僕は様々な種類の建築を見るのが大好きだ。特に建築の勉強をしたわけではないのだが、デザインという観点で昔から色々な建築を妄想するのが好きで、自宅も自分でコンセプトを考えたくらい設計・建築領域は趣味として好きな分野である。
また、街の中にある様々な有名建築や、安藤忠雄、隈研吾、丹下健三などが設計した建築を見るのも大好きである。斬新なモダン建築も大好きなのだが、時折むしょうに見たくなるのが東京の“昭和レトロ”な建築だ。そんな昭和レトロビル好きが高じて、先日『いいビルの世界~東京ハンサムイースト』という本を本屋さんで見つけ、思わず手に取って購入してしまった。2017年に初版が出た本だが、表紙からしてとても惹かれてしまう雰囲気に溢れた本である。
石原裕次郎の古い日活映画が好きだが、当時の東京がしばしば映画の中で登場する。そこに映っているのが、高度成長期の東京。当時としては最先端であったモダンなビル、美しいタイル、窓、階段、バルコニーの装飾・デコレーションなど、時代と歴史を感じさせる建築を見るのがまた大きな楽しみの一つでもある。そして、以前石原裕次郎と芦川いづみ主演の映画『若い川の流れ』の中で、大手町ビルヂングが出てくるのだが、このビルは元職場であった大手町に今でも建っているビルで、当時の面影を今も残しているので、こういったレトロな風景を確認するのが本当に面白い。
また大手町に近い竹橋で良く立ち寄った“パレスサイドビル”も、いまだに現役のビルで、昭和レトロ感も色濃く残しているビルだ。
中身は基本昭和レトロビルの写真が満載で、見ているだけでも楽しい本だ。エリアごとに現在でも健在の昭和レトロビルを数多く取り上げており、これまでに見たことのあるビルなども多いが、全く知らなかったユニークなビルもたくさんあって、色々と大きな発見はあった。
また、僕は昭和レトロ感が満載のカラータイルも大好きで、以前にも青葉台やあざみ野にあるビルのタイルなどをブログでも取り上げたこともあるが、東京には美しいタイルのビルや壁も実に多く残っているのだ。また照明、階段、丸い窓、楕円窓、デザイン性の高い格子、ユニークなバルコニー、オシャレなドアノブなどのデザインや装飾も昭和レトロ感が満載なビルも多く、こちらもその多様なデザインに関心してしまうし、この本のように一同に集めるとなかなか圧巻である。
振り返って色々な昭和レトロ建築を見てみると、実に豊な時代に“いいもの“を建てていたことがわかる。リサイクルを前提にしたモダンな建築にどんどん建て替えてしまう傾向が強いが、やっぱり何百年も先まで残るような建築をしっかりメンテナンスしながら、後世に残していくというのも建築業界として大事だということをいつも痛感しながら、建築めぐりをしてしまう。今回購入した『いいビルの世界』は、そんな昭和レトロビルの魅力がいっぱい詰まった、何とも楽しい本として、ぜひおすすめしたい1冊である。