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犬と子猫の愛の物語

2012-09-07 06:47:03 | 日記

犬と猫の愛の物語

猫の鳴き声

何処からか猫の鳴き声が聞こえてくる。

苦しいような、かなしいような、お腹が空いたような 
空しい声で ニャーとひと声鳴いた。

空耳かと、千恵子は駄菓子を買いに来た子供と話をして居た。

「叔母ちゃん家に猫が居るの。」と真美ちゃんが聞いて来た。

千恵子は「店はね、猫を飼えないのよ。店のものをちょいと
摘むことがあるからね。」

「だって猫の声が聞こえるよ。」と真美ちゃんが言った。

そんなことはない。、何処から聞こえて来るのだろうと、店の
外に出て見た。

「真美ちゃんの空耳かな。」と店に戻った千恵子に
「叔母ちゃん居たよ。チリーが抱いて居たよ。」と目を丸くして
店に入って来た。

そんなあ~犬と猫が一緒に居るわけなどないと思い、真美の言う
犬小屋に行って見た。 

チリーが子猫を抱いて居た。涙がこみ上げて来た。

千恵子は、暫く犬小屋の前に座り込み、チリーの頭を撫でて
やった。

子猫は、チリーの温もりで、すやすや眠って居る。お腹が空いた
悲しそうな、心細い鳴き声は本当だったのだと思った。

チリーの餌箱を見たら空になって居た。

何時も少しは残す筈の餌箱が空だ。

子猫が食べたのだなと思った。

子猫はまだお乳が欲しいような大きさだ。
だけど残って居る筈の餌がないとすると空腹に耐えられず
食べたなと思った。

店じまいをした千恵子は、子猫が気がかりなのでまた行って
見た。

チリーのおっぱいを飲んで居た。

チリーは目を瞑って、顔を投げ出して、お腹を大きく広げて居た。

子猫は腹の上に乗っかるような姿で、出もしないおっぱいを
痛いほど吸い続ける。

乳首の周りが赤くなって居た。

夕食の準備もせずに、千恵子はチリーと子猫の側から、離れら
れなかった。

台所から、柔らかそうな御飯と、肉じゃがと 牛乳を少々かけて
チリーの餌箱に多めに入れた。

これで安心と千恵子は、自分の夕食に取り掛かった。

朝一番にチリーの姿を見に行って見た。

何時もなら散歩をするチリーは動かない。

じっと子猫を抱いて居る。

猫って知って居るの。 子犬と思って居るの?

チリーに話しかけたら、ぱちくり目を開いたり、閉じたり
して私の手に右足をあげた。

解って居るよなあ~チリー・・・・猫って知って居るんだね。

千恵子はチリーの動きから、チリーの眼差しを想いやった。

それからチリーは、子猫とじゃれあう姿が見えるが、散歩をする
姿は見れなくなった。

この頃は犬を放し飼いが許された頃だ。

子猫はどんどん大きく育ち、家の中に入ってくるようになり
店の駄菓子を摘み食いするようになってきた。

チリーの気持ちを考えると、叱ることも追い出すことも出来ない

チリーと猫の別れ


千恵子は考えた。

もうひとり立ち出来る大きさに育ったのだから、猫を可愛がる
家に上げようと思って店先に書き出した。

「可愛い三毛猫を欲しい方に上げます。但し条件があります。
この猫は犬の愛情で育った猫です。可愛がって~可愛がって
育てる方にだけ上げたいのです。欲しい方は店に来てください。」
と店のガラス戸に書いた紙を貼り付けた。

その日の午後小学校の5年生の男の子が貼り紙をじっと見て
居た。

暫くして家に行って来たのかダンボールを持って店に
入って来た。

「叔母ちゃん 僕、猫が欲しいのです。絶対に可愛いがるから
猫をください。」と真剣な顔で言った。

「本当に可愛いがるって約束してくれるの。」と千恵子は念を
押した。

「うん 大丈夫、お母さんの許可も貰ったよ。」と言うので
猫を抱いて来て男の子に渡した。

ダンボールに嫌がらずに猫が入った。

遊びの気分で入ったらしい。苦労しなかった。

後ろ髪が引かれる思いだが、どっちにしても大きくなったら
チリーと別れる時が来るのだから 可愛いがる家に行けば
良いと思った千恵子は男の子に上げる決心をした。
悔いもないと思った。

午後4時過ぎた頃に、男の子は、段ボールに入った猫を
「叔母ちゃん猫を貰うね。」と言ったので、

千恵子は最後だからもう一度抱いてあげようと胸に段ボール
のまま抱いた。

何処で見て居たのかチリーが跳んで来た。

物言わず千恵子の胸の段ボールに飛び掛った。

びっくりした猫はそのまま犬小屋へと走って行った。

千恵子は涙が止まらなかった。

男の子は何も言わずに帰って行った。

チリーは安心したのか犬小屋の方へ走って行った。