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銀の河 ~ 長浜奈津子のブログ ~

皆さまへ 愛と感謝をこめて…!永井荷風 「濹東奇譚」 2018.1.20(土)/21(日) 市川文学ミュージアム



市川文学ミュージアムでは、市川ゆかりの作家、永井荷風を偲び、毎年5月に「荷風忌」を開催いたします。

それと別の特別企画展示が、昨年の11月から今年に2月にかけて開催中。「永井荷風展 荷風の見つめた女性たち」がそれです。
http://www.city.ichikawa.lg.jp/cul06/1111000267.html

その中のイベントで私が、
ひとり語りで出演するはこびとなりましたので

ヴァイオリニストで作曲家の喜多直毅さんに、ご出演を願いましたm(__)m

<声なきものの声>
私がこの作品をやりたいと大きく心が動いたのは、これでした。声なきものの声。東向島の界隈、その昔、玉ノ井と呼ばれた土地で生きた女性たちがいた。「濹東綺譚」はドキュメンタリーではなくて物語なのですが、そこから私は、かつてそこに生きた女性たちの姿を見て、声を聞きました。それを伝えたい...これが私の作品への入り口で、上演したいと願う動機になりました。そして下層階級と言われ蔑まれた女性たちへの、作家、荷風自身の優しい眼差しを大江に重なり感じました。「溝っ蚊女郎」と素見客に捨て台詞を吐かれ、大江匡には「鶏群の一鶴」と語られる、お雪と大江匡の恋物語。


<公演準備とお稽古>
まず実際の作品から、大江匡とお雪のエピソードに絞って台本をつくり、喜多さんのヴァイオリンと語りが、大きく絡むように構成。

台本つくり、これがかなり、思いきりの必要な作業でした。上演用の台本にするためには、大胆なカットも必要ですし、それをすることによって場面が大きく立ち上がるようにしなくてはならないからです。喜多さんにもご意見を伺いながら、かなり絞りこむことができました。

題名は「玉ノ井夜想~大江匡とお雪~ 濹東綺譚 永井荷風より」とさせて頂きました。「濹東綺譚」から抜粋、構成なので。


時間をかけて、よく話し合い、丁寧に創りあげました。 また場面ごとに、緻密にお稽古を重ねました。

私と喜多さんが実感できるところを見つけて、具体的な語りや音にしてゆく必要があるからです。すべてはわからない、もちろん未知の部分を多く含みながら。そうして進めてゆくと、その未知の隙間、空の部分が、大きく鳴る瞬間が起きます。もしかしたら、これがほんとうに、その瞬間に生まれた、生きた表現なのかもしれません。

この対話の時間が大切でした。
作品の世界をどんどん創りあげてゆく
とても楽しく豊かな時間でした。

音楽と語りで...
この舞台空間に大江匡とお雪の姿を
その二人の気配と息遣いを現したい...


その結果、
これまでにない実りを得られたと実感…

こんな風に読みたいなと、心に思っていたことがどんどん出来て、こんなことも出来るのね、という新しい発想がつぎつぎに浮かびました。本番に入ってからも、その発想はとまらず、語りから生まれる登場人物にもより生気が加わってゆきました

本番では、私自身があれっと思ったほど快活なお雪が息を弾ませて、大江の傘のなかに突然飛び込んできました。この日のために、朗読してきた気がしました。

喜多さんは、様々な発想からくる、まとまりのない私の話や言葉に、よく耳を傾けて理解して下さり

そのイメージを実際のものとして、
つぎつぎと音にして下さいました。

大江が独居の生涯で気に入っているという、残暑の日盛りのごく小さなひと場面を弾いて頂いたのですが、これがとても素晴らしかった。なんともいえない静寂と小さな幸せと侘しさと白くかすかにボンヤリ光る太陽と、虫干しする書籍の開いた頁なんかがじんわりみえてきます。いったい何が起こったのかと思いました。

「ラビラント」という場面。このあたりの二人、大江とお雪の心が、互いに向き合っているということが切なく鳴る場面。お雪が訪ねてきた馴染みの客と応接している時に、大江は玉ノ井の迷宮を歩き回る。心に想う人があり、他の男性を受け入れなくてはならないことは、もうどうしようもなく苦痛ではないか。そういう仕事とはいえ、大江は仕方なしと、のみ込めるのだろうか。お雪とのことは小説の取材のためであった、といいながら、なぜかお雪に心が寄せられる。大江は玉ノ井を徘徊して、花のひと鉢を買ってお雪のもとに帰るが、カーテンの灯影に、まだ客は帰ってはいない。そっと鉢を窓から差し入れて帰る。ここの音楽がなんとも切なく泣けるのです。こちらが泣いていては語れないので、心をたてて語るのですが...。喜多さんがこの場面に書いてくださった曲です。


私も、これまでの舞台経験からできることの他に新しい発想が生まれると、すぐに試しました。なんどかお稽古してゆくうちに、それは身になって、あるときから言葉が生き生きと零れてきます。

ひとつ、発見するといくつもいくつも
つらなって、色々なことが見えてきます

今でもあそこはああだったな、
こうしたいなと浮かんできてやみません(笑)


<喜多直毅さんのこと>
喜多さんは、一流の方なんです。もう、こういう方は、ヴァイオリンはもとより、どの道にも響き、ただ立っているだけでも、語っても、歌っても、そこに華を咲かせます。その魅力が、この舞台に際だっておりました。語りのとおり、声が素敵なんですよ。

稽古から本番まで、創造的な道をまっすぐ歩くことが出来ました。私は心から感謝、信頼しております。喜多さん、ほんとうにありがとうございました。またどうぞ、よろしくお願い致します

道といえば

公演を終えた帰りみち
駅まで歩く道すがら....

喜多さんがふと私に「それにしても、良かったですねえ ...他人事みたいだけど」 といってから、ハハハと笑いました。

私がずいぶん嬉しそうにしていたからかしら...なんて思っていましたら「ではでは僕は、地下鉄で帰ります、お疲れ様でした!」 と、さあっと消えてゆきました。


音楽の才能と悪魔的な魅力を持ちながら
童子のように自由で奔放...


音楽仲間の方々、御友人のみなさん
ファンのみなさまに、愛される方なのだなと

....!


喜多直毅さんのサイト
https://www.naoki-kita.com/


ところで

みなさん …文豪アルケミストって、ご存知ですか?



このアニメのパネル…
文学ミュージアムに展示されているもので、今人気の文豪ゲーム。
このゲームのおかげで、若い世代の人がこの「荷風展」を訪ねてくるのだそうです。
ゲームをきっかけに、本を読むようなるのだそうです。

https://bungo.dmmgames.com/ ←文豪アルケミスト

ちなみに、喜多さんの方が「森鴎外」、私の方が「永井荷風」(髪が長い!) なのだそうです。


 

最後になりますが、市川文学ミュージアムの増田さま、柳澤さま、担当スタッフの皆さま、大変お世話になりました。

大きな企画展示のお忙しいなか、照明や音響など細やかな対応をして下さり本当に感謝しております。

そして、ベルホールに足をおはこびくださったお客様、ありがとうございます!

また5月3日の「荷風忌」でお目に掛かれましたら幸いです。
お誘いあわせの上、ぜひお越しください。お待ちしております。


長浜奈津子より、皆さまへ 愛と感謝をこめて。
2018.1.23

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