今年はブルース・リー師匠が亡くなってから50周年という節目の年。そんな記念イヤーに、何とも嬉しいイベントが開催されている。題して、『ワールド・ブルース・リー・クラシック (WBLC)2023』!今年大いに盛り上がった、どこかで聞いたことのあるようなイベントのタイトルみたいだが、こうしてまたブルース・リーの映画祭が開催されるのはファンとしては何とも嬉しい限りである。
『WBLC 2023』は7/14 (金)から開幕となった。東京の近い上映館としては新宿ピカデリーと渋谷のヒューマントラストシネマ渋谷がある。映画祭で上映される作品は、配給会社・権利関係がワーナーブラザーズとなっている『燃えよドラゴン』を除いたブルース・リーの5作品。『ドラゴン危機一発』、『ドラゴン怒りの鉄拳』、『ドラゴンへの道』、『死亡遊戯』、そして今回『死亡の塔』までも追加された。『死亡の塔』は映画としてはなかなか面白いのだが、正直ブルース・リー映画と呼ぶにはおこがましい作品である。死後、無理やり僅かな本人映像を使って製作され、“ブルース・リー作品”として宣伝されていたにも関わらず、本人映像があまりにも少なくて公開当時はファンの怒りを買ったいわくつきの作品で、僕も当時リアルタイムで怒りを覚えた一人だ(笑)。しかし、『死亡の塔』もブルース・リー映画としてではなく、ブルース・リーがちょい役でゲスト出演している作品として捉えてしまえば観るに値する作品で、その評価も後に再評価された作品なのだが、正直この『WBLC 2023』に入れるべきであったかどうかはちょっと疑問も残る。しかし、まあ良しとしよう(笑)。
7/14から毎日上記5作品を順番に上映していくので、今回スケジュールの都合でまずは3日目にあたる7/16 (日)に『ドラゴンへの道』の鑑賞の為、ヒューマントラスト渋谷に出かけた。当日はかなりの混雑ぶりで、如何にもブルース・リーが好きそうな僕みたいな50代の男性が多かったが、中にはカップルや、何故か若い女子2人で来ている人もいて、なぜブルース・リーに興味を持ったのかに、逆に興味を持ってしまった(笑)。
売店にはブルース・リーのTシャツが3種類発売されていたが、こちらのDon’t Think, Feel Tシャツを記念に購入。またWBLCのパンフと、ブルース・リーの日本で流通している全ての映像作品(DVD等) 158作について解説した珍しいカタログが売られていたので、こちらも記念に購入した。
『ドラゴンへの道』は全ブルース・リー作品の中で僕が特に好きな作品でもある。彼の香港映画第3作に当たるが、『危機一発』と『怒りの鉄拳』の大ヒットを受けて、主演のみならず、監督・脚本・音楽監修・武術指導まで担当した渾身の映画であり、イタリア/ローマロケを慣行して予算もかなりかけた大作であった。そして、怒りに燃えるこれまでのシリアスなブルース・リーだけではなく、ちょっとお茶目なところも楽しむことが出来る意味で貴重な作品。そしてアクションシーンも今まで以上に豪華。ダブルヌンチャクが初登場し、ファイトシーンもあのジャッキーチェン作品の悪役として後に有名になったウォン・インシックとの対決や、『燃えよドラゴン』でオハラを演じたボブ・ウォール、そしてなんと言っても映画史に残るローマのコロッセオでのチャック・ノリスとの死闘は圧巻そのもの。
ちなみに、ブルース・リーの映画は全てDVD、そしてブルーレイで持っているので、観ようと思えばいつでも家で観ることが出来るし、これまでも数え切れないほど観ているが。それでもやっぱり映画館の大きなスクリーンで、他の観客と一緒に観るというのが楽しくもあり、ブルース・リー作品を楽しむ醍醐味でもある。そして、こういったリバイバル上映は何度も参加しており、2020年の生誕80周年記念に開催された『ブルース・リー4Kリマスター復活祭2020』にも何度か足を運んだので大スクリーンでも何度も観ているのだが、それでも毎回何か新しい発見や気付きがあるのが面白い。
今回はまた久しぶりにマジマジと『ドラゴンへの道』を鑑賞したが、正直映画全体のアクションシーンで言えば、雑魚クラスの敵が圧倒的に弱い。一撃ですぐにやられてしまうし、全く怖さを感じない(笑)。またアクションシーンがどれも比較的短い。今の時代、“これでもかあ~!”と言わんばかりにアクションを畳みかけたり、殴っても殴っても死なず、延々と戦っている映画があまりにも多いが、そのような作品と比較してしまうとかなり物足りなく感じるだろう。しかし、よくよく考えてみると、逆にそんなものは全くリアリティーが無いのだ。普通1発でも当たり所が悪ければ死ぬし、気絶もする。実際の喧嘩やアクションは、もっと短く終わると思うわけだ。そういう観点で観てみると、逆にブルース・リー作品のアクションはある意味リアリティーがあると思えてくるから不思議だ。
そしてやっぱり時代を経ても変わらないのが、ブルース・リーのパンチやキックのスピード。明らかに他の主演者のアクションとキレのレベルが全く違うのだ。しかもジャッキー・チェン映画のような早回し一切無しの、真のスピードなのである(むしろ、映画用に見やすくする為、少し大げさにやっているので、実践ではもっと早いと思うが)。これがブルース・リーの神たる所以だ。
そして今回も観ていてまた改めて思ったこととして、共演のノラ・ミャオがやっぱり可愛い!ということ。ノラ・ミャオは『危機一発』にちょい役で出て、『怒りの鉄拳』でヒロイン役に抜擢。ブルース・リーの恋人役として、ブルース・リーがスクリーン上で見せた唯一のキスシーンをノラ・ミャオと演じているのだ。そして『ドラゴンへの道』では3回目の共演なので、ブルース・リー映画ではお馴染みの女優なのだ。
1974年-1976年当時、映画雑誌『ロードショー』や『スクリーン』の人気女優ランキングではノラ・ミャオが常に上位に入っていた。そして僕も当時はノラ・ミャオが大好きだった。元々かなり好きなタイプの顔立ちだったが、今観てもやっぱり可愛い。そして前にも取り上げたが、ノラ・ミャオは以前好きだった倉木麻衣や、今も大好きな少女時代のユナにもどこか似ているような気がする。やっぱり僕の好きなタイプなのかもしれない。
今回、ヒューマントラスト渋谷を初めて訪れたが、なかなか良いミニシアターである。また上映中のラインアップもなかなかセンスが良さそうだ。明日は4日目なので、『死亡遊戯』をまた渋谷に観に行く予定。芦川いづみ映画祭もそうなのだが、こういったささやかな映画祭は結構熱量があってとても楽しい。WBLC開催期間中にあと何回か訪れてみたいと思う。