ATARI MUSIC STUDIO

ピアノを中心に様々な曲を編曲・演奏します。ブログでは音楽関係のつぶやきを中心に書き込みします。
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ドイツ語音名を覚えましょう

2021年06月04日 | 日記

以前「ドレミファソラシド」はイタリア語というお話をさせいてただきました。
今回は、「音名をドイツ語で覚えよう」です。以下、読み方の表を作ったので載せておきます。


音名をドイツ語で知っている必要性は、あまりないんですが(笑)、以下の方々には必須のようです。

・楽器を習っている人
・歌を習っている人
・プロ・アマに関わらず、合唱団の団員
・プロ・アマに関わらず、オーケストラの団員
・音楽専攻の中校生
・音楽専攻の高校生
・音楽専攻の大学生、大学院生
・プロの音楽教師、ピアノ調律師
・プロの音楽家、歌手、ミュージシャン

なぜ音名をドイツ語で発音するのか、詳しい経緯はわかりませんが、おそらく国内の音楽大学を卒業してプロになられた方々が、ドイツ語音名を広めた可能性が高いです。
音楽大学では、昔から音名をドイツ語表記し、ドイツ語で発音する文化だからですね。
音楽専門のギタースクールや専門学校の場合は、この限りではなく、むしろ音名は英語表記、英語発音のほうが普通です。
英語圏で広まったギター関連は英語表記、ヨーロッパ発祥のクラシック音楽はイタリア語、ドイツ語、フランス語表記が一般的ですが、日本はどちらも輸入文化のため、ギター関連は英語、クラシック音楽はドイツ語、といった枝分かれになったのではないかと思います。

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音符と休符の関係性

2021年05月22日 | 日記

今回は楽譜が読めるようになるコツについて、もう少しお話をさせていただこうと思います。

音符・休符はどちらも時間的長さ(音価)をもっています、というお話を前回させていただきました。
例えば、四分音符(♩)や四分休符が1秒、八分音符(♪)や八分休符が0.5秒といった具合です。(♩= 60 の場合)

ということは「じゃあ全音符より時間が長い8秒とか10秒とかの音符は存在しないの?」という疑問が当然沸いてきますが、その通り!全音符より長い時間をもつ音価の音符・休符はありません。
「同じ音が30秒続くような曲があったら、じゃあどうするの?」と疑問に思う方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。
ですが、同じ音が30秒続く曲を楽譜として表現する場合でも、全音符が最大の音価として扱っていて基本的には問題はないことになっています。
書き方は、まぁ作曲家の方々によってまちまちにはなりますが、楽譜上は「タイ」という記号を使うことによって、4より長い音の持続を表現することができるのです。


ということで、最大の音価を持つ音符は「全音符(4秒)」です、というお話でした。
二分音符は全音符を2等分した長さの音価の音符なので2(秒)です。
四分音符は全音符を4等分した長さの音価の音符なので1(秒)です、というのが音符・休符の考え方です。
音符と対になる休符の対比表を作りました。表の端についている小さな数字は「音価」(時間の長さ)です。

何かのご参考になれば幸いです。

そもそも「四分音符」というからには「何かを4で割っている」ということになるのでしょうか。なんで音符は分数表現なのでしょうか?素朴な疑問ですよね?

全音符は英語で(whole note)、ドイツ語なら(ganze Note)、イタリア語なら(Intero)
二分音符は英語で(half note)、ドイツ語なら(halbe Note)、イタリア語なら(metà)
四分音符は英語で(quarter note)、ドイツ語なら(Viertelnote)、イタリア語なら(quarto)

確かに日本語に直訳すれば、分数表現になりますね・・・
でも日本語だとなぜか難しく感じてしまうのは、私だけなのでしょうか?^^


楽譜の読み方 超基礎編!(その4)

2021年05月07日 | 日記

今回は楽譜が読めるようになるコツについて、「さらにもう一歩」踏み込んだお話をさせていただこうと思います。

音符・休符はどちらも時間的長さ(音価)をもっています。
例えば、四分音符(♩)や四分休符が1秒、八分音符(♪)や八分休符が0.5秒だとした場合(♩= 60)で考えてみることにします。

音符・休符の組み合わせで足して4になる小節が連続していれば、『ビートの効いた心地よい四拍子のリズム』となるわけですね。
「4秒がループしている感覚」と言った方がわかりやすいかもしれません。
《ずったん、すたたん、ずったん、すたたん(以下同様)・・・のようなリズム感です》

各小節の時間が同間隔のループを、日本語では「拍節的」と言います。どうも日本語の表現だと少し難しくなる傾向がありますよね。
「拍節的=気持ちいいビート感」と言い換えたほうが案外しっくりくるかもしれません。
プロの音楽家の間でも「拍節的」という言葉は滅多に使いません。たまに読み返す楽典や、音楽関係の専門書の中にちょろっと出てくるくらいです。


(画像の転載元はこちら→ https://pianotenarai.com/theory/chapter03/ )

逆に、「拍節的でない音楽」というのもあり、(ずったん、すたたん、ずったん、すたたん)では演奏できない日本の「雅楽」や「日本民謡」、インドネシアの「ガムラン音楽」などは「拍節的でない音楽」です。
勘違いしがちなのですが、『拍節的でない=リズムがない』という事にはならない、という点に注意が必要です。

「日本の伝統音楽にはリズムがない」ということではなく、機械的に刻まれるビートにのっからない、というだけで奏者が感じるリズムというものは確かに存在します。
鼓(つづみ)を1回『ポンッ!』と叩くにも絶妙なタイミングがあり、『ここぞ!』というタイミングで叩かないと怒られます。(誰に?w)

さて、話を戻しまして四拍子(4ビート)の場合、基本的には『拍(ビート)が4つある』と考えて、「1拍目、2拍目、3拍目、4拍目」を1つの小節の中と認識します。
三拍子の場合は、『拍が3つある』と考えて「1拍目、2拍目、3拍目」を1つの小節内と認識します。
1拍目を「強拍」、2拍目以降は「弱拍」と呼ぶこともあります。
「強拍」はビートを強く感じるところ、「弱拍」はビートを弱く感じるところになりますが、必ずしも1拍目が「強拍」である必要はありません。
わざと1拍目を前か後ろにずらし、あえて意外性を狙った『極強拍』とも呼べるような「強拍」があります。
そういった「意外性を狙った強拍」は「裏拍」などと呼ぶことがあり、音楽用語的には「シンコペーション」と言ったりしますが、専門的な音楽用語については、また別の機会にお話できればと思います。

ちなみに、「さんさんななびょうし」という拍子は存在しません(笑)
「さんさんななびょうし」は四拍子(4ビート)のリズムです。なぜなら、

|ピピピッ|ピピピッ|ピピピピ|ピピピッ| ←さんさんななびょうし
|♩♩♩休|♩♩♩休|♩♩♩♩|♩♩♩休| ←さんさんななびょうしを音符で表現
|1234|1234|1234|1234| ←実際のリズム

となり、確かに手拍子は「3回、3回、7回」と叩いていますが、その間に実は四分休符が挟まっていたのです。


楽譜の読み方 超基礎編!(その3)

2021年04月28日 | 日記

今回は楽譜が読めるようになるコツについて、もう少し突っ込んだ詳しいお話をさせていただこうと思います。

1.音符・休符について
音符や休符は、小節線と小節線の間に書き込まれています。
例えば、四分の四拍子で四分音符(♩)1個が1秒間(♩= 60)の時間的長さとした場合、1小節演奏すると4秒が経過することになります。小節線はリズムの役割を担っているため、一定のリズムになるよう、全ての小節は同じ時間間隔になります。
小節線と小節線の間隔は必ずしも同間隔である必要はありませんが、すべての小節は必ず4秒間になるように、音符や休符が書き込まれています。

小節線と小節線の間は、最初は音符や休符を入れる箱のように感じると思いますが、楽譜に慣れてくると小節線がリズムの頭、と捉えられるようになると思います。
ちなみに、小節は「1小節」「2小節」と数えます。

音符・休符は時間軸を表現しています。
休符は時間軸だけですが、音符は音程と時間軸を、両方同時に表現しているのです。


2.音符の棒の付き方について
おたまじゃくしの右横には縦に棒線(♩)が書かれることが多いですが、おたまじゃくしの上に伸びる場合と、下に伸びる場合があります。
おたまじゃくしの上に伸びる棒は、おたまじゃくしの右側から上にのびます。
おたまじゃくしの下に伸びる棒は、おたまじゃくしの左側から下にのびます。
棒が上にのびるか下にのびるかについては、「五線の真ん中から上に音符がある時は下にのびる」というルールがあると、ひとまず覚えておくとよいでしょう。(ひとまずって何?w)

(画像の転載元はこちら→ 音符 - Wikipedia

3.音符や休符の位置について
音符は五線のどの位置に置くのかについては厳格で、「線と線の間」か「線を中心とした真ん中」のどちらかに書き入れるルールです。
また、楽譜は横軸が時間経過なので、時間経過がわかりやすくなるように、手書きの楽譜の場合などは、音符同士の間隔にも注意する必要があります。

休符は五線の真ん中(上から3番目、下から3番目の線)を基準にして書き込まれます。音符がどの位置にあろうとも、休符は必ず五線の中に書かれることが多いです。
上の図は、描画ソフトを使って作成していますが、真っ白いキャンパスに見やすい楽譜を描こうとすると、意外と難しいなと感じました。
楽譜ソフトを使って作成する楽譜は、そのあたりを自動で調整してくれるので便利なのですが。

音楽制作ソフト(Logic)の楽譜表示


楽譜の読み方 超基礎編!(その2)

2021年04月24日 | 日記

前回、「音部記号、調号、拍子記号、小節線、終止線」の5つが楽譜を構成する要素です、というお話をさせていただきました。
今回は楽譜の読み方第2弾!「ト音記号(G clef)とヘ音記号(F clef)」の2段をひとまとめにした「大譜表」についてお話させていただこうと思います。

ト音記号が書かれた五線(高音部譜表)は、ヴァイオリン、トランペット、フルート、オーボエなど高い音の楽譜に使われます。
ヘ音記号が書かれた五線(低音部譜表)は、チェロ、コントラバス、トロンボーン、ファゴットなど低い音の楽譜に使われます。

ピアノはかなり低い音から高い音まで出る楽器です。
ト音記号またはヘ音記号だけの五線には音域が収まりきらないので、2段の五線をまとめて使います。

上の五線にト音記号、下の五線にヘ音記号を書いて、2段の楽譜が同時進行する楽譜であることを表現するために、五線の左端に括弧を付けます。この2段形の楽譜は「大譜表」と呼ばれます。ピアノの楽譜は、この「大譜表」を使います。小節線も、上下2段をぶち抜いて書き入れます。

五線に収まりきらない音符には短めの「加線(かせん)」を引いて音符を書き入れます。加線は、五線の間隔を意識して等間隔に配置するのが理想です。
ヘ音記号の五線下に加線を2本引いた音符は、低い「ド」(C1)になります。
ト音記号の五線上の加線を2本引いた音符は、高い「ド」(C5)になります。

ト音記号が書かれた五線下に加線を1本引いた音符「ド」(C3)と、ヘ音記号が書かれた五線上に加線を1本引いた音符「ド」(C3)は同じ音になりますが、この加線だけは、ト音記号側に付いたりヘ音記号側に付いたりして、上下位置が定まっていません。ちょっと不思議な感じがしますが、右手で弾く「ド」なのか、左手で引く「ド」なのかを表現することができるので、この部分についてはちょっと慣れが必要です。


楽譜の読み方 超基礎編!(その1)

2021年04月20日 | 日記

今回は楽譜が読めるようになるコツについて、少しご紹介させていただきたいと思います。
そのために、まずは楽譜を構成している5つの要素を覚えておく必要があるのですが、言い換えれば覚えることは「この5つしかない」のです。この5要素は、『楽譜として成立させる』ための最低条件でもあります。


1.音部記号
 楽譜の左隅に書かれた「ト音記号」や「ヘ音記号」などです。「だいたいの音の高さを指定している記号」だと思ってください。(だいたいってww)

2.調号
 ハ長調、イ短調には調号がありませんが、ト音記号の右隣には♭や♯を書いて、これから始まる曲の調性を宣言します。ト長調なら♯が1個、ヘ長調なら♭が1個付く、といった感じです。

3.拍子記号
 四分の四拍子(4/4)など、曲のリズムを決めます。調号の右隣に書きます。調号がない場合は、音部記号の右隣に書きます。四分の四拍子(4/4)は「C」と略して書くこともできます。

4.小節線
 五線譜を縦に区切っている小節線を入れます。小節線と小節線の間(小節と言います)に音符や休符を書き入れます。
『一番最初の小節線は拍子記号の右隣に必要なのでは?』と思うかもしれませんが、一番最初だけ「透明な線」が入っていて見えません。(嘘ですw「最初は小節線を入れない」が正解です)

5.終止線
 ここでこの曲はおしまい、という意味の二重線を書いて、曲の終わりを表現します。


私たちがよく目にする「楽譜」が考案されたのは、ルネサンス以降と言われています。15世紀頃、ほぼ現在の楽譜の形になったと言われています。
それまでは、文字だけでメロディーラインや音の上下を表現するようなものから始まり、四線譜や五線譜で正確な音程を表現できるネウマ譜(主に教会音楽用)が誕生します。
やがて音符や休符が考案され、時間軸に沿って正確にリズムが表現できるようになり、小節でリズムを区切る方法が発明され、現在私たちが目にする「楽譜」という形になりました。

「楽譜を読める」ということは、すなわち「楽譜を成り立たせている構成要素を知っている」ということに他なりません。
楽譜が読めるようになれば、楽器演奏への道へ階段を一段登ることができますしね!
何度も何度も繰り返し練習をし、楽譜に書いてあることを演奏できるようになるまでには、果てしなく険しい道のりですが・・・


『ト音記号』ってなあに?

2021年04月08日 | 日記

今回は音楽用語 超基礎編!ト音記号(G clef)についてお話させていただこうと思います。
ト音記号は音楽用語のひとつで、「高音部記号(Treble clef)」とも呼ばれます。

五線紙の上にト音記号を書くと、その楽譜は「高音部譜表(Treble Staff)」となり、「五線の下から2番目の線上をソに指定します」という意味の楽譜になります。
(高音部譜表にならないケースもありますが、それはひとまず置いておきます)

楽譜は左から右に読んでいくため、ト音記号は最初に音の高さを示す記号として、五線の一番左に書かれることが多いです。「ソ」を日本語の音名で言うと「ト」になるので「ソ(G)を指定した記号=ト音記号」というわけです。

「ト」とか「ヘ」とか、なんなの?と子どもの頃は不思議に思っていました。
「いろはにほへと」をカタカナにした「イロハニホヘト」の中の「ト」とか「ヘ」だとわかったのは中学生頃だったと思います。それまで「ト音記号」は「トーン記号(Tone sign)」だと思っていました・・・

「ドレミファソラシド」の音名に対して日本語の「いろはにほへと」を当てはめていたんですね。
ちなみに「ドレミファソラシド」はイタリア語です。
英語の場合は「ABCDEFG」になります。英語の音名は単純にAからアルファベットだったんですね。
で、日本語の場合は「いろはにほへと」になるというわけです。
それぞれの関連性は以下の通りです。

A(英語)...イ(日本語)...La(イタリア語)ラ
B(英語)...ロ(日本語)...Si(イタリア語)シ(発音的には「スィ」が近い)
C(英語)...ハ(日本語)...Do(イタリア語)ド
D(英語)...ニ(日本語)...Re(イタリア語)レ(巻き舌発音 RRRe)べらんめぇ調が近い
E(英語)...ホ(日本語)...Mi(イタリア語)ミ
F(英語)...ヘ(日本語)...Fa(イタリア語)ファ
G(英語)...ト(日本語)...Sol(イタリア語)ソ

この対応表が頭に入ってくると、「ハ長調」は英語で「C major」(シーメジャー)になるんだな!
と意味が繋がってわかるようになります。

音楽大学では、音名をドイツ語で発音することが多いので、ついでにドイツ語音名も追記しておきましょう。

イ(日本語)...A(英語)...A(ドイツ語)発音は『あー』
ロ(日本語)...B(英語)...H(ドイツ語)発音は『はー』
ハ(日本語)...C(英語)...C(ドイツ語)発音は『つぇー』
ニ(日本語)...D(英語)...D(ドイツ語)発音は『でー』
ホ(日本語)...E(英語)...E(ドイツ語)発音は『えー』
ヘ(日本語)...F(英語)...F(ドイツ語)発音は『えふ』
ト(日本語)...G(英語)...G(ドイツ語)発音は『げー』

ドイツ語もアルファベット表記になりますが、英語で「B」の部分だけ「H」になります。
発音も英語は「えーびーしーでぃーいーえふじー」ですが、ドイツ語の発音だと「あーはーつぇーでーえーえふげー」になります。
ドイツ語ではBは(べー)、Hは(はー)と発音します。

ドイツ語音名の場合、ちょっと注意が必要で、英語音名でBは、ドイツ語音名でHになること。
ドイツ語音名「B(べー)」の場合、英語音名で「B♭(びーふらっと)」の意味になり、日本語音名なら「変ロ(へんろ)」です。ちょっとややこしいですね^^;

「え-の音ください」と言われたら、音大生や音大出身者なら間違いなくE(ミ)の音を連想するでしょう。
ジャズやバンド出身者は、英語音名の方に慣れてらっしゃることもあり「え?A(ラ)じゃないの?」となり、話がごちゃごちゃになることも(笑)

蛇足ですが・・・
ドイツ車のBMWをドイツ語でそのまま発音すれば「べー・えむ・う゛ぇー」となりますね。たまにBMWを「べんべ」と発音する人がいるのは、そのせいですね^^
ちなみに、こちらもドイツ車ですが「フォルクスワーゲン(Volkswagen)はドイツ語発音に近いですね。
Volks(人々)、wagen(車)、Volkswagenは日本語訳で「国民車」という意味になります。


平均律とミーントーン(中全音律)

2021年04月01日 | 日記

今回は主に音律について、少しお話させていただこうと思います。
少し難しい内容も含まれますが、どうかお付き合いください。

現在私たちが普段耳にしている音楽(歌謡曲やポップス、ジャズ、ロックなど)は「12平均律」の音律で正しく調整されたサウンドです。
12平均律(equal temperament)とは、オクターブ(ドから上のドまで)を12等分し、ド以外の音の高さを決める音律です。
「12平均律」はオクターブ間の半音間隔を等しく100セントとしたため、「ロ長調」「変ト長調」など、シャープや♭がたくさんつくような、どんな難しい調性で演奏したとしても音律破綻を生じません。

「そんなのあたりまえじゃん!」

と現代人はつい思いがちですが、200年ほど前までは、平均律よりもっとメジャーな音律があったことをご存じでしょうか。
例えば、モーツアルトやベートーベンが活躍していた時代は「ミーントーン(中全音律)」で調律されたピアノが主流でした。

「あれ~?バッハってモーツアルトよりも前に生きた人だよね?バッハは「平均律クラビーア」を作曲してるけど?いったいどういうこと?間違ってない??」

と思う方はかなりクラシック音楽に精通してらっしゃる方でしょう。その通りで、J.S.バッハは18世紀ドイツで活躍した音楽家です。


J.S.バッハ(画像の転載元はこちら→ ヨハン・ゼバスティアン・バッハ - Wikipedia

バッハが生きていた時代にベートーベンはまだ生まれていませんし、バッハが亡くなった年にモーツアルト少年はまだ5歳。

様々な研究が進んでいて、平均律クラビーアの「平均律」は現代で言うところの「12平均律」を指していたわけではない、というのが最近の通説です。クラシック専門家のあいだでもあまり知られていないようなので、知っておくと得することがあるかも(?)です。


平均律クラヴィーア曲集第1巻 バッハ自筆譜の表紙
(画像の転送元はこちら→ 平均律クラヴィーア曲集 - Wikipedia

バッハは1740年前後で平均律クラヴィーア曲集を作曲しています。
表題(Das Wohltemperirte Clavier)のドイツ語訳は「様々な調で演奏可能となるように良く調整された鍵盤楽器のために」となります。
「平均律クラビーア」という表題にしても、元々は出版社側の都合によって付けられたものです。
ですが、平均律クラヴィーア曲集「第1集」も「第2集」も全ての調性で1曲ずつ作曲された24種調性曲集となっているため、「平均律」という出版社が付けた表題も、あながち的外れではなかったのでしょう。

この表題は「様々な調性において演奏可能な、ヴェルクマイスター音律のことを指しているのではないか?」というのが現代解釈となりますが、あるいは遠い未来に、全調で破綻のない音律が登場することを想い描きながら作曲していたのかもしれません。(すごい妄想・・・)

お話をミーントーンに戻します。
ミーントーン(中全音律)は、完全5度音程にうねりのない純正律に近く、長3度音程(メジャーコード)の響きが美しいのが特徴です。
ド-ソ、ソ-レ、レ-ラ、シ-ファ#のそれぞれの五度音程に関してだけは、1/4コンマ狭められていて、少しうねりが発生します。

12平均律と違い、どの調性で演奏しても破綻がない音律というわけではなく、♯が3つあるいは♭が2つより多い調は演奏不可能です。
詳しい説明は省きますが、ソ#-ミ♭は「ウルフの五度(Wolf interval)」と呼ばれ、とっても音痴な音程(異名同音破綻)が含まれているためです。

パイプオルガンやピアノ、クラビコード、ハープシコードなどの鍵盤楽器の類いは、いったんミーントーンで調律してしまうと、鍵盤の音程を変えることができません。
そのため、♯が3つあるいは♭が2つ以下の調で作曲されることが一般的でした。

♭#がない調・・・ハ長調  イ短調(C  major, A  minor)
♭が1つの調・・・ヘ長調  ニ短調(F  major, D  minor)
♭が2つの調・・・変ロ長調 ト短調(Bb major, G  minor)
#が1つの調・・・ト長調  ホ短調(G  major, E  minor)
#が2つの調・・・ニ長調  ロ短調(D  major, B  minor)
#が3つの調・・・イ長調 嬰ヘ短調(A  major, F# minor)

古典派時代までのクラシック音楽、特に鍵盤楽器作品は、上記調性のいずれかで作曲されることがとても多いです。
それ以上調号が増えると、鍵盤楽器では演奏不能になってしまうためですが、そう考えるとベートーベンのピアノ協奏曲第5番(変ホ長調)の出だしなど、当時は相当画期的なサウンドだったのだろうと妄想しています。
この頃になると、ミーントーン調律を脱却し、新しい音律(ヴェルクマイスターIII)などが試されていた時期だったのではないかと推測できます。

 

ここまでの小難しい話をものすごく、簡単に、ざっくりと要約すると・・・

「昔はドミソの和音がとても綺麗だった」

ということです。


ベートーベンと、彼が生きた時代(その4)

2021年03月29日 | 日記

ベートーベン本人が書いたという「ハイリゲンシュタットの遺書」の内容とは?ベートーベンが歩んだ長い苦悩の道のりについて、少しお話させていただこうと思います。


若い頃のベートーベン 画像の転載元はこちら→ ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン - Wikipedia

ベートーベンは16歳の時、ウィーンを旅しながら『フィガロの結婚』初演の成功で、名が売れつつあった当時30歳のモーツアルトを訪問しています。もしかすると、ベートーベンはフィガロ初演に立ち会っていたのかも・・・(すごい妄想)
母危篤の知らせを受け、ベートーベンは急遽ボンに戻っていますが、モーツアルトも若いベートーベンが只者ではないことにはすぐ気づいたようです。
モーツアルトは、既に親交のあった年配のハイドン先生に「ドイツからすごい才能の若者が来たんですよ」ときっと話していたことでしょう。


W.A.モーツアルト 画像転送元はこちら→ ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト - Wikipedia

ベートーベンは21歳の時、ハイドンに才能を認められて弟子入りしています。
もしかするとハイドンはモーツアルトからベートーベンのことについて事前に聞かされていたのではないか?ハイドンがボンを訪れた時、ベートーベンと会うことができたのも偶然ではなかったのではないか?など勝手に妄想を膨らませています。

いろいろ妄想しながら、ベートーベンと繋がりのある当時の作曲家たちを辿っていくのも、なかなか楽しいです。


ハイドン 画像転送元はこちら→ フランツ・ヨーゼフ・ハイドン - Wikipedia

その後ベートーベンはピアニストとして地位を確立し、音楽で食べていける道筋をつけていきました。
ようやく音楽家としての活動が軌道に乗りはじめた矢先、20代半ばからだんだん耳の不調を感じ始めます。その後、40歳で全聾になるまでの精神的な苦痛は計り知れません。ありきたりな言葉にしかなりませんが、相当に苦しんだのだろうと思います。ミュージシャンにとって耳は何より大切なのですから。ベートーベンが31歳の時、苦しい胸の内を弟のカールに宛てて書いた手紙が見つかっています。「ハイリゲンシュタットの遺書」と呼ばれています。


ハイリゲンシュタットの遺書(最初の1ページ目)
画像転送元はこちら→ ハイリゲンシュタットの遺書 - Wikipedia

手紙はかなり長文なのですが、内容をざっくり要約すると次のとおりです。
――――――――――――――――――――――
(1)耳が聞こえづらくなってからもう6年。
(2)医者に診てもらっているが良くならない。かえって年々悪くなっている。
(3)音楽家としては一番重要な「聴覚」を失うなど絶望的。
(4)人に「私は耳が悪い音楽家です」なんてとてもじゃないが言えない。
(5)難聴になってから人を避けるようになってしまった。
(6)自分が現世にかろうじてとどまっていられるのは、音楽に対する情熱があるから。
(7)私が死んだら、難聴で苦しんだことを世間に公表し、人嫌いのように思われていた誤解は解いて欲しい。
――――――――――――――――――――――
人嫌い、気難しい人と思われる原因として、主に難聴が深く関わっていたことが伝わってきます。ハイリゲンシュタットの遺書を知って、ベートーベンに対する私の印象は大きく変わりました。

酒に溺れて失職した父に代わって兄弟の面倒を見たり、わざわざモーツアルトに会いにいって音楽への理解を深めようとしたり、ハイドンに弟子入りした経緯から考えても、決して元々コミュ障だったわけではなかったとわかります。案外、人懐っこい一面も持っていたのかもしれません。

とりあえず、「ベートーベンと、彼が生きた時代」のお話はいったんここでおしまいです。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。感謝!


ベートーベンと、彼が生きた時代(その3)

2021年03月22日 | 日記

ベートーベンとはどんな人物だったのでしょうか?「楽聖」と呼ばれた人の「生きざま」とは?


画像の転載元はこちら→ ルートヴィヒヴァンベートーベン(17... (meisterdrucke.jp)

15歳頃から身長165cm。背は低いけど、わりとがっちりした体格。
祖父(ルートヴィヒ)は宮廷バス歌手。宮廷楽長にまでなった偉い人。でも3歳の時に死んでしまった。
自己中のお父さん(ヨハン)は大嫌い。小さい時、超スパルタでしごかれたし、よく殴られたし、稼いだ金はすべてお酒に変えてしまうし、お母さんをいつも泣かせるし。
ピアノやヴァイオリンは弾けるけど、実はそれほど好きじゃない。お父さんを思い出すから。
優しかったお母さん(マリア・マグダレーナ)は大好き!
兄弟は生まれてすぐ死んでしまった姉妹を除いて2人の弟がいる、2人とも大好き!

という感じでしょうか。(大きく違っていたらごめんなさい)
祖父が亡くなり、収入が激減したベートーベン一家は一気に貧乏になりました。それもそのはず、お父さんは自分の稼ぎを全部お酒に変えてしまうからですね。宮廷楽長だったおじいさんとは大違い・・・

お父さんがほどこした特訓も、ベートーベンを一流の音楽家に育てようというよりは、一家の稼ぎ頭にしたかったからなのでしょう。
「スパルタ教育」というよりは、リンチや虐待に近かったとも言われています。
ベートーベン本人はそれがすごくイヤで、音楽が大嫌いでした。でも練習してうまくならないとまた殴られるからしかたなく・・・といった感じだったのでしょう。

いつもお父さんに泣かされてばかりのベートーベンに、お母さんはいつも優しくしてくれたそうです。お母さんの支えがなかったら、ベートーベン少年はとっくに家出して非行少年になっていたことでしょう。


若い頃のベートーベン 画像の転載元はこちら→ ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン - Wikipedia

悲痛な過去が直接の原因かどうかはわかりませんが、ベートーベンは大人になっても時々意味不明の行動とって、周囲を混乱させることがあったそうです。
とても優しい内面人格を持っていながら、無口で怒りっぽい上にキレやすい。今風の言い方をすれば、まさに「コミュ障」。

周囲からはきっと、近寄りがたい人柄に映ったことでしょう。結婚せずに生涯独身だったのも、多分こっちの原因だろうと思っています。

日本の音楽授業では、かつてベートーベンについて「ドイツを代表する偉大な作曲家」とか「楽聖」などの説明がなされ、テストに出題されたりしていました。(今はないのかな?)
ベートーベンが生まれた国はどこか?とか、何年に生まれたか?とか、「運命」は交響曲第何番か?といった具合です。
はっきりいって「そんなことどうでもいい!」と思うのです。
いえ、勉強する必要がないとか、テスト勉強がいらないとか、そういう話ではありません。
そんな知識はどこにも役立たないですし、そんなものが学校のテストに出されたら、きっとベートーベンだって天国で顔を真っ赤にしているに違いありません。

「俺はそんなに偉くねえぞ!」って。

大切なのは過去の偉人を神格化することではなく、彼が不利な状況にどうもがいてきたのか、逆境に対しどう立ち向かってきたのか、苦しみの果てに彼は何を見いだそうとしたのか、私たちがベートーベンの想いにちょっとだけ寄り添うことなのだと思うのです。


ベートーベンと、彼が生きた時代(その2)

2021年03月22日 | 日記

西洋音楽史において、18世紀から19世紀までのクラシック音楽の変遷が、クラシック音楽の歴史全体の8割を占めるといって過言ではなく、なかなか興味深いことがいろいろあります。今回は、そのあたりのお話です。


画像の転載元はこちら→ ルートヴィヒヴァンベートーベン(17... (meisterdrucke.jp)

まず、クラシック音楽全体について、ざっと簡単に時系列で並べると、16世紀のバロック音楽に始まり、18世紀の古典派、19世紀のロマン派、20世紀以降の近代音楽へと続きます。
16世紀以前にも各地域の民族音楽や教会音楽などが存在していますが、ここでは割愛することにします。


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日本の歴史をこの軸に当てはめて考えてみると、結構面白いと思います。
ヴィヴァルディ、バッハ、ヘンデルが活躍したバロック音楽の時代は、徳川家康が天下統一を果たし、江戸幕府による武家政権支配が始まる頃にあたります。NHKの大河ドラマ「真田丸」の時代ですね。

ベートーベンが活躍した時代は、国内統一を果たした日本で豊かな江戸文化が花開いた時期にあたります。10代将軍、徳川家治の時代ですね!
「ベートーベンは18世紀古典派の作曲家」と記憶するより、「ベートーベンは江戸時代の人!」と覚えるほうが日本人には親しみやすいかもしれません。地球上のまだどこにも、飛行機や鉄道などない時代です。もちろん、インターネットはないですし、電話すら存在していません。この頃はまだ電気が使えないのです。

ショパン、リストが活躍した19世紀ロマン派時代は、江戸幕府が戊辰戦争によって崩壊し、日本が明治時代へと突入する頃にあたります。

当時ドイツは神聖ローマ帝国ケルン大司教領でした。
日本は、元々仏教または無宗教の人が多いので、宗教のことをあまり気にする方はいらっしゃらないと思いますが、ヨーロッパでは、キリスト教のローマ・カトリック教会とプロテスタント新教との抗争がずっと以前からすさまじく、特にドイツは宗教改革運動の中心地でした。
宗教改革というと、キリスト教信者同士のけんか、衝突と捉えがちですが、実際は宗教支配を目論む国家間の利害抗争です。

ベートーヴェン一家はボンのケルン選帝侯宮廷のお抱え歌手の家系で、ベートーベンはそんな音楽一家の長男として生まれています。当然ベートーベン一家はカトリック教徒です。

「なんだよ!小さい頃から英才教育受けてたんじゃねーか!結局ボンボンかよっ!」

と思われた方もきっといらっしゃると思います。
が、実際はちょっと違っていたようです。
次回はベートーベン本人にフォーカスしてお話してみたいと思います。


ベートーベンと、彼が生きた時代(その1)

2021年03月21日 | 日記

ヨーロッパの歴史というと、国同士がすべて地続きのため、近隣諸国との戦乱が絶えなかった地域、という印象が思い浮かびます。


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日本は島国なので、他国との戦争というと世界大戦以前、海を隔てて船が行き来する争い方に限定されてきました。日本人にとって大陸国家の国境紛争というものが、今ひとつ感覚的に捉えにくい部分ではあります。

ベートーベンが生きた時代というと、30年戦争(長きにわたる宗教戦争)も終わって、まだナポレオンが攻めて来ていない頃のドイツ(神聖ローマ帝国領)です。

ベートーベンが生まれたのは1770年12月。モーツアルトはその頃14歳。日本は江戸時代。


(当時の江戸の町並み)歌川広重 東海道五十三次

ベートーベンという人が生きていたヨーロッパの時代背景と、西洋音楽史が一番ドラスティックに変化するこのタイミングが、私にとっては特に興味深く感じています。

私は元々歴史があまり好きではなく、どちらかと言えば嫌いでした。

音大で音楽を本格的に勉強し始め、モーツアルトやベートーベンが生きていた頃がどんな時代だったのかを詳しく知りたくなると、途端に西洋の歴史や文化に興味を覚えるようになりました。


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ちなみに、日本では「Beethoven」をベートーベンと発音しますが、ドイツ語の発音だと、ルードヴィヒ・ヴァン・べートホーフェン(Ludwig van Beethoven)となります。

英語圏の発音でも「ビートホーヴェン」になるので、ベートーベンと発音するのは、残念ながら日本だけのようです。こんな世界中の人たちが認知している偉大な人なのに、日本人だけが全員、名前を間違って覚えているような気がして、なんだか複雑な気持ちになります。(え!?私だけ??)


基準音(A=440Hz)はいつ誰が決めた?

2021年03月10日 | 日記

今回は国際標準規格(ISO)のお話です。が、決して硬いお話ではありませんので、ご安心を!

時報の「ピッピッピッポーーン」と聞こえてくる音程(440Hz 440Hz 440Hz 880Hz)が基準音「ラ」です。

画像の転送元はこちら→ A440 - Wikipedia

この基準音(A=440Hz)は、1939年にロンドンで行われたISAによる国際会議で国際基準が定められたようです。

この国際基準が国際標準化機構(ISO)にISO 16として採用されました。

ISO 16:1975

Specifies the frequency for the note A in the treble stave and shall be 440 Hz. Tuning and retuning shall be effected by instruments producing it within an accuracy of 0,5 Hz.

日本語訳)『高音譜表の音符A(ラ)の周波数を440Hzとします。楽器のチューニングは、0.5Hzの精度内で行われるものします。』

情報転載元はこちら→ ISO - ISO 16:1975 - Acoustics — Standard tuning frequency (Standard musical pitch)

 

ですが、実際に私たちが普段耳にしている音楽の中に、この基準ピッチよりも若干高くチューニングされた曲を聴いている可能性があることをご存じでしょうか。

日本のオーケーストラはA=442Hzでチューニングされることが多いため、ホール備え付けの国内のコンサートグランドピアノは、A=444Hzでチューニングされていることがとても多いです。

クラシックの巨匠カラヤンは、オーケストラのチューニングA=444Hzの演奏をとても好んでいたため、カラヤン指揮の交響曲をCDで聴くと、世界標準A=440Hzより若干高いピッチで演奏されていることがわかります。これはカラヤンがより明るく華やかな音色、より迫力のあるストリングスサウンドを求めた結果だと思われます。

(指揮者カラヤンとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)

弦楽器の場合、ピッチを高めに設定すると弦の張りが強くなり、出音がやや大きくなります。弦楽器の音色が、全体的に華やかで迫力のあるサウンドになります。

逆にピッチを低めに設定すると、弦の張力が弱まり、暗く落ち着いた音色になります。弦楽器の音色は全体的にやや暗くなり、管楽器はより大きく太く響く傾向があります。

ご家庭の生ピアノや学校の音楽室にあるピアノも、A=442Hzでチューニングされることが一般的に多いようです。

電子ピアノ、シンセサイザーのピッチは、あとから自由に変更可能ですが、工場出荷時はA=440Hzです。生楽器を使用しないポップスやダンスミュージック、歌謡曲や演歌では、A=440Hzがよく使われているようです。

ちなみに、アメリカ国内のオーケストラでは、A=440Hzでピッチを合わせるようです。


「ヤマハ」と「カワイ」のお話

2021年03月06日 | 日記

今回は、国内を代表するピアノメーカー「ヤマハ」と「カワイ」のお話です。

(YAMAHA AvantGrand N2)ハイブリッドピアノ

画像転載元はこちら→ ヤマハ | N2 - AvantGrand(アバングランド) - 概要 (yamaha.com)

20世紀前半、ヨーロッパ先進国やアメリカで起こったピアノブームは、ピアノの楽器としての完成度を一気に高めていきました。
ヨーロッパのピアノメーカーが成熟期に入っていった頃、国内でも純国産ピアノの製造気運が高まり、日本楽器製造株式会社(現在のヤマハ株式会社)が1900年に、最初の国産アップライトピアノを製造、1902年に、こちらも国産初となるグランドピアノの製造を開始しています。
河合楽器研究所(現在の株式会社河合楽器製作所)は、1927年(昭和2年)に最初のアップライトピアノを製造し、翌年にはグランドピアノを製造しています。
当時の日本は、まだピアノを個人で購入できる時代ではありませんでしたが、一部富裕層などからの需要がありました。

戦後の日本もやがて高度成長期に入り、豊かな生活を求めてピアノの個人需要が高まります。
たくさんのピアノメーカーが生まれ、様々なブランドのピアノが数多く誕生しました。

その中にあってヤマハ、カワイが急成長した理由は、メーカー主導でピアノ教室の運営に尽力したことがとても大きいと思います。
ピアノを買っても、ピアノを教えてくれる先生が身近にいなければ、宝の持ち腐れですからね。

ヤマハ音楽教室や、カワイ音楽教室は、それぞれ独自に開拓した全国のレッスン会場で、同じテキスト・同じカリキュラムでレッスンを行います。
家の都合で引っ越したとしても、引っ越し先の音楽教室でまた同じ教材を使って、今までの続きのレッスンが受けられるわけです。

(KAWAI NOVUS NV10)ハイブリッドピアノ
画像の転載元はこちら→ NV10|製品情報|河合楽器製作所 製品サービスサイト (kawai.jp)

どちらの音楽教室も、ピアノの上達よりも、のびのび音楽を楽しむ心を育むことに重点を置いています。
多くのレッスン経験をメーカー側も共有しており、教材開発の高さも相まって、音楽の知識、基礎力は充分に養われることと思います。

最近では少子化に加え、ピアノを習う子どもが激減しているため、かつての音楽教室の賑わいはなくなりつつあります。
音楽教室でリトミックや英会話、絵画教室も併設して教室運営を維持しているのが現状です。

塾に通う子どもはたくさんいますが、習字やそろばん、ダンスやピアノを習う子どもは少なくなりました。
これも時代の流れなのでしょう。

学校の教育カリキュラムでは、図工、美術、音楽、技術・家庭科の時間割り当てがどんどん減っています。
豊かな心を育むには、英語や算数以外にも、子どものうちにたくさん経験しておくべきことがあるんじゃないか、と私などは思うのですが。
最後はなんだか愚痴みたいになってしまいました。ごめんなさい^^

さて、話を元に戻します。

世界3大ピアノメーカーのひとつ、ベーゼンドルファーを以前ご紹介させていただきましたが、2008年からベーゼンドルファーはヤマハの100%完全子会社になりました。

買収時にいろいろと混乱があったようですが、ベーゼンドルファー本社は今もウィーンにあり、技術メインテナンス会社としてベーゼンドルファーピアノの修理、メンテナンスを請け負っています。

ヤマハの自動演奏機能がついたベーゼンドルファー

画像の転載元はこちら→ 伝統のウィンナートーンとヤマハの最先端テクノロジーが融合、聴く楽しさも堪能できるピアノ ベーゼンドルファー 自動演奏機能付きピアノ『Bösendorfer Disklavier Edition』 - ニュースリリース - ヤマハ株式会社 (yamaha.com)


アコースティックピアノと、電子ピアノ

2021年03月04日 | 日記

アコースティックピアノ(通称、生ピアノ)と電子ピアノについて、個人的感想も少し交えながら、語ってみようと思います。

(フリー素材)提供元→ [フリーイラスト] ピアノを演奏する小人 - パブリックドメインQ:著作権フリー画像素材集 (publicdomainq.net)

例えば、子育てが終わって自由な時間が持てるようになった、定年退職して趣味に使える時間が増えた、という方々が「楽器を本格的に習ってみたい」と思ったとき、最初に生ピアノと電子ピアノどちらを購入するべきなのでしょうか。
もし子どもが「ピアノを習いたい」といってピアノを購入しよう、と考えた場合はどうでしょうか。ピアノの先生が仰るとおり、やはり生ピアノを購入しないとダメなんでしょうか・・・
そういった場合、おそらく正解は存在しないと思うのですが、ひとつの考え方として「こんな考え方どうでしょう?」程度の雑談で聞いていただけたら、と思います。

まず、前提条件として生ピアノを買う場合、以下の要件を充分に満たしているかどうか確認しておく必要があります。
1)床の耐荷重は充分に確保されるか?入居契約に、ピアノ可と書かれているか?
2)ご近所の騒音問題に配慮されているか?
3)購入後、定期的にかかる調律代は考慮に入っているか?(1回の調律は約1万円)
4)地震で倒れる場合のことを、想定に入れているか?

今や近所の騒音問題は世界中で深刻です。ピアノに限らず、大きな音が出る楽器をおうちで練習するのにはリスクが伴います。

また、生ピアノは調律に定期的な出費が発生します。調律しないで放置してしまうと、弦がどんどん伸びて音程が狂ってしまうからです。
弦が切れたり、音の出ない鍵盤が出てきたら、調律とは別に修理代もかかってきます。

田んぼのど真ん中の一軒家に住んでいるか、もしくは地下室のある一軒家か、防音室を整備したアパート、マンションでなければ、おうちで生楽器をのびのび演奏するのはほぼ不可能に近いでしょう。
せっかく音楽を楽しもうと思っても、結果的にリスクを増大させてしまっては何の意味もありません。

電子ピアノの場合ならどうでしょう?
電子ピアノなら耐荷重問題も、騒音問題も考慮する必要はありませんし、家に防音室がなくても、家のどこにでも好きな場所にピアノを置いて、のびのび演奏できますよね。(入居時の規約で楽器不可の記載がある場合は、電子ピアノでもNGの場合があります)

ヘッドフォンをつければ、夜中だって大音量で弾けちゃいます。家族に迷惑をかけることもありません。

「それなら選択の余地もないじゃないですか・・・電子ピアノ一択ですよね?」

と言われてしまいそうなので、ここで別の視点(ピアノ講師側)からも考えてみます。
確かに利便性や、環境問題のことだけを考えたら、電子ピアノ一択になってしまいます。
団地、アパートやマンション暮らしの方にとってはなおさらです。

でも、ピアノの先生は必ず生ピアノの購入を勧めてきます。なぜでしょう?
なぜ電子ピアノではいけないのでしょうか。

ピアノの先生から言わせると、
1)電子ピアノは微妙なニュアンスを表現できない。表現の幅が狭まってしまう。
2)生ピアノの感覚に慣れて欲しい。電子ピアノの鍵盤に慣れてしまうと、生ピアノの鍵盤を重く感じて弾けなくなる。
3)生ピアノの良さをわかった上で、電子ピアノを購入して欲しい。

となるのです。
ドラムの先生でも、家に電子ドラムを買うかどうか相談すれば、「買うより前にまずスタジオに通って、なるべく本物のドラムを叩きなさい」と言うでしょう。

1)はもっとも多い理由のひとつです。弦の振動を体で感じて欲しい、楽器の奥深さをわかって欲しいと思う、専門家としての願いです。
2)の理由は、実際にピアノを教える先生方の多くが、感じていらっしゃるご意見のようです。
3)の理由については私も同意見なのですが、もっとも初心者の方が生ピアノの良さがわかるようになる頃には、そうとうピアノが弾けてる状態でなければなりません。

「そもそも電子ピアノなど、楽器とは呼べない」と言い切る人すら、いらっしゃいます。
生楽器の良さを知れば知るほど、電子楽器が生楽器に届いていない、様々な差異がとても気になるものなのかもしれません。
生楽器の良さを充分わかってらっしゃる先生方からすれば、電子ピアノが本物のピアノに勝るはずがない、とお考えでしょう。

でも、電子ピアノをそんな「悪者」みたいに言わなければならない理由が、少なくとも私にはありません。
これから学ぼうとする生徒さんは、音楽を楽しみたい、楽器が弾けるようになりたい、というたった一つの希望を叶えたいだけなんです。
とっかかりが生楽器だろうが電子楽器だろうが、構わないんじゃないかと私は思うのです。

ただし、電子ピアノをこれから購入される方、ピアノの先生をこれからお捜しになる方は、ひとつだけ気をつけてくださいね。


「電子ピアノでもちゃんと丁寧に教えてくれる心の広い良い先生」を探すことです。

電子楽器には電子楽器の良さがあり、生楽器には生の良さがあります。良さのベクトルをどう捉えるかによって、見方、考え方は変わってくるものなのではないか、と私は考えています。