2022年5月3日(火・祝日)は、第14回 市川荷風忌 に出演させて頂きます。
『あめりか物語〜おち葉』『勲章』を朗読します。
まずは、永井荷風の滞米時代の荷風文学について、南山大学の准教授、岸川俊太郎さんの講演があります。荷風のアメリカ時代のお話なので、私は「あめりか物語」から「おち葉」の章を読むことにしました。このお話の中に、ベルレーヌの「落葉」の詩が出てきます。この詩は堀口大学、金子光晴、窪田般彌、橋本一明、上田敏…たくさんの訳詞がありますが、ここでは勿論、永井荷風の訳となりそれを読みます。
それから「勲章」を。浅草のオペラ座の楽屋に出入りする丼飯屋のおじさんのお話ですが、楽屋着やら何やら、楽屋口からいろんな物売りの方たちが入ってきます。大部屋の踊り子さんたちのお部屋は横長の鏡前に座布団が並んでいて、昼夜の公演をそこで過ごす様子が描かれていてきます。
この「勲章」は私にとって懐かしいお話です。昔…20代の頃、改装前の明治座の楽屋でのこと。化粧品や楽屋着などを売りに来られたひとたちを思い出しました。化粧瓶やクリームの並ぶ箱が楽屋口に置かれて、お姉さんたちが浴衣で覗きこんでいたりする姿が懐かしいです。私は新人で、劇団からではなくこの世界で長いベテランのお姉さんおニ人と三人部屋。洋食の出前やお弁当を頼むなど、そういうことが私には珍しくて、私もお弁当を頼んでみたりしました。
私がどんなに急いでも、12分掛かっていた着物の着替えを、7分で着替えるのよ!とコツを教えて頂いたりしました。お姉さんたちは4〜5分でメイクまできっちり仕上げていました。眩しかった。もっともっと教わっておけば良かったと、今頃思います。着替えのさばきも美しくて、暖簾をサッとくぐって楽屋口から舞台へ向かう姿が格好良かった。…稽古場ももちろん緊張感があって、殺陣の先生も入って目を見張る日々でした。
初めて「勲章」を読んだとき、このようないろいろを思い浮かべていました。でも(笑) もちろん作品とは関係ありませんが、古い劇場の(この作品ではオペラ劇場ですが)楽屋や廊下などの賑やかな様子を浮かべながら…この作品の内容をしっかり朗読したいと思います。
第14回 市川荷風忌
最後までお読み頂きましてありがとうございました🌷