先生のお宅の門扉は、以前は木製の縦格子の引き戸だった。
今は同じような形の金属製のものに変わり、開け閉めが楽になっている。
稽古の時には呼鈴など押さずに勝手に開けて入って良い事になっている。
扉の前に立つと格子の間から、一間ほど先に入り口が見える。やはり木製の引き戸だ。それは今も変わらない。
一息ついたあと引き手に手を掛ける。
心の準備が要る。扉の中は別世界なのだ。教場は山の頂のような鮮烈な空間だった。
玄関の扉も勝手に開けて入る。やはり声は掛けない。開ける時ゴトゴトという音がするので誰か来た時にはすぐにわかる。
上がり框は昔風で高い。前を向いて靴を脱ぎ、膝をついて靴の向きを変えて端によけておく。
そして壁の方を向いてしゃがんで靴下を履き替える。稽古には白い靴下と決まっていた。
もちろん着物で来ても足袋を履き替える。足袋もやはり白だ。
靴下を履き替えたらハンカチを用意してカバンや荷物を決まった場所に仕舞う。
ハンカチは必ず要る。汗を拭くために。
廊下を曲がると稽古をする和室の下手に出る。
和室に入る前にそこで正座になり部屋に挨拶のお辞儀をする。先生への挨拶もそこでする。
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