あぽまに@らんだむ

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咲き誇る花のように(FFセシゴル)

2020年03月28日 | スクエニ関連

 

 

FF4のED後の「セシゴル」前提のエジゴル、カイゴルです。

ゴルベーザは本名のセオドールになってますので、ご注意下さい。

大きい人受けなので、腐表現ありです。閲覧には充分注意して下さい。

大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<咲き誇る花のように>


聖国家バロン城内。
外壁と内壁に囲まれ、外界から隔離された中庭。
此処は雪が時折降る真冬だというのに、暖かな日差しが射し込んで来ている。
霜が降り日が高くなるにつれ、柔らかくなって来た土に手を差し伸ばしセオドールは目許を綻ばせる。
昨日、セシルに頼んで取り寄せて貰った色取り取りのビオラが届き、植えるのを楽しみにして居たのだ。
魔人であった頃には考えられなかった穏やかな生活。
遣り方は多少強引ではあったが、月から攫われて来て、少しは良かったと最近思えるようになった。
勿論、魔将軍ゴルベーザであった頃の贖罪は果たさなければならない。
それでも、自分は幸せ過ぎるのではと思い悩み、毎回実弟である聖王セシルに窘められるのである。
紫色のビオラを手に取る。
「兄さんの瞳の色に似ているから少し多目に買っちゃったよ」と頬を染めるセシルを思い出し、
セオドール自身も仄かに頬を赤らめた。
暫くビオラのポットを持ったまま感慨に耽っていると、上空から明るいテノールの声が響き渡った。

「セオドールさぁぁぁぁん!いっまひっとりぃぃぃぃぃ?!」

三階に当たる塔と城を結ぶ渡り廊下。
男は其処から話し掛けて来ているようだ。
セオドールは立ち上がるとその声の主を程無く見付けた。
顔の半分を薄布で隠した忍者の装束の王子。その表情は逆光で見えない。

「エドワード殿。セシルはリディア殿の処へ外出中だから、此処には私だけだ」

謁見しに来たのであれば残念だったなと続けようとした時だった。
エドワード王子ことエッジは、その身を渡り廊下から翻し、
まるで翅が舞ったかのように、軽々と真下に着地した。
セオドールはビオラのポットを持ったまま呆気に取られている。
そして瞬きをした次の瞬間には、エッジはセオドールの目の前に居た。

「あ…、あの…エドワード…殿…、セシルは今城には……」

仮にもエッジはエブラーナという一国の王子なのである。
幾ら顔が近いとは思いつつも、セオドールはセシルの顔を潰す訳にもいかず、
やんわりと一歩身体を引いた。
しかし、エッジはにっこりと爽やかな笑みを浮かべ、
がっしりとポッドを持つセオドールの両手をその上から握り締めた。
セオドールは声無き悲鳴を上げる。

「あ~、ご心配無く。俺が逢いに来たのはセシルじゃなく、セオドールさん。あなたですから!」
「え…?私に…?」

花を持ったまま両手を握り締められながら、セオドールはきょとんと瞬きした。
その無防備な表情にエッジは卒倒しそうになる。
この顔を見れただけで、リディアにセシルの事を聴き、
鬼の居ぬ間に遥々エブラーナから来た甲斐もあったというものである。
驚いた表情から困惑し、返答に詰まっているセオドールに、
エッジは努めて明るい声で、話を続けた。
狼の尻尾は見せてはならない。

「そう、セオドールさんが花好きだと聴いて、
エブラーナ地方でしか手に入らない珍しいパンジーの一種、持って来たんですよぉ?
これも寒さ、強いですから、そのビオラと一緒に植えて大丈夫ですからね!」

そう言ってエッジは、懐から大切に薄布で包まれた小さなポットを取り出した。
青にも見える紫の花は、何処かセシルの瞳の色に似ている気がした。
花から目を離せないでいるセオドールにエッジは微苦笑する。

「はい。大切にしてやって下さい。…まぁ、セオドールさんだから、安心してますけどね!」
「エドワード殿……。これを私に届ける為に態々、遠いエブラーナから……」

感動しているのだろう。
ビオラのポットを花壇の前に置き、
嬉しそうに碧いパンジーのポットを眺めるセオドールの目許が光っている。
エッジは満足気に微笑んだ。もう一押しである。

「さぁ、セオドールさん。花達を早く植栽してしまいましょう。俺も手伝いますから。ね!」
「エドワード殿…。私はそなたにそんなに良くして貰う訳には……」

元魔人とは思えない程、おろおろと困惑しているセオドールに、エッジはにっこりと笑った。

「あぁ、いいんですよ。俺が好きでやってるんですから!
…でも、その替わり、植栽が終わったら、俺にも付き合って欲しいんです!
いい処、知ってるんですよ!」
「え…?そなたと…、…か…?」

本来、セオドールの外出にはセシルの許可か同行が義務付けられている。
しかし、エッジは一国の王子。
然もセシルとは碧き星を護った英雄同士である。
セシルとて、エッジの同行ならば、意義を唱える筈も無い。
セオドールはそう判断した。
勿論、エッジの下心になど全く気付いていないからなのだが。

「私などで良ければ付き合おう」
「決まりぃぃぃっ!」
「待ったぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

エッジがガッツポーズをしたのと同時に、遥か上空から雄叫びが轟く。
それは先程エッジがいた渡り廊下よりも遥か上空。
雲の切れ間から騎竜の嘶きまで聴こえた。
エッジは瞬時にその殺気を察知した。
そして驚くべき反射で身を翻し、その騎槍の攻撃を回避した。
轟音と共にエッジが居た場所に深々と減り込む人身程の大槍。
エッジは我に返ると青褪めた顔で、その槍の主、竜騎士に怒鳴った。

「てっ……てめぇぇ!カイン!何しやがる!!!お
前、今本っ気で俺を殺そうとしてただろう!!!!???」
「……お前が汚い手でゴ…、セオドール様に触るからだ」

最期に吐き捨てるようにふんと鼻を鳴らす竜騎士に、
エッジは口許を覆う薄布が宙に舞う位の剣幕で怒鳴り散らす。
セオドールは二人の遣り取りに付いていけず、ただ花のポットを持ったまま固まっていた。
エッジを牽制しつつ、カインは槍を引き抜くと、セオドールに近付く。

「ゴ…セオドール様。ご無事でしたか?あのエロ忍者に何もされませんでしたか?」
「てっ…!てめぇ!俺が下半身無節操みたいに言うな!
俺は純真な気持ちでセオドールさんと付き合いたいと思ってるんだぞ!」
「では聴くが、ゴ…セオドール様を、何処にお連れするつもりだったのだ」
「そっ……それは……、夕日の綺麗な別荘に……だな………」
「………矢張りな。これだからエロ王子は油断出来ん」

ご無事、純真な気持ち、別荘、エロ王子。
全てが理解出来ないセオドールは、既に半泣きになっていた。
カインは自分がゴルベーザであった頃、洗脳し運命を狂わせてしまった憐れな竜騎士だ。
その彼に碧き星を護った英雄の仲間であるエッジと揉めて欲しくは無かった。
内容は判らないものの、揉めている原因は自分であるようなのだ。
口喧嘩を続ける二人を止めようとして、セオドールは動かない脚を必死に引き摺って近寄ろうとした。
これ以上、争いを見たくなかった。
然も自分の為に、自分などの為に仲違いして欲しく無かった。
しかし焦った気持ちに脚は付いて来てくれなかった。
セオドールは前のめりに転びそうになる。
大きな体躯が傾き、支える腕も無事では済まないだろう。
セオドールは悲鳴を飲み込んだ。

「…………二人とも………脚が不自由な兄さんを放って……何してるんだい?」

凍て付く声とはこのことを言うのだろう。
胸倉を掴み合い、喧々囂々としていた二人は、
サイレスを唱えられたかのように、その場で固まった。
そして暫くして音がしそうな程、ぎこちなく背後を振り向く。
其処には此処には居ない筈の聖王セシルが、兄を抱えたまま立っていた。
顔を覆う銀の長い前髪で表情が見えない。

「……エッジ」
「はいぃぃぃぃいぃっ!!!」

エッジはカインから手を放し、その場で一歩兵のように姿勢を正した。
緊張で背中にどっと冷たい汗が出る。

「今日、リディアの処に行くって言って無かったかい?
その君が何故、僕の居ないバロンにいるのかな。
然も兄さんに見た事の無い花まで贈ってさ」

エッジは何も言えなかった。何を言っても殺される。
そんな気がしたのだ。

「…それにカイン」
「…ぁ、あぁ……」

カインはその場でびくんと身を竦ませた。
怒ったセシルの怖さは幼い頃より知っていた。
普段温厚な者は、怒ると人一倍怖い。
激昂はしないだけに更に怖いのだ。
恐怖にカインの視線が彷徨う。

「僕があれだけ戴冠式の際にバロンに居てって頼んでも残ってくれなかったのに、
兄さんの前だけには簡単に現れるんだ」

カインもエッジ同様、何も言えなかった。
もとよりカインは口下手なのだ。
弁解もただの言い訳。
カインはそう考えた。
実は試練の山で修行をしつつも、脚が不自由になったセオドールを陰から護っていたのだ。
勿論、その真意はエッジ同様愛情故だろう。
まぁ、エッジのように下心が無いだけまだマシなのだが。

「セ…セシル…」

其処で一同は蚊の啼くような声に気付く。
そして、その声の持ち主に目を遣ると瞬時に音を出して顔を紅潮させた。
セシルに抱き抱えられるように立っているセオドールが、
居た堪れなくなって顔を真っ赤にさせていたのである。
効かない脚を使ってセシルに頼らずとも自分で立とうと足掻いているようなのだが、
上手くいかず恥ずかしいのだろう。
羞恥に身を縮ませ目許には薄っすらと涙まで浮かべている。
セシルは大きく溜息を吐いた。
セオドールの胸に手を遣り上体を起こさせると、背中に手を添え立たせてやる。
其処でセオドールは嬉しそうにセシルを見た。
それはもう愛しそうに。
エッジとカインが更に赤面する程に。

「セシル。エドワード殿は、態々花を届けに来てくれたのだ。
それにカインも…修行の合間にでも、折角逢いに来てくれたのだから、そう邪険にするな」
「……まぁ、兄さんがそう言うのなら……」

先に戻ってお茶の用意をしていると塔に戻って行くセオドールを見送ったセシルは、二人を振り返る。
その青い瞳は凍て付くように冷ややかで、表情は笑顔な癖に目は笑って無かった。

「…今後は君達でも僕の許可無しでは兄さんに逢っちゃ駄目だからね。……特にエッジは」

ちぇっとエッジは舌打ちするが、内心はもう諦めていた。
あの魔人と呼ばれた美しい人の、あんなに幸せそうな顔を見てしまったのだから、
これ以上、二人の邪魔をするのは無粋だと思った。
出来れば、傷付いた心を自分の手で癒して遣りたかったが、
目に入れ転がしても痛くない!と豪語しそうな程、
兄を愛して止まない聖王の許可を一々取らなければならないのは面倒だった。
然も洗脳が解けた今でも陰のように慕い、護っている寡黙な竜騎士の護衛付きである。
前途多難だ。
でも幸せを願うだけならいいかと思い直す。

「へいへい。分~かりましたよぉ!
…ったく…聖王セシルじゃなくてブラコン王セシルに改名しろぅ!」

エッジの軽口にカインが笑いを堪えるように肩を揺らす。
セシルは表情を崩し苦笑いする。

「そんなの…とっくの昔に城下町じゃ言われてるよ!」

三人は笑い合った。
真冬にしては穏やかな風が中庭を吹き抜ける。
セオドールの植栽しようとした花達が風に揺れる。
その健気な花は厳しい寒さの中、春を迎えても尚咲き続ける。
その存在は何処か、セオドールに似ていた。
厳しい暗闇の時代を一人で生き、闇から解放されても一人生きようとした健気な男。
三人はそれぞれ改めてセオドールを幸せにしてやろうと決意を新たにする。
午後の暖かな日差しの中、セオドールは三人を部屋で待ち続ける。
やがて笑い合っている三人を窓から見下ろし、嬉しそうに、その菫色の瞳を細めた。


<了>

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セシゴル前提のエジゴル、カイゴル!

大きい人が純情なのが好きなのです。

 

 

 

 


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