これは「図書室のネヴァジスタ」という同人サークルのゲームのSSです。
多数の登場人物が出て来ますので、詳細はwiki先生か、
ゲームの紹介https://booth.pm/ja/items/1258でご確認下さい。
少しでも興味を持って下さった方はプレイしてみて下さい。
下記のSSSはネタバレでもあるので、ご注意下さい。
大丈夫な方は下へスクロールしてご覧下さい。
↓↓↓↓
<可愛いお兄ちゃんは好きですか>
「晃弘、兄ちゃんと付き合ってるの?」
ある土曜の昼下がり。
昼食後のお茶を皆で楽しんでいた際、毎度お騒がせな清史郎が、突然切り出した。
盛大な音を立てて、飲んでいたお茶を噴いた辻村と久保谷は、
目の前にいた白峰と和泉に謝る余裕も無く、その場で椅子を蹴って立ち上がった。
当人の茅は、慌てる事も無く右手の中指で、そっと眼鏡を直す。
正面に座った清史郎は大きな猫目を糸のように細め、注意深く茅を見詰めたままだ。
「お前馬鹿か!賢太郎も茅も男だぞ!?付き合う筈ないだろう!?」
「そ…、そうだよ清ちゃん。あれでも賢太郎は常識人だし、清ちゃんも実兄が淫行なんてイヤだろ!?」
一応、分別のある突っ込みをする辻村に対し、久保谷は明らかに動揺しているのか、
突っ込み処が分からない状態だ。
「もう汚いなぁ…」と思いの外、冷静にハンドタオルで顔を拭く白峰と、
無言のまま半袖で顔を拭く和泉は、二人の勢いに乗り損ない、事の成り行きを見守っている。
茅は黙ったままだ。
「淫行って、兄ちゃんが女役なら問題ないんじゃない?ねぇ、晃弘」
「…ちょっ!!…賢太郎が女役って!女役って何それ!?」
呆気羅漢と久保谷の突っ込みに返す清史郎の言葉に素早く反応したのは、
顔を拭いていた白峰だった。
いつも大人で格好良く、理想の男だった賢太郎が、茅に組み敷かれている場面を想像してしまったのか、
生娘のように顔を真っ赤にして辻村と久保谷同様、その場に勢い良く立ち上がった。
「…知らないの春人。男同士で女役って言うのは、つ…」
「咲っちゃんは黙って!!!」
きょとんとした白峰を気遣うように、久保谷が鋭く和泉を制する。
大人びた物言いをしているが、お坊ちゃん育ちの白峰に男同士の性行為を聞かせるには忍びなかったのだろう。
不服そうに唇を尖らせた和泉を確認して久保谷が大きな溜息を吐くと、
すとんと椅子に座り直した。
その様子に辻村も白峰も漸く冷静になり、渋々その場に座る。
清史郎は皆の様子を気に留める事なく、茅を凝視していた。
(付き合っている事は津久居さんに口止めされてるし、困ったな)
清史郎の指摘通り、茅は先週、賢太郎に告白し、猛烈なアタックにより受け入れられ初体験も済ましている。
勿論、賢太郎は皆には絶対に言うなと固く口止めして来た。
茅もその意見には同意しているが、こんなに早く清史郎に勘付かれるとは予想外だった。
賢太郎の弟である清史郎に嘘は吐きたくない。
しかし賢太郎には言うなと口止めされている。
沢山の瞳に見詰められる中、茅は仕方無く口を開いた。
「清史郎。悪いけど、その質問には答えられないな」
白目を剥く清史郎以外の幽霊棟メンバー全員が顔色を失い、同時に心の声で突っ込んだ。
((((それ付き合ってるって言ってるのも同然だから!!!!))))
皆の脳内で茅に抱き竦められ、欲望の赴くまま蹂躙されている賢太郎が思い浮かぶ。
居た堪れなくて、その場にいる全員がその妄想を振り払うように頭をぶんぶんと横に振った。
(やっぱ賢太郎はあれでお人好しだからな。茅に迫られて断れなかったのか)
(でででででも、賢太郎が女役って…。茅にされてるって事!?えええぇぇぇぇ)
(今度、晃弘に気絶してる賢太郎の写メ撮って貰お♪)
(………あんの犬っころ……茅サンを誑かしやがって…。でも…)
辻村も白峰も和泉も久保谷も動揺し、必死に自分の中で消化しようと脳内葛藤している。
その中、清史郎の表情が段々厳しくなっていく。
茅は激しく動揺した。賢太郎と恋仲にはなったものの、清史郎も大事なのだ。
清史郎に嫌われるのは辛い。
しかし賢太郎との仲を反対されても、別れる事は絶対に出来なかった。
「晃弘。俺が聴いてるのに、否定も肯定もしないの?」
「僕にはその権限がない」
恥ずかしがりの賢太郎が口止めしたのは明らかだ。
年下の然も同性の少年に身体を許しているなどと、皆に知られるのは絶対に嫌だと茅を脅したのだろう。
それを当然のように受け入れる茅は本当に賢太郎を大事に思っているのだと皆が理解出来た。
しかし清史郎は面白い遊びを見付けたかのように不敵に笑っただけだった。
「ま、いいけどね。晃弘が答えないなら、兄ちゃんの身体に聴けばいいし」
((((今、身体って言った!?身体って言ったよね!?))))
清史郎も直接賢太郎に同じ質問をして、普通に答えて貰えないと分かっているのだろう。
それなら強硬手段しかない。
その場に居た全員が賢太郎に同情した。
出来れば「逃げて!」と連絡してやりたいが、皆、賢太郎の事が好きな分、
清史郎も好きなのだ。
告げ口などして清史郎に嫌われたくは無い。
身体に聴くとは言え、実兄にそれ程酷い事はするまいと信じたい気持ちもあった。
恋人である茅も同様で、実弟である清史郎に「酷い事をするな」
と忠告するのも変ではないかと思い、無言のままだ。
(全く……兄ちゃんが可愛い過ぎるのがいけないんだよな…。俺がいるのに!)
真っ青になったまま清史郎を見守る幽霊棟メンバーは、
午後の職員会議が終わり帰宅した槙原の存在にいつまで経っても気付く事は無かった。
<了>
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次回睡眠薬ネタの「清賢」に続きません!