あぽまに@らんだむ

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言葉の替わりに温もりを(京スタ)

2020年03月23日 | BLE◆CH関連

 

 

 

 

腐的な表現がありますので、閲覧には充分注意して下さい。

大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

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<言葉の替わりに温もりを>


真夜中。
スタークはふるりと小さく震えて目を覚まし
冷たい秋の風を辿れば薄く開いた障子だった。
目を擦り寝惚けながら起き出し障子に這って行く。
素足を擦る畳さえ冷たく感じた。
寒い。
独りで寝るのがこんなに寒いなんて知らなかった。
スタークは薄く開いた障子を滑らせ廊下から月を見上げた。
虚圏(ウェコムンド)には気温も湿度も無い。
頬を撫でる風も無い。
あるのは空虚のみだった。
朝も昼も無い。
暗く淀んだ重い雲が上空を支配している。
そんな世界だった。
虚夜宮(ラス・ノーチェス)も、勿論照明や空調なんてものは存在しない。
ただ、壁と屋根があるだけで、砂に直接佇む必要が無くなったと感じただけだった。
柔らかいクッションと揃いの衣装。
スタークが得た物は、仲間以外余り価値の無い物ばかりだった。
虚圏(ウェコムンド)にも月はあったのだろうか。
今では良く思い出せない。
それ程に今、スタークは京楽に満たされていた。
暫くして、ふと自分の手足が冷たくなっている事に気付き、温かい京楽の身体を思い浮かべる。
あの大きな男らしい手に包まれたら温かいだろうなと考え、恥ずかしくなって我に返る。
京楽はきっと満面の笑みを浮かべて掛け布団を押し上げると「おいで」と言ってくれるだろうが、
こんな大柄ないい歳をした男が「一緒に寝て欲しい」なんて言える筈も無い。
そう考えると更に手足の先が冷たく痺れるような気がして来た。
障子を閉めてまた冷たい布団に戻る気になれなくて、スタークは廊下から縁側に出て腰を下ろした。
秋には木々の葉が落ち紅葉し、冬には雪が降り、春には桜が咲く。
此処では現世と同じように四季がある。
その全ての季節を京楽と過ごす事が出来るのだろうか。
自分はいつまでこの弱り切った身体で生きて居られるのだろうか。スタークは急に怖くなる。死ぬ事が怖いのか。スタークは自問する。
嫌、違う。
京楽と離れる事が怖いのだ。
あの熱いと思える程の体温を感じる事が出来なくなるのが怖いのだ。
涼しい位の秋の風にスタークは身体を震わせる。

「眠れないのかい?スターク」

急に声を掛けられて、スタークは小動物のように身を竦ませる。
気配を殺して近付いた訳ではないだろうが、
すぐ傍に来るまで気が付かなかった自分に少なからずショックを受ける。
本当に今の自分は護廷十三隊の平隊士より劣る程の霊圧しかないのだろう。
そして寿命も。
いつまでも返事をしないスタークを心配そうに見遣りながら、京楽はその横に腰掛ける。
僅かに密着した太股の一部からでさえ、京楽の熱が伝わって来て、スタークの鼓動が小さく跳ねる。
冗談じゃない。
初恋をした小娘じゃぁないか。
意識しなくても頬が真っ赤に染まっていくのが分かる。
スタークは恥ずかしくて顔を上げられなかった。無言の時が流れる。

「この前まで凄く夏~っと言う感じで暑かったのに、あっと言う間に秋になっちゃったね」

京楽はまるで独り言のように、話し出す。
スタークは紅潮した顔を見られたくなくて、顔を背けたまま、「あぁ」と素っ気無く返した。
京楽は返事など期待していないかのように続ける。

「1年なんて、きっとあっと言う間だよ。スターク。
秋が深まったら紅葉狩りに行こう。お弁当を持って七緒ちゃん達を誘って大勢で行こう。
冬は雪でカマクラを作ろう。浮竹たち十三番隊と雪合戦も面白いね。
春になったら夜桜見物だ。美味しいお酒を沢山持って行こう」

まるでその一つ一つが想像出来るかのように、京楽は語り続けた。
そして最後にスタークを真正面で見ると、いつもの子供のような顔でにっこり笑った。
スタークは思わず魅入ってしまう。

「そして、秋に君が不安で眠れない時には、眠れるまで傍に居てあげる。
冬に君が寒くて凍えそうな時には、微睡ろむ位に温めてあげる。
春に君が桜を見て淋しいと感じた時には、安心出来るまで抱き締めてあげる」

スタークは薄灰の瞳を見開いた。

「スターク。ボクの思い出には君が、君の思い出にはボクが居続ける。これから、ずっと」
「………恥ずかしい事ばっか言うな」

絞り出した憎まれ口は、涙声になっていなかっただろうか。
スタークは目尻に滲む涙を零れないように必死に堪えながら、京楽の厚い胸に額を押し付けた。
押し殺したような笑い声と「素直じゃないんだから」という囁き声が胸から振動として伝わって来たが敢えて無視する。
胸元に縋るように寝巻き代わりの浴衣を握れば京楽が呆れたように叱る。

「やっぱり…。こんなに身体が冷えてるじゃない」
京楽はスタークの痩躯を抱き上げると「君は体温低いんだから、温かくしないと駄目でしょ」

と過保護振りを発揮して京楽の自室に連れて行く。
スタークは慌てて自室に戻ると主張するが、京楽は無敵の笑顔でそれを無視した。
スタークは抗いつつも京楽の太い首にしがみ付きながら、
その温かい体温に心が満たされていくのを感じていた。
これから、秋も、冬も、春も、そして再び夏も、京楽が望んでくれるなら、彼の傍に居たい。散って逝った仲間達のように、魂の一欠片になるまで、塵芥になるまで、最後まで。
彼の傍で、この温もりを感じられるのなら、生きる恐怖と闘っていける。
スタークは京楽の匂いがする彼の布団に横たわると、
「おやすみ、スターク」と囁く京楽の胸に身を寄せ、そっと目を閉じた。


<了>

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「しょうがない子だね」と京楽が微苦笑するのです。

 

 

 

 

 

 


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