笑顔は言葉
声の響きにも
文字の形にも
ならないけれど
それはまっすぐな
美しいメッセージ
ほっとして
温かくなって
明るくなる
まるで
陽だまりのよう
それはたぶん魔法
それはきっと薬
お願い
もう一度見せて
そして
もう一度温めて
**************
「ねえ、ちょいとお前さん」
「おっ、久(しさ)しぶりに現れやがったな、
ポジティブシンキングなもうひとりのオレ」
「あたしも陽だまりが欲しいよ。
だいぶ寒くなってきたことだしさ。
お前さんの笑顔ってやつで
ひとつあたしを温めておくれよ」
ニコッ
「どうだ、あったかくなったか?」
「ぜ〜んぜん!
だいいちその"ニコッ"だなんて
声に出しちゃ雰囲気ぶち壊しだよ。
それになんかイヤらしい感じだよ。
お前さん、稽古してきたかい?」
「稽古?」
「そうだよ。なんだってそうさね。
笑顔を極めるにゃ稽古を積まなきゃ。
ほら、この手鏡使ってさ。
・・・お前さん、いま何が映ってる?」
「おめえが映ってらぁ」
「相変わらずオタンコナスだねぇ。
いいかい?あたしゃ"誰が"だなんて
聞いてやしないよ。"何が"映ってるって
聞いているんだよ」
「そりゃおめえ、笑顔に決まって・・・
あれ?なんか上手くねえなぁ。
こりゃ助平ったらしい笑い方だ」
「やっと分かったみたいだねぇ。
まず目の輝きが違ってるよ。
お前さんの目はギラッとしてるから
ニタッになっちまう。
キラッとすれば自然にニコッになる」
「目かぁ。どうすりゃキラッになるんだ?」
「教えて欲しいかい?」
「焦(じ)らすんじゃねえよ」
「ほらほら、その脂ぎった物言い。
鏡の中のお前さんの顔、
どんなふうに映ってるか覗いてごらんよ」
「・・・しょうがねえな。
男前にゃ程遠いし、ガサツだし、
不器用だし、品(しん)の欠片もねえや。
これじゃ、おめえが凍えていたって、
あっためてやることもできねえ」
「お前さん・・・
オトコは顔なんかじゃないよ。
ガサツだって不器用だっていいんだよ。
品のカケラはどっかから拾って
掻き集めてくりゃいいじゃないのさ」
「品のパッチワークってか?」
「そうさね!ただね・・・
笑顔には愛がないとダメなんだよ」
「愛・・・愛かぁ」
「もっと自分を愛してごらんよ。
自分を愛せないオトコに
誰かの気持ちを振り向かせて
温めてあげることなんかできやしないよ」
「ジブンを愛する・・・どうやってだ?」
「手始めに、あたしを愛してごらん。
お前さんを励ますために生きてるあたしを」
「・・・・・ポジ・・・」
「なんだねぇ、男のくせに泣く奴が・・・
あら?ヘンだねぇ。今度はあたしの胸が
熱くなってきたよ。
なんだ、お前さんには笑顔より
泣き顔の方が似合ってるじゃないか。
さっ、笑顔の稽古なんかよして
いまから泣き顔を極めていくよ」
「あのな・・・」
※[産業道路]の文字の入り方が
とってもカワイイ標識。
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