私も明日のおやつは頑張るからね!」

愛らしい妹の勘違いに弱々しい笑みを返しながらイザークは黙々と食事を採るのであった。

 

<了>


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かなり改訂してます。ほぼ新作。
ランド→→→越えられない壁】【イザーク という感じでしょうか。
あんなに苛めるのは好きとしか思ってませんでした(笑

 

 

 


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