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「野なかの薔薇」台湾人の心中国に届くか

2008-11-28 | Weblog
1949年の中台分断後、最高位の中国要人として今月上旬、台湾を初訪問した海峡両岸関係協会の陳雲林会長。滞在中、中台は経済分野で一段の緊密化を図ったが、日程の実質的な最終日の6日夕、台湾側は思いもよらぬ粋な計らいで陳会長をもてなした。
 台湾で空前のヒットとなった映画「海角7号」。恋に落ちた日本人と台湾人のラブストーリーで、日台の心の絆(きずな)を描く話題作だ。複雑な心情が混在する台湾社会を陳会長に理解してもらおうと、滞在したホテルで上映会を開いたのだ。
 「♪童は見たり、野中の薔薇(ばら) 清らに咲ける その色めでつ 飽かずながむ 紅におう 野なかの薔薇」(近藤朔風訳詞)
 そう、あのシューベルト作曲の「野なかの薔薇」を日本語と中国語で大合唱するエンディングは、長い統治の歴史と移民文化の中で培ったもの悲しく、だが粘り強い、台湾人の心のハーモニーを聞くようだ。
 上映会でホストを務めたのは、陳会長の交渉相手である台湾の対中国民間窓口機関・海峡交流基金会の理事長で、中国国民党の副主席を兼務する江丙坤氏。中部・南投県出身の江氏は、小学校では日本教育を受け、東京大学に学び、「駐日中華民国大使館」(当時)での勤務経験もある国民党きっての知日派だ。
 「台湾と日本の間には歴史的な背景があり、それはしこりでもあるが、映画を見れば、それが彼の心のどこかに触れるはずだ」
南部・墾丁の海辺を舞台に展開する物語の“主役”は、60年以上前、台湾から敗戦で日本に引き揚げた日本人男性が、恋心を寄せ合う台湾人女性にあてた7通のラブレター。交わされる言葉は台湾語が中心で、そこに日本語、中国語、客家語、先住民語が入り交じる。庶民の日常を描写し台湾語の掛け合いで笑いを誘い、過去と現代をつなぐ日本人と台湾人の心の触れ合いが感動を与える。
 興業収益が4億台湾元(約12億円)を突破して台湾映画としては最高益を記録したのも、39歳と若い魏徳聖監督が激しい政治対立ですさむ社会に潤いを与えたからかもしれない。
 ただ、台湾を含めて中華圏における日本の評価は一様ではない。まして中国は厳しい歴史認識をもつ。台湾が映画に託した「台湾人の心」は北京にどう届くのか。「海角7号」は近く中国でも封切りされる。中台は今後、どんな「野なかの薔薇」を奏でるのだろう…。(2008.11.15 09:00 産経新聞 台北 長谷川周人)


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