長い旅公演、音楽劇が終わり、すぐ次の公演の稽古に入ります。これはヴァイオリニスト喜多直毅さんとの朗読ユニット、おとがたりによる朗読公演。演目は、太宰治『人間失格』大作です。
旅公演に入る前から台本作りは始まっておりました。大きな土台となる骨組みを作り、旅公演から帰ってきたら詳細を詰めて台本は完成。そして稽古をして本番を迎えます。公演会場は、成城学園前にある、アトリエ第Q藝術にて。以下公演詳細です。
太宰治『人間失格』~道化と狂気のモノロギスト~
『自分は、しばらくしゃがんで、それから、よごれていない個所の雪を両手で掬い取って、顔を洗いながら泣きました。』
真実と虚実の谷間を彷徨う男一人。
虚ろな目に映るのは、過ぎ去っていく一切。
東北の田舎の裕福な家庭に生まれ育った葉蔵。厳格な父の存在と使用人による性的虐待が、彼の心に初源的な無力感と対人恐怖を植え付ける。彼にとって人間環境は過酷であり、そこを生き抜く術として葉蔵は人々の気持ちを先読みし、道化を演じる事により『気に入られる』ように務める。それは彼の恐れと弱さを覆い隠し、人々の好意を得るためには十分であったが、人を欺き続ける罪悪感も同時に強く抱えることになる。成人した後も人間恐怖は心の中で肥大し続け、激しく彼を苛むものとなった。他者に対する恐れ、不信感、諦めは、葉蔵を優しく庇う女性達に対しても抱かれた。やがて全てに絶望した葉蔵は死を希求する。このような精神状態が続く中、アルコールと薬物への依存は悪化し、遂に彼の人格は荒廃した。しかし発狂の後、彼の心にやっと初めての凪が訪れる。
物語が進むにつれ、葉蔵が徐々にモラルから逸脱し人として堕落していくのは明らかだが、一つ一つのエピソードに於ける彼の行動は、人間の恐怖から自分を守ること、“阿鼻叫喚”の世界で何とか生き延びることが動機となっている。全ては生きるため。
本公演は問いに満ちている。葉蔵は過ちを犯したのではなく、ただ悲劇の中に投げ込まれ道化の仮面をかぶることでしか生きられなかったのではないだろうか?彼は本当に人間として失格だったのか?そして私達は果たして『人間合格』なのであろうか?
出演:おとがたり
長浜奈津子(朗読)
喜多直毅(ヴァイオリン)
日時:2019年11月16日(土)14:30開場/15:00開演
会場:アトリエ第Q藝術1Fホール(成城学園)
https://www.seijoatelierq.com
東京都世田谷区成城2-38-16
03-6874-7739
料金:予約¥3,500/当日¥4,000
ご予約・お問い合わせ:
nappy_malena@yahoo.co.jp(長浜)violin@nkita.net(喜多)
おとがたり 朗読とヴァイオリン
https://www.otogatari.net/
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