表紙の絵に惹かれて、図書館で借りてみた。内容は、真面目な研究だったが、とてもわかりやすい文章で書いてあり、コラムなどもあってズンズン読み進むことができた。日本の周辺には、40種もの鯨類がいるそうだ。そしてたまに浜に打ち上がる。その死体を調査するのが著者の仕事であり、クジラやイルカの内臓や骨などを回収して、その鯨類がどんなものを食べていたか、どんな海域で暮らしていたかを詳らかにしていく。それは気の遠くなるような地道な研究なのだ。
しかし、著者からは苦しみなどは微塵も感じられず、ただただ、鯨類をすることの喜びが伝わってくる。海にはまだまだ、人間の知らない世界がある、それを探究するのが楽しくてたまらない様子が伝わってくる。
世の中は広い、と思った。海の生物に取り憑かれた人達が、こんなにも熱を持って、日々研究を重ねているのだ。翻って、私は何に情熱を持っているだろうか、と考えてみた。うーむ、私は広く浅く、だなぁ、飛び抜けて人に誇れるものってないかもなぁ、なんて思った。ま、そんな人もいていいだろう。私がクジラやイルカだったら、きっと毎日遊んで暮らして、仲間と追いかけっこしたりして、うっかり浅瀬に座礁してしまったりして、この本の著者に解体されているかもしれぬ。そんな時は、思う存分に研究してもらって、鯨類と人間たちの橋渡しになれたらいいな。
地球には、数多の生物がいて、それぞれの生を生きているんだな、面白いな、と思えた本だった。