あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

キスが教えてくれること(FF4セシゴル)

2020年04月18日 | スクエニ関連

 

 

これは、月から攫われて来たゴルベーザ=セオドールとセシルのSSの再掲です。

再掲にあたり改訂した要所が有ります。また兄弟でキスしていますので、

苦手な方は自己回避でお願い致します。大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<キスが教えてくれること>


「チョコレート…?」
セシルはまさか聴き返されるとは思わず、その場に立ち尽くしたまま暫く黙り込んだ。
もうすぐ恋人達のイベント、バレンタインがやって来る。
月での最終戦の後、愛する余り、強引に月から攫って来た兄、
セオドールをバロンの城内に囲ってから数ヶ月。
月に戻る事を漸く諦めたセオドールは、少しずつではあるが、新王セシルの下、
変わっていくバロンに馴染みつつあった。
魔導や剣術、更には政治にも詳しいセオドールは、セシルや側近達の有能な相談役になったが、
世俗の事に関しては、哀しい位に無知だった。
一般的な知識はある。
だが具体的には知らないのだ。
例えば今がそうだ。
セシルが見た事さえない程の分厚い魔道書を開いたまま小首を傾げている。
チョコレートという食べ物は知っているが、どのような食べ物かは見聞きした事が無いのだろう。
バレンタインさえ知っているかどうか怪しい。
セシルと別れてから一人、物騒な環境の中で、
闘いばかりの日々を送ってきたのだから仕方無いのかもしれない。
それはとても哀しい事だ。
セシルは胸が痛んだ。

「確か女性が食べるものではなかったか?それがどうしたのだ」

バレンタインのチョコレートを強請りに来たセシルは、
まさかチョコレートから説明しなければいけない羽目になろうとは夢にも思わず、
小さいながら溜息を漏らした。
大好きな兄とバレンタインをネタに更に仲睦まじくなろうという魂胆だったのだ。
この調子ではチョコレートを貰える可能性はゼロに等しい。
バレンタインまでの数日はチョコレートとバレンタインの説明で終わる事だろう。
しかし魔人と恐れられていたゴルベーザこと兄セオドールは、
セシルが知る人物の中では一番繊細な精神の持ち主だった。
話の流れは分からないものの、セシルの小さな失望を敏感に察知したのだろう。
濡れた菫色の瞳を揺らし俯くと、その表情を曇らせた。

「私はまた、お前を失望させたのだろうか?」

傷付いた兄の様子に気付き、セシルは大いに慌てた。
急いで兄に近付き、その厚い胸に飛び込む。
そして首を項垂れていたセオドールを力の限り抱き締めた。
弟の行為の意図が分からず、されるがままのセオドールは、
震えるように小さく弟の名前を呼んだ。
いつもの堅固な口調では無く、消え入りそうに心許ない。
無敵とさえ思われた元魔将軍は、セシルに対してのみ硝子細工のように脆く、不安定だった。
それは全て罪の意識からなのだろう。
セオドールはセシルの全てを受け入れようとする。
セシルが受ける筈だった父母の愛を、自らが与えようとするかのように形振り構わなかった。
それは償い。
正に無償の愛だった。

「そんなんじゃないよ。ごめん、兄さん。傷付けるつもりは無かったんだ」

剣ダコの付いた大きな掌を姫君にするそれのように取り、ベッドに導く。
身体を反転させセオドールに座るように促すと、漸く二人の視線は逆転する。
セシルとて背が低い方では無かったが、セオドールはセシルより優に頭一つ以上高かった。
切れ長で涼しげな目許が薄っすらと赤くなっている。
少し涙ぐんでいたのだろうか。

「兄さん。僕はそんなに柔じゃないんだ。これでも聖国家バロンの王なんだしね」
「……あぁ、そうだったな」

少しおどけたように言うとセオドールは、ぎこちなく微笑んだ。
だからセシルは引かなかった。
ほんのり赤い目許にキスをしてやる。
セオドールはお呪いでもして貰っているかのように自然と目を閉じた。
セシルは何回も両目にキスをしてやり、満足すると顔を離した。
しかし目を開けるのが怖いとでも言うように、セオドールは瞼を開こうとしない。
ほんの少しだけ顔を上向かせた頬を染めた表情は、まるで恋人にキスを強請る少女のようだった。
セシルはその初々しさに小さく唾を飲み込んだ。
チョコレートやバレンタインの事など既にどうでも良くなっていた。
寧ろ自分がセオドールにチョコレートを渡したい。

「兄さん。チョコレートは凄く甘いんだ」

啄ばむようにセシルはセオドールの唇にキスをする。
魔法が解けた姫君のように、セオドールは目を開く。
微睡みから目覚めた麗人は、目の前の聖王を見上げ不思議そうに視線だけで問うた。

「甘くて蕩けそうな処は、兄さんみたいかな」

何をバカな事をと反論しようとするセオドールの唇をキスで封印し、セシルは悪巧みを始める。
今度はチョコレートをお土産に持って来て、自分が食べてキスで兄とチョコレートを味わおうという企みだった。
そんな邪悪な聖王の思惑など知らず、
実は純粋な元魔将軍は聖なる筈のバロン新王にキスで蕩けさせられながら、必死に無駄な抵抗を試みていた。
バレンタインまで後数日。

 

<了>

--------------------------------------------------------------------------

バレンタインネタでしたが、
セシル、本当に聖王なの?と聴かないで下さい・・・。

 

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 絶対君を好きにならない(DQ6... | トップ | 大きくなる社の源(鬼丸&前田) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

スクエニ関連」カテゴリの最新記事