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心から誇れるもの(清賢)

2020年04月01日 | 図書室のネヴァジスタ関連

 

 

これは「図書室のネヴァジスタ」という同人サークルのゲームのSSです。

多数の登場人物が出て来ますので、詳細はwiki先生か、

ゲームの紹介https://booth.pm/ja/items/1258でご確認下さい。

少しでも興味を持って下さった方はプレイしてみて下さい。

下記のSSSはネタバレでもあるので、ご注意下さい。

大丈夫な方は下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<心から誇れるもの>


いつもの週末。
いつからか賢太郎が幽霊棟に行かないと清史郎が泊まりに来るようになっていた。
電車とバスを乗り継いで当たり前のようにドアの前に立っている。
冷えた身体を心配してココアを淹れてやると毎回合鍵を渡せと剥れる。
その繰り返しだった。
高校を卒業して大学に進学し、就職して稼げるようになったら、考えてやるの一点張りで、
賢太郎は決して清史郎に合鍵を渡さない。
兄を盲愛している清史郎が済し崩しに転がり込む事は容易に想像出来たからである。
それで無くても週末を賢太郎の元で過ごすので、無理矢理近くの駅まで車で送って帰す程なのだ。
大人のケジメだと言い聞かせ、賢太郎は決して態度を変えなかった。

「ねぇ、兄ちゃんは彼女、作らないの?」

家まで仕事を持ち込み、賢太郎は自らの草稿の最終チェックを行っていた。
無言でパソコン画面の活字を追う賢太郎の邪魔をするかのように清史郎が呟いた。
聴いてないのが丸分かりの生返事しか返って来ない。
清史郎はベッドに寝転んで携帯を弄っていたが、一向に返事を返さない兄に徐に起き上がった。

「折角俺が頑張って就職して兄ちゃんと同居する事になっても、
お嫁さん来たら「すぐ出てけ」とか言わないよね。
お嫁さん、すぐ貰わないよね。また黙って遠くに行っちゃったりしないよね」

清史郎がベッドを下りて、賢太郎が仕事をしているリビングテーブルの前に座り、身を乗り出して来る。
その真剣な声色に賢太郎は仕方無く視線を上げた。
目が良過ぎる為、遠視用の眼鏡を掛けて仕事をしていた賢太郎は、
上目遣いで清史郎を見てから、眼鏡を外し端を口に銜えた。
清史郎は黙って言葉を待っている。
賢太郎は仕事の続行を諦めて、大きく溜息を漏らした。
今の状況で彼女は欲しいが維持する自信は無かった。
手の掛かり過ぎる弟と放っておけない幽霊棟の子供達。
永久にでは無いが、後数年は見守ってやる必要はあるだろう。
彼等が成人し、自分の責任を果たせるようになる頃、
そっとその背を押し、消えればいいと思っている。

「見張るように毎週末来てる奴がそれを聞くか?それに、俺はちゃんと約束は守る」

幼い頃に交わした約束。
清史郎の願い。賢太郎は自分の責任は果たす決意をしていた。
清史郎がまた暴走しないように、精神的に成熟するまで見守る義務があると思っている。
その為には、自分の事を後回しにして、今迄割かなかった時間の全てを弟と彼等に使おうと考えていた。
それが賢太郎の出来る贖罪だと信じているからだ。
言葉に出し、伝える事はしない。
ただ自分がそう決めて居ればいい。賢太郎はそう思っていた。

「メールも返すし、電話もしてるだろ。態々少ない小遣いを削ってまで此処に来るな」
「別に見張ってる訳じゃないよ。心配してんの!」

賢太郎は思わぬ清史郎の発言に、幼い子供のように目を丸くした。
賢太郎の反応に清史郎は頬を染める。

「だって…兄ちゃん。全部1人で背負い込もうって思ってそうだから、
無理すんじゃないかって心配なんだ。
それに、俺が此処に来るのは、兄ちゃんの傍に居たいってのもある訳だし!」

幼い頃の記憶。
曖昧だった賢太郎に対して、清史郎はその全てを大事に大事に憶えていた。
自分を省みてくれない両親。
幼い弟。
擁護されるべき年齢だった賢太郎は愛情と呼べるものは与えて貰えなかった。
寂しい気持ちを全て愛情に変えて清史郎を育てた。
真っ直ぐに。純粋なままで。透明に澄んだ清史郎の心は、全て賢太郎が育み、護ったものだった。
別れの日。
涙を零し、二度と癒えないだろう心の傷を負った賢太郎を思い、清史郎は今でも胸を痛める。
きっと兄はあの時、心を封じてしまったのだ。
傷付かないよう誰にも頼らず一人で今迄生きて来たのだ。
その賢太郎がネヴァジスタ一件の騒動で本来の輝きを取り戻した。
だが、傷は癒えてないままだ。護らなくてはならない。
大人になって、賢太郎が頼りとするような弟にならなくてはならない。
清史郎はそう思ったのだ。
憎しみと哀しみの連鎖を断ち切ると言い、賢太郎は誰も恨まなかった。
記事を書いたことを深く反省し、その責任を果たすと言った。
賢太郎は清史郎が愛して止まない誇れる兄に戻ったのだ。

「あのな、いつまでも俺にべったりじゃ、お前こそ彼女なんか出来ないぞ」

困ったように笑うと賢太郎はまた眼鏡を掛けて、向かいに座る清史郎のおでこを人差し指で小突いた。
照れたように笑い清史郎はおでこを擦り笑う。
兄は弟を。
弟は兄を真摯に思い、日々温かくなりつつある初春の夜は更けていった。

<了>

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賢太郎は言葉少なって気がします。
BT2の海水浴だって好奇の目で見られるマッキーを気の毒に思い帰したのだと思うのです。

 

 


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