あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

幸福なる狂気(峰賢)

2020年03月28日 | 図書室のネヴァジスタ関連

 

 

これは「図書室のネヴァジスタ」という同人サークルのゲームのSSです。

多数の登場人物が出て来ますので、詳細はwiki先生か、

ゲームの紹介https://booth.pm/ja/items/1258でご確認下さい。

少しでも興味を持って下さった方はプレイしてみて下さい。

下記のSSSはネタバレでもあるので、ご注意下さい。

大丈夫な方は下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<幸福なる狂気>


「清史郎、どうしたんだ。また怖い夢でも見たのか?」

落ち窪んだ目を優しく綻ばせ、賢太郎は首を傾げ笑い掛けて来る。
気だるそうにベッドから身を起こし、呆然と立ち尽くす白峰に触れようと痩せた腕を伸ばして来た。
しかし焦点の合わない目の所為で伸ばされた手は宙を彷徨い、
風に揺れる花のようにゆらゆらと揺れ続ける。
賢太郎は「清史郎」と言った。
清史郎の幻覚を見ているのだ。
瞳には白峰を映しているのに、見ているのは幼い頃の記憶なのだ。
どう反応していいのか分からず口を紡ぐ白峰に賢太郎は再度口を開いた。
子供が大人びた口調を真似するような幼い言動に胸が痛んだ。

「仕方無い奴だな。一緒に寝てやるから枕を持って来い」

ほらと吐瀉物で汚れた毛布を捲くり、賢太郎が手招きする。
情景がぼやけていく。
其処で白峰は自分が泣いている事に気付いた。
賢太郎は行ってしまったのだ。
此処で無い幸せな過去の世界に。
清史郎と共に過ごした幼い日の自分に戻ったのだ。
その場に立ち尽くし、涙を流し続ける白峰に、賢太郎は不思議そうに視線を戻す。

「…お兄ちゃん、泣いたりして。何処か痛いの?」

記憶が途切れ、その紫の瞳に光が戻る。
賢太郎にしてみれば、突如、目の前に現れた大きな高校生が大粒の涙を流しているのに驚いたのだろう。
切れ長の瞳を大きく見開いて動揺している。
白峰は漸く我に返り、手の甲で急ぎ涙を拭うと、ベッドに座る賢太郎の横に腰掛けた。

「大丈夫だよ。何処も痛くない。安心して」

自分を拘束した時のきつい印象だった紫の瞳は幼い色を宿し、
賢太郎は安堵したように微笑んだ。

「お兄ちゃん。清史郎を知らない?俺の弟なんだけど、急に居なくなったんだ」

白峰は茅を思い出し、背筋を凍らせた。
引き攣りそうになる顔の筋肉を必死に笑顔のまま固定し、賢太郎に笑い掛ける。
刺激しては駄目だ。
現実を突き付けては駄目だ。
永遠なる苦痛から、賢太郎は解放されたのだ。
溢れて来る涙を堪える。
今、賢太郎が生き長らえるには、幸福だった時の記憶が必要なのだ。

「今は昼間だから、きっと清史郎は遊びに行ってるんだよ。もうすぐ帰るから大丈夫」

辻褄は合っていただろうか。
不安な要素は無かっただろうか。
細心の注意を払って言葉を選ぶ。
賢太郎はどうやら納得したようだった。
幼い仕草で大きく頷くと、ベッドに横になろうと身体を傾ける。
しかし、また目の焦点が次第に合わなくなって、うろうろと暗い室内を彷徨う。
白峰の心も不安に揺れた。
金具の音がして、賢太郎の腕と首を繋ぐ枷が毛布の中に沈んでいく。
こんな状況になっているのに、此処まで彼を追い詰めてしまったのに、
まだ彼等は拘束を解いて居なかったのかと激しい憤りを感じて、眩暈がした。
しかし、賢太郎は徐々に表情を失くし、虚ろな瞳をして呟いた。
目の前の見えない何かに語り掛けている。
そんな表情だ。

「大丈夫だ。母さんや父さんが居なくても、俺が清史郎の傍に居る」

白峰が声を失い、溢れ出す涙を見られたくなくて、賢太郎に背を向け顔を逸らした。
尚も賢太郎は囁く。
喪ってしまった愛する弟に言い聞かせるかのような過去の言葉。
あの頃の賢太郎は心からそう思っていたのだ。
彼が負った心の傷から血が溢れ続けて、彼の無垢な愛情までも真っ赤に染め、
黒く固めて醜く変貌させた挙句、見えないように覆い隠してしまっただけなのだ。

「…ああ。ずっと傍に居る。これからも、ずっと」

賢太郎は囁き続ける。それはいつまでも白峰の後悔を針のように責め続けた。


<了>

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白峰のお兄ちゃん!と同じように、賢太郎が退行しちゃうEDも萌えるんじゃないかと…。

 

 

 


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