あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

ベルベットに口付け(FF4セシカイ)

2020年03月24日 | スクエニ関連

 

 

 

物語の終盤でのギャグだと思って下さい。

相変わらずセシルが変です。セシルファンの方すみません。

大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ベルベッドに口付け>


地上に停泊した魔導船の中。
テーブルに置かれた一枚の布切れを前に、
見目麗しい聖騎士パラディンと今では世界で一人となった竜騎士が無言で睨み合っている。
薄水色の布は肌触りの良さそうなベルベットのリボン。
睨み合ったまま動かない大の男達にお菓子を口一杯に頬張りながら可憐な幻獣使いがぼやいた。

「ね~いい加減に月に行こうよ~。私もローザも別に金の髪飾りでいいからさ~」
「莫迦言うなっ!俺だってドラゴンヘルムがある!」

咄嗟にカインが怒鳴り返した。
レベル上げの為、月の地下渓谷を探索していた五人は、
迷宮の奥深くで見付けた宝箱で二本のリボンを手に入れた。
見た目は何の変哲も無いベルベットのリボンなのだが、誰にでも装備出来、
不思議な事に装備したものに相応しい色に変じるのだ。
今はカインを目の前にして薄い水色になったり銀色に変わったりしている。
ローザが長い金の髪を櫛で梳きながら小さく溜息を吐く。
そもそもリボンは女性陣の為の装備なのだろうが、
セシルが何を思ったのかカインに装備させると言い出したのだ。
確かにこのリボンは「瀕死・バーサク・スロウ・スリップ・死の宣告」以外の状態異常を全て防いでくれる。
しかし強敵のモンスターばかりいる月の地下渓谷では何を身に着けていても然程変わりはしない。
セシルもそれを良く分かっている筈なのだ。
それならばせめて、見目麗しい女性陣にリボンで着飾って貰い、
心和もうとするのが男心と言うものだろう。
間違っても大柄で21歳にもなる竜騎士に付けさせる奴は居ない筈だ。

「セシル、俺もリディアにリボン付けて欲しいな~」

口に人差し指を付けて物欲しそうに遠くからリボンを見て居るエッジは、
お預けを喰らった飼い犬のようだ。
腕を組んだまま口をへの字にしてセシルは先程から黙り込んでいる。
カインはとうとう年上らしく観念した。
このままだとセシルは星の危機より大事だと言い兼ねない。
聖騎士にそんな台詞を吐かせる訳にはいかない。
カインは頭痛がして来た。
今ではセシルの手助けの為というより壮大なツッコミの為に、
この危険な旅に付いて来たとしか考えられない。
最もツッコミ担当なんて願い下げなのだが。

「セシル、いいか。一度だけ装備してやる。それで諦めろ」

セシルは、「ぱぁぁっ」とご褒美を貰う前のわんこの表情になった。
城の女官達が恋焦がれ、暗黒騎士団全員の憧れの的だったセシルの見る影も無い。
こんな顔、愛に盲目になっているローザ以外誰にも見せられないとカインは眩暈さえしてくる。
リボンを目の前に暫く睨み付けていたが、覚悟を決めて、
まるで槍を握るかのようにリボンを鷲掴みにした。
自分の髪の毛を梳かし終えてローザが櫛を持ったままカインの許へやって来た。

「私が結んであげるわ。それまで皆は魔導船を降りていて。楽しみは取っておかなくちゃ」

問答無用の女神の微笑みで三人は魔導船から下船する羽目になる。
暫くそのまま時間が過ぎた。セシルにしてみれば、ほんの数分が数時間にも感じられただろう。
空気が抜ける音がして魔導船のハッチが開き、ローザが降りて来た。
そしてその後ろから降りて来た人物に、下船していた三人は「ぽか」っと口を大きく開けた。

「え~っと、カイン…だよね?」
「おい…ローザ、この別嬪さん、何処から連れて来たんだ?」
「……やっぱり僕の予想した通りだ」

カインは耳の横で一纏めにしていた髪を少し下で結び、その癖のない白金の髪を肩や背に散らしていた。
リボンは色ばかりか形まで変じて大きめの花弁のようにカインの小さな顔を包み、
瞳の色と同じアイスブルーの色で、羞恥に染まった薔薇色の頬を際立たせていた。
リボンに合わないからとドラゴンメイルなど装備は全て脱がされ、
柔らかい色の普段着を身に着けている。
その色から恐らくセシルの私服だろう。
淡い色のマントで身体のラインを隠し、恥かしいのか自分を凝視してくる三人の目をまともに見られないでいる。
食い入るように見られ、カインは居た堪れなくなってローザの後ろに隠れる。

「あらあら、ちゃんと見せないとセシルに許して貰えなくてよ?」

ローザがいつもの女神の微笑みをカインに向ける。
初恋の相手にばっさりと肩口から斬られ、カインは半泣きになる。
まるでこれでは女装だ。
薄化粧くらいした方が腹を括れたかもしれない。
カインは自暴自棄になっていた。
口をへの字に曲げると覚悟を決め、セシルの前に大股で歩み寄って行く。
誕生日に指定した玩具を貰えた時の子供のような顔をしてセシルはカインを見詰めている。
満面の笑顔だ。
物騒この上ない。
リディアはげんなりした。
エッジはいつでもセシルを羽交い絞めに出来るようにセシルの背後に廻った。

「……これで気が済んだだろう?さっさと月へ行くぞ」
「お前、自分の兄貴と伯父がピンチだって自覚あるのか?」

胸の前で腕を組み、呆れ顔で睨んでくるカインにセシルはただ見惚れるばかり。
説教さえまともに聴いていないようだ。
ローザはリディアに「さっさと上でお茶飲んでましょ」と声を掛け、乗船してしまった。
カインの貞操の危機より可愛いリディアの姿が見えなくなってしまった事を気にして、
エッジもその後を追う。
残ったのは哀れな生贄と竜騎士に恋焦がれる聖騎士の二人だけ。

「やっと…二人切りになれたね」
「…二人切りって…お前何言っ…、うぉ!何で二人だけなんだ!お前等、薄情だぞ!」

既に筋力では差が付いてしまっているセシルに、がっちり二の腕を掴まれては逃げる事など出来ない。
カインは悲鳴を上げた。
結んだ髪がぱらぱらと額や胸に零れ、異様な程の色香を醸し出している。
必死に抗えば抗う程、捕獲者としてセシルは更に興奮するのに気付いていないのだ。

「いや…いやだ!放せ!放さないと…」

身体を密着させようとするセシルにカインは涙目になって身を捩る。
こんな白昼堂々、人々が通る往来で竜騎士に狼藉を働こうとする聖騎士を何とか止めなくてはバロンの将来は危ない。
婚約者であるローザは何をしているのだ。
寧ろ拍車を掛けるような行為をしていなかったか。
カインは関係のない事をあれこれと思い浮かべながら近付いて来るセシルの顔を押し遣っていた。
このままでは自分の身が本気で危ない。
最終手段しか無いだろう。
カインは踏ん張りながら何とか声を絞り出した。

「…俺を放さないと…!」
「放さないと?」
「………………二度と口効かないぞ」

魔導船の中でこっそり覗き見ていた三人は盛大にすっ転んだ。
「子供か!」エッジが裏拳で宙に突っ込みを入れる。
ローザも「さっさと押さないから…」と困った顔で溜息を吐いた。
「本当にこの人セシルを好きなのかしら…」と思いつつもリディアは、
「カイン結構セシルを分かってるわね…」と感心した。
何はともあれ、カインを路上で押し倒そうとしていたセシルは機能を停止し、
その場で硬直してしまっている。
安堵の吐息を漏らし、ぱんぱんと埃を払った後、
固まったままの聖騎士をその場に残しカインは魔導船に戻って来た。

「取り敢えず自力で操は護れたみたいだな」

ロビーでカインを出迎えたエッジは悪戯が成功した子供のような顔をして笑った。
それに不機嫌な顔を返しカインが集まって来た三人を睨み付ける。

「お前等……覚えてろよ」
「「や~ん怖ぁぁい」」

怖い顔で竜騎士は凄んだつもりだったが、
可憐に着飾ったままだったので女性陣二人には何のダメージにもなっていないようだった。
しゅると簡単にリボンを外し、カインはリディアにそのままリボンを渡す。
肩を竦めリディアはそれを受け取った。
みるみるリボンが愛らしいピンクに色が変わっていく。
変化するリボンを見ながらリディアが笑う。「セシルが泣いちゃうわね」とからかう事も忘れずに。
結局リボンはリディアとローザが装備する事になった。
カインも安心してドラゴンヘルムを装備している。
その後、月の地下渓谷でセシルがレアドロップ目的で、
密かにトーディウィッチと暗黒魔道士狩りに奔走していたのは誰も知らない。


<了>

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リボンの設定は私の勝手な解釈です。

 

 

 

 

 

 


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