ケーブル日和【オーディオケーブルの超マニアックなお話】

オーディオケーブルに関する超マニアックなお話を中心に、大好きでたまらないオーディオへの思いなどを書いていきます。

工房の端末処理方法(スピーカーケーブルMINERVA)

2024年10月27日 | ケーブル自作・お役立ち情報

今回は、ケーブル工房TSUKASAで製作販売しているスピーカーケーブルは、どのように端末処理を行なっているかをご紹介したいと思います。

対象のケーブルは スピーカーケーブルMINERVA[標準モデル]です。

このスピーカーケーブルでは、ロック式のバナナプラグ「FURUTECH製 FT-212(G)」を採用しています。

このバナナプラグはネジ止めにより、ケーブル導体を固定する方式となっています。

以下、詳しくご説明させていただきます。

 

<スピーカーケーブルMINERVA>

 
 
それでは、まず使用しているバナナプラグについて詳しく説明いたします。
 
 
1.使用バナナプラグのご説明
 
<バナナプラグのロック方式について>

FURUTECH製のバナナプラグ FT-212(G)は、ハウジングを時計回りに回すことにより3分割された先端が開き、差し込んだスピーカーターミナルの内面に強く密着することで、ロックがかかります。

この密着力は非常に強く、強く引っ張っても全く抜けなくなるとともに、接触抵抗を大幅に低減しています。

 
 
 
 
<バナナプラグの構造>
 
 

バナナプラグは、上の写真の右側の様に分解できます。

芯線との接続は、バナナプラグの中央付近にあるネジにより締め付けて固定します。

芯線接続部分について、芯線挿入口から見た写真は次のとおりです。

 
<バナナプラグの芯線接続部分>
 

上記の写真を見ると、芯線を固定するネジと端子部分にかなり隙間があることがわかります。

このため、スピーカーケーブルMINERVAの導体(直径1.2mm 銅単線×4芯)をそのまま取り付けると、1~2本しかネジで締め付けることができず、残りがばらけてしまいます。

そこで、銅単線4芯にワイヤーチューブを被せて束ねる方式としました。

 

2.芯線4本の束ね方

<ケーブル導体とワイヤーチューブ>

ワイヤーチューブはFURUTECH製「GS-28P」(α純銅・非磁性体金メッキ 2.8Φ×10mm)を使用しています。

このワイヤーチューブの内径は芯線4本を束ねたものより若干小さく、そのままでは入りません。

そこで、ワイヤーチューブの内面と芯線4本に、和光テクニカルのチタンオーディオオイルを塗布し、ワイヤーチューブを芯線にハンマーで叩き込んで被せています。

チタンオーディオオイルは、金属表面の保護(酸化防止)と接触抵抗を低減する働きがあり、潤滑製もあります。

※和光テクニカルのチタンオーディオオイルは販売終了となっています。同一ではありませんが、同じスクワランオイルを主成分とした製品が発売されていますのでご紹介いたします。

アムトランス クリアスクワラン オーディオ用 接点保護膜 酸化防止剤

 

<芯線4本にワイヤーチューブを被せた写真>

上記の写真を見ると、芯線4本がワイヤーチューブと一体化して密着していることがわかります。

尚、ワイヤーチューブを芯線4本に被せてハンマーで叩き込むと、ワイヤーチューブの一部が潰れてバリが出来ます。

このバリはヤスリにより綺麗に削り落とします。

 

3.メッシュチューブ加工

ここまでの加工ができたら、導体の保護のためメッシュチューブ(赤、黒)を被せます。

そして、プラス側の導体(赤)とマイナス側の導体(黒)を、更に別のメッシュチューブで1本に束ねる加工を行います。 

 

<メッシュチューブ加工とプラグの取り付け>

 

4.バナナプラグの取り付け

最後にバナナプラグの取り付けになります。

バナナプラグを取り付ける前に、プラグのハウジングやエンドリングはケーブルに通しておきます。

プラグを取り付ける前に、ワイヤーチューブの表面とバナナプラグの内部端子にチタンオーディオオイルを塗布し、接触抵抗を低減させています。

また、非常に細かいことですが、芯線を固定するネジを入れる端子側のネジ穴部分にも、チタンオーディオオイルを塗布して、接触抵抗を低減しています。

 

バナナプラグ「FT-212(G)」の芯線ネジ止めについては、FURUTECH社指定の締め付けトルク(最小15cN.m~最大30cN.m)があります。

工房では、空転式プリセット型トルクドライバー「FIRSTINFO H5177」を使用して30cN.mで締め付けています。

 

<FIRSTINFO H5177の写真>

 

さて、ここでバナナプラグに芯線をネジ止めした時、どのような状態で接続されているか確認してみました。

バナナプラグにネジ止めした芯線を、ネジを緩めて抜いてみました。

ワイヤーチューブの中央に丸くネジ跡が残っており、ネジがしっかり食い込んでいたことがわかります。

また、この写真では見えませんが、ネジ跡の反対側はバナナプラグの内部端子の形(半円)に沿っていました。

この状態であれば、バナナプラグの内部端子やワイヤーチューブ、芯線に塗布したチタンオーディオオイルの効果と合わせて、接触抵抗は非常に低くなっていると想定できます。

<ネジ止め後の芯線状態>

ここで、ちょっと補足のご説明です。

上記の写真で、黒色のメッシュチューブを固定している乳白色の部分は、フッ素樹脂テープを巻いたものです。

フッ素樹脂テープは強度と粘着力が高く、適度に伸びがあり、高温にも強く劣化しません。

また、絶縁体としても電気特性が優れており、ケーブル加工に最適なテープです。

 

あと、プラグを取り付ける際にフッ素樹脂テープの巻き数で、導体部分の厚みを調整します。

スピーカーケーブルMINERVAでは、バナナプラグに導体を挿入する際に、ややきつくなるようにフッ素樹脂テープを巻いています。

これにより、バナナプラグと導体がガタつきがなくなり固定強度が増します。

スピーカーによる振動に強くなりより安定した音質となります。

 

最後に、ケーブル芯線とプラグとの接続は、音質に大きな影響を与える重要な部分です。

ネジ止め方式は、ハンダを使用しないため自然で素直な音質となるメリットがあります。

一方、ネジ止めでは全ての芯線を確実に接続するために工夫が必要となり、芯線の銅線が空気に触れるため酸化防止の対策が必要となります。

工房では以下の3点に重点をおきながらケーブル開発を行なっています。

(1) ケーブル芯線とプラグとの接続ロス極小化

(2) 芯線(銅線)の酸化防止

(3) プラグの固定強度の確保

 

ケーブルの自作に、何からの参考になれば幸いです。

 


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