あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

幽霊棟の宝物(賢太郎中心)

2020年04月02日 | 図書室のネヴァジスタ関連

 

 

これは「図書室のネヴァジスタ」という同人サークルのゲームのSSです。

多数の登場人物が出て来ますので、詳細はwiki先生か、

ゲームの紹介https://booth.pm/ja/items/1258でご確認下さい。

少しでも興味を持って下さった方はプレイしてみて下さい。

下記のSSSはネタバレでもあるので、ご注意下さい。

大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<幽霊棟の宝物>


槙原の居ない週末。
賢太郎も出版社の締め切り前で幽霊棟に来れないと聞いた子供達は、
久し振りに酒盛りを決行する事にして、全員で買出しに出掛けて居た。
それぞれ好きな洋酒・日本酒の類を、分からないように遠方の百貨店で買い漁り、
辻村が簡単に酒の肴を作る為の食材とスナック菓子などを大量に買い込んだ。
両手に抱える程の紙袋やビニール袋を提げて長い山道を雑談をしながら帰ると、
路肩に見慣れた車が停まっていた。
皆が顔を見合わせる。
誰もが知る車種。
皆が愛する津久居賢太郎のものだった。

「兄ちゃん、無理して来たのかな。最近徹夜続きだったのに」

心配気に顔を曇らせ、実弟である清史郎がぽそりと呟いた。
自然と皆の脚が早足になる。
逢いに来てくれたのならば、早く顔を見たかった。
煙草を吹かしながら眩しそうに目を細める仕草が見たかった。
食堂に続くドアを勢い良く開けて、清史郎は声を殺した。
そして続いて入って来た白峰達を振り返ると、
急いで口を横に広げ「し~~!」と声を出さないように指示を出した。
揃って目を瞬かせた子供達は、大人しく清史郎の言うまま声を殺すと、忍び足で食堂に入って行った。
朝早く出掛けた為、まだ夕刻にもなっていない午後の時間。
大きな食堂の窓から、柔らかな午後の日差しがソファに横になる賢太郎の頬に掛かっていた。
その傍らには、同じ名を貰った大きな犬が寄り添うように横になっている。
賢太郎は静かに目を閉じて転寝をしていた。
連日の徹夜で疲労がピークに達したのだろう。
そんな状態でも自分達に逢いに来てくれたのかと皆、胸を熱くする。

「うわぁ…兄ちゃん…、こんな無防備に寝ちゃって…。
あ、賢太郎、動いちゃ駄目だかんな!兄ちゃん起きちゃうだろ。
そ、そのまま一緒に寝てるんだ」

皆の気配に気付き、清史郎の犬である賢太郎は耳を動かし顔を上げた。
しかし、犬の賢太郎が動いてしまえば身体に手を廻し眠り扱けている賢太郎を起こしてしまう。
折角寝付いている兄を起こしたくは無かった。

「こんなにあどけない顔して…。可愛い…賢太郎…。あ、俺デジカメ持って来る」

肩の力を抜いて静かに寝息を立てている賢太郎を食い入るように見ていた白峰は慌てて自室に上がって行く。
最近すっかり嵌っているカメラで賢太郎の寝顔を納めるつもりなのだろう。

「じゃ、それまでに僕が携帯で撮っておく。賢太郎、とってもキュートだしね」

極親しい者にしか分からない程度に顔を綻ばせた和泉が、
早速ポケットから携帯を取り出し、カシャカシャと賢太郎の寝顔を写真に納めている。
横で清史郎が「俺も俺も!」と同じく携帯を取り出して居た。

「まだ春先で冷えるんだぞ。このままじゃ、風邪を引くだろう」

不器用ながら優しい性格の辻村が、ソファの横に積まれているブランケットを掛けようとするが、
「起きちゃうかもしれないっしょ?」と久保谷に止められ、仕方無く珈琲を淹れに厨房に入って行った。

「しっかし…、監禁されていたこの場所で眠れるとは…。
大分俺等に心許しちゃったんだね…。あんた…」

久保谷が他の皆に聴こえない程小さい声で呟く。
そして蝶が灯りに吸い寄せられるように、ふらふらとソファに近寄って行く茅に、
「ほら、起こさないよ。茅サン」と軽くお預けを食らわせる。
急いでデジカメを持って下りて来た白峰が、喜んでシャッターを切る。
それでも賢太郎はぐっすりと眠り込んで居て、
小声ながらも大騒ぎしている子供達の気配に起きる様子は無かった。
久保谷が目を細め、困ったように笑う。

「…でも、俺等が迷惑を掛けた分、あんたに居場所を作ってやれたんなら、
少しは慰めになる」

辻村の淹れる珈琲の香りが食堂まで漂って来る。
炒った豆の香りで、賢太郎も暫くすれば起きるだろう。

「兄ちゃん、こんな顔晒して…。起きたらちょっと説教かもな」
「でも、可愛いよ。一杯写真と動画撮れて嬉しいや」
「うん、津久居さんは可愛い」
「セクシーなの、キュートなの、どっちにするのよ♪…だね」
「どっちも犬だけどな」
「みんな…齧り付きっすね…」

ソファの前に皆で座り込んで、午後の微睡みから目覚める人を待つ。
犬の賢太郎は遊んで貰えるのかと嬉しげに尻尾を振っている。
幽霊棟の子供達は、それぞれ目を輝かせながら、紫にも見える瞳が開かれるのを、
今か今かと待ち続けた。

<了>

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賢太郎起きる→デジカメで動画も撮影されてたのを観る→自棄酒→すぐ寝る
→また撮影される……の無限ループ!賢太郎は幽霊棟の子供達に大切にされてればいいよ!

 

 

 

 


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