午前4時。
風の音で目が醒めました。
コトリ コト コト
かすかに音が聞こえました。
何の音?
……………
いつのまにか、また眠りに落ちていました。
次に目醒めたとき、カーテンを開けてベランダに目をやると
ルイ14世が一晩で数輪開花していました。
This is my Louis XIV .
写真に撮ると、どうしても明るい花色になってしまいますが、
実物はもっと黒く、紫を帯びたバラです。
今年のルイ14世は、
いつもよりも赤紫が強く発色しています。
簡単に写真に収めるのを許さない
深く高貴な黒赤のバラ、ルイ14世です。
人間たちがまだ夢を見ていた明け方の薄暗闇のなか、
地上数十メートルの小さな小さなバラの国では
王様がお出ましになり、静かに舞踏会が始まりました。
Shall we dance ?
コトリ コト コト
かすかに聞こえた物音は
ワルツを踊る靴音だったのでしょうか。
王様のダンスのお相手を務めたのは
この春、バラの国にデビューしたばかり
まだ幼い挿し木の
ウィズリー嬢でしょうか。