冬のオリンピックも、2度の大雪も、ボクはベッドの中で迎えた。
同室のベッドの患者さんたちが快方に向かう中で、一向に症状の改善が見られないボク。
何度も希望の光と挫折を味わった。
鼻に繋がれたチューブの中をボクの薄汚い体液が流れていく。
「ああ、この体液が虹色だったらいいのに」
何度そう思ったことか。
病院内を散歩しても、なんの気晴らしにもならない。
鉢植えのローズマリーに手をかざして、匂いをかぐことで、生きているんだな、と実感していた。
夜中の病院。
看護師さんが見回りにやってくる。
点滴を直す姿。
睡眠剤の点滴を受けながら眠りにつくボク。
いつしかそれが日常へと変わっていった。
ようやく管が鼻から抜け、食事が再開されるようになっても、いつかまたあの症状が出て元に戻るのではないかと心配で心配で仕方なかった。
なんとか退院出来たけれど、お腹の縫い目がときどき主張して、まだ今まで通りにはできないんだなって感じてる。
いつかこのことを笑って話せる日が来るんだろうけど、今はまだ感傷にひたっていたい。