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銀の河 ~ 長浜奈津子のブログ ~

宮澤賢治 『よだかの星』= 星めぐり =

お日さまが東からのぼってきたので、ぐらぐらするほどまぶしいのをこらえて、夜だかはそっちへ飛んで行きました。そしてお日さまに自分を連れていって欲しいと懇願します。「灼やけて死んでもかまいません。」と言いながら。するとお日さまは、夜だかはひるの鳥ではないのだから、星にたのんでみなさいと云います。夜だかはおじぎを一つすると、野原の草の上に落ちてしまいました。


皆さんこんにちは、長浜奈津子です🌸

おとがたり朗読公演を、2月5日(土)に代々木の松本弦楽器さんでおこないます。
今回は、おとがたり初演として宮澤賢治の『よだかの星』を上演します。

ブログで少しずつ、写真を添えて本文から少し抜粋して、物語をご紹介しています。
今日は、=星めぐり =です。




<本文より>

まるで夢ゆめを見ているようでした。

からだがずうっと赤や黄の星のあいだをのぼって行ったり、どこまでも風に飛ばされたり、又鷹が来てからだをつかんだりしたようでした。


つめたいものがにわかに顔に落ちました。

よだかは眼をひらきました。

一本の若いすすきの葉から露つゆがしたたったのでした。


もうすっかり夜になって、空は青ぐろく、一面の星がまたたいていました。

よだかはそらへ飛びあがりました。



今夜も山やけの火はまっかです。

よだかはその火のかすかな照りと、つめたいほしあかりの中をとびめぐりました。

それからもう一ぺん飛びめぐりました。

そして思い切って西のそらのあの美しいオリオンの星の方に、まっすぐに飛びながら叫びました。



「お星さん。西の青じろいお星さん。どうか私をあなたのところへ連れてって下さい。灼けて死んでもかまいません。」

オリオンは勇ましい歌をつづけながらよだかなどはてんで相手にしませんでした。


よだかは泣きそうになって、よろよろと落ちて、それからやっとふみとまって、もう一ぺんとびめぐりました。

それから、南の大犬座の方へまっすぐに飛びながら叫びました。



「お星さん。南の青いお星さん。どうか私をあなたの所へつれてって下さい。やけて死んでもかまいません。」

大犬は青や紫や黄やうつくしくせわしくまたたきながら云いました。

「馬鹿を云うな。おまえなんか一体どんなものだい。たかが鳥じゃないか。おまえのはねでここまで来るには、億年兆年億兆年だ。」

そしてまた別の方を向きました。


よだかはがっかりして、よろよろ落ちて、それから又二へん飛びめぐりました。

それから又思い切って北の大熊星の方へまっすぐに飛びながら叫びました。


「北の青いお星さま、あなたの所へどうか私を連れてって下さい。」

大熊星はしずかに云いました。

「余計なことを考えるものではない。少し頭をひやして来なさい。そう云うときは、氷山の浮いている海の中へ飛び込こむか、近くに海がなかったら、氷をうかべたコップの水の中へ飛び込むのが一等だ。」



よだかはがっかりして、よろよろ落ちて、それから又、四へんそらをめぐりました。

そしてもう一度、東から今のぼった天の川の向う岸の鷲の星に叫びました。


「東の白いお星さま、どうか私をあなたの所へ連れてって下さい。やけて死んでもかまいません。」

 鷲は大風に云いました。

「いいや、とてもとても、話にも何にもならん。星になるには、それ相応の身分でなくちゃいかん。又よほど金もいるのだ。」








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宮澤賢治の “よだか” は、世間から嫌われ、誤解されて、蔑まれて、夜に暮らす鳥です。
イーハトーブの夜空に輝く、青い星をながめながら、賢治はなぜ…この物語を思いついたのでしょうか。

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2022年2月5日(土)おとがたり朗読ライヴ  於:松本弦楽器(代々木)

<公演詳細>

出演:おとがたり
   長浜奈津子(朗読)
   喜多直毅(ヴァイオリン)
内容:朗読(吉田一穂・詩作品、宮沢賢治『よだかの星』)

日時:2022年2月5日(土) 18:00開場/18:30開演
会場:松本弦楽器(代々木)
   http://matsumotogengakki.com
   東京都渋谷区千駄ヶ谷5-28-10
   ドルミ第二御苑804号室
   03-3352-9892(場所の問合せのみ受付)
   地図 https://goo.gl/ygOCZw

料金:予約3,000円/当日3,500円

ご予約・お問い合わせ:nappy_malena@icloud.com (長浜) violin@nkita.net(喜多)

メールタイトルは「おとがたり2月予約」、メール本文に「代表者氏名、人数、連絡先電話番号」を必ずご記入の上、お申し込みください。
会場は普通のマンションの一室です。
開演18:30以降はメインエントランスのインターホンが通じなくなる場合がございます。
時間に余裕を持ってお出かけください。


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<演目作品>

◎ 白鳥古丹 カムイコタン -未知から白鳥は来る- 吉田一穂

あヽ麗はしい距離 つねに遠のいてゆく風景……
悲しみの彼方、母への、捜り打つ夜半の最弱音
    吉田一穂  詩篇 I 海の聖母より『母』

吉田一穂は、極北の詩人、孤高の詩人、また海と望郷の詩人などと呼ばれる。
北海道上磯郡釜谷村生。積丹半島の古平町は、荒磯が見え隠れする段丘海岸。
変化の劇しい青が輝く海と空の下、一穂は少年時代を過ごす。代表作は「海の聖母」「白鳥」他、幻想童話集「海の人形」など。


◎ よだかの星 宮澤賢治

「北の青いお星さま、あなたの所へどうか私を連れてって下さい。」
「東の白いお星さま、どうか私をあなたの所へ連れてって下さい。やけて死んでもかまいません。」

夜だかは、どこまでも、どこまでも、まっすぐに空へのぼって行きました。
もう山焼けの火はたばこの吸殻のくらいにしか見えません。よだかはのぼってのぼって行きました。


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<おとがたりプロフィール>


おとがたり https://www.otogatari.net
女優・長浜奈津子とヴァイオリン奏者・喜多直毅による朗読ユニット。首都圏を中心に意欲的に活動を行なっている。物語の持つファンタジーを声や楽器の音を通して空間にありありと描き出すために、即興的に互いの間・抑揚・言葉に反応しながら進行するパフォーマンスは臨場感にあふれ、聴く人はまるで物語の中に居合わせるかのような印象を抱く。来場者はもとより、文学研究者からも高い評価を得ている。


長浜奈津子 https://www.nappy-cantactriz.com
桐朋学園演劇科卒業後、劇団俳優座へ。女優・朗読家。2016年から市川市文学ミュージアム「市川荷風忌」へ出演。 “荷風ひとり語り”『ひかげの花』他三味線語り。ヴァイオリニスト喜多直毅氏との朗読ユニット“おとがたり”では『濹東綺譚』他、永井荷風作品を多数上演。於:六本木ストライプハウス「朗読空間 ~ひとり語り~」では、泉鏡花『高野聖』『外科室』他、坂口安吾『桜の森の満開の下』『夜長姫と耳男』、小川未明『赤い蝋燭と人魚』、小泉八雲の怪談、宮澤賢治の詩と童話、他多数。 ときに“女優の語り” として物語の登場人物を演じ読み、ときに声のみで言葉や物語を聞き手に読み渡す。

喜多直毅 https://www.naoki-kita.com
国立音楽大学卒業後、英国にて作編曲を、アルゼンチンにてタンゴ奏法を学ぶ。現在は即興演奏やオリジナル楽曲を中心とした演奏活動を行っている。タンゴに即興演奏や現代音楽の要素を取り入れた“喜多直毅クアルテット”の音楽は、そのオリジナリティと精神性において高く評価されている。他に黒田京子、齋藤徹 (故人) との演奏や邦楽・韓国伝統音楽奏者・現代舞踏家との共演も数多い。欧州での演奏も頻繁に行う。我が国に於いて最も先鋭的な活動を行うヴァイオリニストの一人である。





おとがたり〜朗読とヴァイオリン〜


最後までお読み頂きましてありがとうございました🌷





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長浜奈津子のHP =芝居と音楽と語り=


https://www.nappy-cantactriz.com/
https://twitter.com/vivi_gato





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