加えて年末と1月初旬にラインがきたのですが、そこに書かれていた約束も守られる事なく、またしても意図的に連絡不能にされ、煮えたぎる思いに火を注がれた気分だったのです。
川上に会えたらシバき回したる!
という思いを胸の奥底に、18時頃にチェンマイに到着しました。
この時、すぐに行ってブン殴りたいと思ってましたが、逸る気持ちを抑えタバコを一本ふかしてからタクシーに乗り、シンクパーク近くに借りたホテルへ直行したのです。
荷物を置いてすぐ、ネット上で確認してた川上のたこ焼き屋へ向かいました。
目的は川上だけ!なので、もちろんガイドブックなどを見ることもなく、チェンマイ!?東南アジアの田舎やろ!?と思ってた私の考えとは裏腹に、意外にも賑やかで人の多さに少しビックリでしたね。
そして、迷う事もなくすぐにシンクパークに足を踏み入れたのですが、たこ焼き屋から一番遠い入り口だったようで、キョロキョロと探しながら歩いていました。
そんな私の姿を、店の軒先に立つ川上は目撃したのだと思います!
私が川上を見つけた時は、帽子を深く被りマスクをして顔が見えないよう俯き加減で、息を殺してるかのように動かず、ただただ斜め下を見つめて真っ直ぐ立っていました。
私は店先まで行って、下を見つめたまま微動だにしない川上に向かって、ゴルァーお前ぇーッ!と怒りの咆哮を浴びせたのです。
川上は、一瞬ビクッとなり引きつりながら今にも泣き出しそうな顔で、何度も何度も謝ってきました。
しんちゃん待って!これには事情がある!!
と、店横の路地で土下座をして更に何度も何度も謝り、そして静かに事情を話し始めたのです。
何度も言いますが、私は川上の事を30年ほど知っています。こんな川上を見た事もないし見たくもありません。
アレコレと言い訳をしていましたが時間が経つにつれ、見つけた時のあの情けない姿、何度も何度も謝罪をする姿、ましてや知らない国でたった一人頑張らなければいけないという現実、60歳を目前にして、この人もいろんな思いがあってこの場所に居るんやなぁ…というのが私の脳裏によぎり、どこか可哀想とさえ思ったのです。
人間生きてたら上手くいく事もあればいかない時もある。もちろん私にもあります。
たった一回の失敗を、裏切られた!と決めつけ怒りを滲ませた私自身が情けなくなり、もう一度信じてみよう!と考えを改め許したのでした。
その夜、私はベッドの上で川上の喰えない時期を思い出してました。
私は、私のできる範囲で微力ながらにも川上を支えたつもりです。
川上は以前こんな事を言ってました。
チェンマイに行って死ぬ気で頑張るわ。で、頑張った向こう側は他の誰かではなくしんちゃんや!近い将来、日本で小さなビルでも1棟づつ持とうや。と、大阪で立ち食いうどんを食べながら夢を語ってたのです。
実現するかどうかは別の話しとして、その時その瞬間に嘘はなかったと思います。
そんな事を振り返りながら眠りについたチェンマイの1日目でした。
第18章に続く
怒りを胸に到着したチェンマイ空港
あと少しで会える!
一歩、あと一歩と遥々着いたたこ焼き金太郎
2023年2月5日のストーリー