「ジュリア、少し風が出てきたね。
寒くない?」
「大丈夫よ、ありがとう。
こうやってロバートと海を見に来るの
今日で何回目か覚えてる?」
「え〜、ん〜、8回目」
「正解!ちゃんと覚えているのね。
それでは第2問、わたしがレモンイエローの
ワンピースを着てたのは何回目かしら?」
「初めて行った時!
上に紺のカーディガンを羽織ってた。
あれはたしか伊豆の白浜海岸。合ってる?」
「完璧よ、ロバート!
あの時もあなたはわたしに聞いたわ。
寒くない?って」
「あはは!そうだったっけ。
そこまでは覚えてないけど、
ジュリアとこのままいつまでも
一緒に海を見ていたいって思ってたと思う。
もしも永遠ってものがあるなら今欲しいってね」
「まっ!それ、本当?
わたしも同じこと思っていたわ。
このまま時間が止まりますようにって。
あの時も今日のような風が吹いてた」
「ぼくたちの心って似ているのかな」
「そうかもしれない。ねえロバート、
心ってどこにあると思う?」
「・・・・・・目」
「・・・目?」
「うん」
「どうしてそう思うの?」
「人は嬉しすぎたり、悲しすぎたり、
悔しすぎたり、寂しすぎたり
痛すぎたり、あまりにも感動したとき、
その気持ちに耐えられなくなって
涙が出そうになるよね?」
「えぇ、まあそうかもね」
「ぼくはまだ子どもの頃、頬を伝う涙って
どうしてあんなに熱いんだろうって
不思議に思ってた。
そこにはぼくが知らない不思議なエネルギーが
潜んでいるんじゃないだろうかって。
涙が熱いのは目が熱をもっているから。
それってもしかしたら心が
そこにあるからなんじゃないかなって
なんとなくそんなふうに感じた。
だから修行を積めば目を見ただけで
相手の心が読めるかもしれないって」
「修行(笑)。ロバート、わたしがいま
何を考えているか当ててみて」
「少し寒くなってきたわ。
なにか羽織るものが欲しい・・・どう?」
「まあ!わたしの心が読めるのね、
って言ってあげたいけど残念ながらハズレよ」
「それじゃ正解はなに?」
「ダメよ。よーく考えて!」
「あーっ、えーと」
「ほら、わたしの目を見て」
「ジュリア・・・」
チュッ!
「そんなにすぐに当てちゃダメ〜!
もっとロバートに考えさせたかったわ!
もーっ!罰としてクルマから
ブランケットを取って来なさい!」
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心が美しい人は目も美しい。
目が美しい人は・・・どうだろう。
どうやら能天気な私が考えるほど
人生はタンジュンぢゃなさそうだ。