


僕はQueenの曲も結構好きで、高校時代を過ごした80年代は良く聴いていたものだが、正直特別コアなファンというわけでは無かった。それでも、この映画が公開されるいうことで何だかとても懐かしくなり、数週間前にQueenのベスト盤、『Queen Jewels』をダウンロードして久々に聴きこんでみた。このアルバムはベストだけあって、一度は誰もが聴いたことのあるQueenの名曲を網羅しており、何とも贅沢なベストアルバムだ。2011年にリマスターされているので音質も実にいい。

ベストには、日本でもドラマやCMなどで使われた『We Are The Champions』, 『I Was Born To Love You』, 『We Will Rock You』, 僕が一番好きな軽快な名曲『Don’t Stop Me Now』, ラッパーVanilla Iceがサンプリングしたことでも有名になった『Under Pressure』, Queenが尊敬していたエルビス・プレスリーの曲調にも似た『Crazy Little Thing Called Love』, ベースのビートが何とも快感な『Another One Bites The Dust』, レディー・ガガの名前の由来にもなったことで有名な『Radio GaGa』,そしてなんといっても名曲中の名曲、『Bohemian Rhapsody』。名曲の数々を改めて聴くと、天才的なQueenの才能、そしてフレディーの非凡さを再認識してしまう。

そして、ついに映画、『Bohemian Rhapsody』を週末に鑑賞。どのようにフレディーの人生を描いているのかとても興味があった。最初は普通の伝記映画として始まるが、次第に名曲の数々が産まれたエピソードなども交えながら、どんどんドラマに引き込まれて行く。そして『Bohemian Rhapsody』が最初に完成した際、レコード会社からは6分の曲は長過ぎる、ラジオでかけてくれないなどとしてシングルリリースを大反対されるエピソードが描かれるが、それでもQueenは押し通す。確かに今聴いても、Bohemian Rhapsodyは変わった曲だ。当時にしては尚更そう思われただろう。6分の中にロックあり、バラードもあり、オペラありの何とも豪華でバラエティーに富んだ内容だが、今聴いても絶妙な調和を保っている。こんな見事な曲は本当に稀有である。

この映画でフレディーを演じているのはラミ・マレックという俳優。フレディーのように出っ歯を作り、見事に実際のフレディーになりきっており、圧巻である。厳密に言うと、本物のフレディーよりは若干線が細い感じはするが、表情やそのパフォーマンスはまさにフレディーが乗り移ったような名演技。そしてその他のQueenメンバーであるブライアン・メイ、ロジャー・テイラー、ジョン・ディーコンの3名もそれぞれ見事に俳優が似せてきており、なかなかリアルな出来映えとなっている。


また、映画ではフレディーが如何に同性愛に目覚めて行くかの過程も描いているが、その中で周囲の人間に騙されてソロになるようそそのかされ、バンド解散危機の中で、信頼出来る友人が周りからいなくなって孤独感に苦悩するフレディーの姿、そしてまた病気をメンバーに打ち明け、再びQueenとして友情を交わして行く物語が繊細に描かれて行く。

そしてフレディーの恋人メアリー・オースティン役を演じるルーシー・ボイントンがなかなか美しい。ルーシーはどこかで見たような気がしていたが、2016年の映画『シング・ストリート』でもラフィーナを演じた女優であった。

クライマックスは伝説の『Live Aid』でのパフォーマンス。1985年にイギリス・ウェンブリースタジアムと米国フィラデルフィアで開催されたアフリカ飢饉を救う為のチャリティーライブ。あの『ウッドストック』を上回る規模のライブで、名立たるバンドが一同に会したことでも有名だが、その中でもQueenのパフォーマンスは今に語り継がれている。この映画では、なんとこのLive Aidでのパフォーマンスの模様を完コピしているが、これが見事な出来映えだ。本当のパフォーマンスと見分けがつかないくらいリアルに再現しており、これがこの映画最大の見所だ。

そしてこのライブの模様が何とも言えない感動を呼び起こす。既に本人はエイズにかかっており、自分の命が残り少ないことを悟っている。バンドメンバーも、そしてメアリーやボーイフレンドのジム・ハットンも。それを思いながら見ると、まさにフレディーの魂の叫びとしてライブの模様が心にガンガン響いてくるのだ。
この映画は、リアルタイムにQueenを聴いてきた世代もシネコンに足を運んでいるが、Queenの活躍した時代を知らない若い世代もこの映画を見て感動しているらしい。まさに世代を問わず人々の心を掴んで離さないQueen、そしてフレディーの偉大さをこの映画を通じて改めて痛感することとなった。音楽ファンそして、映画ファン必見の映画である。