時間とも空間とも乖離している。四季を表現した言葉ですが、この物語を読み始めて受けるのが、まさにそんな感じ。とても不思議な感覚。そのときどきで頭を切り替えないと混乱して読み進められないかもしれません。読みづらい、というわけではないのですが。(これには理由があって、読み進めていくと納得してすっきりします)。
真賀田四季の 5歳から 13歳までの話。5歳、いや 3歳時点で、もうすでに圧倒的な天才。天才の片鱗なんてものではない。すで頭脳としては完成されているのではないかと思えてしまう。
でも、ごくたまにですけど、“僕”にだけもらす弱音めいた言葉や、“僕”だけが気づく彼女の感情などから、彼女も人間なのだと思えました。この“僕”視点で語られているせいでしょうか。どこか優しいあたたかさが感じられます。そして、少し泣きたくなりました。
まさに春 [Green Spring]というタイトルにふさわしい話だったと思います。
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ここからネタバレありです。
「すべてがFになる」を読んでいたので、其志雄が四季の人格のひとりという考えには、わりとすぐにたどり着きました。でも、それではどうも説明のつかないところがあって、腑に落ちないと怪訝に思っていたのですよね。其志雄がアメリカに渡ってからは確実に何かが違うと。もしかして、実体のある其志雄もいる? 死んだと思われていた兄が、実は生きている? とまでは考えたのですけどね。まさか其志雄の中にさらに別人格の透明人間氏がいるなんて…。ややこしすぎ!(笑)
しかし、其志雄が隠されていた理由というのは何だったのでしょうか。戸籍すらないなんて。単なる病気というわけではないですよね。本当に透明人間だったらそうするかもしれませんが…。彼の出自を隠したかった、ということなのでしょうか。それにしては極端すぎるような気もするし…。
花をちぎりまくるシーンが印象的でした。そんな無邪気なくらいの疑問を持っている子供は、案外多いのではないかと思う。大人になっても解決するわけではないけど、そんなものだと思って受け入れているだけかな。こんなことを言っては頭がおかしいと思われると考えて、たいていの人は自制するのですよね。
新藤とのことが気になります。四季の態度がどうもね。もしかしてこのときから…? 普通に好きだとか、そんな感情なのかどうかわかりませんが。
最後、四季の中の其志雄が消えたときは、なんともいえない寂しさみたいなものを感じました。ずっと四季のことを見守っていた其志雄が、大好きだったといいながら消えていった。そして何より、四季が「私を置いていかないで」と言ったことがね。あの四季が、ですもんね。
其志雄は消えたけど、また戻ってくるのでしょうか? Fのとき、其志雄の名前を使っていましたが、単に四季が利用しただけなのか、本当にその人格がいたのか…。気になるところです。
プリンストン大って、私の弟が研究しに行っていたところじゃないか…(今はスタンフォード)。マスタではなくポスドクかなんかだったけど。でもとにかくすげぇなオイ。真賀田四季と同じ大学なんて!(笑)。プリンストンと聞いてプリングルスしか思い浮かべられなかった馬鹿な姉を許してくれと言いたくなりました(……)。
西之園教授と会ったときの四季は、普通に利発な少女という感じでした。子供のときのような、他人を遮断するような感じは見られなかったですし。大人になったということなのだろうか。それとも相手が西之園教授だったからだろうか。天才にも気後れすることなくフランクな態度で接する西之園教授……最強かも(笑)。つまらない冗談を言ったり、コップを片付けさせたり。やるなぁ。
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で、次は「四季 夏」ですね。さっそく買ってきました。例の事件のあたりなのかな。楽しみだ! 「四季 秋」「四季 冬」も出ていた(今日が発売日だったらしい)ので、待つことなく読めます。なんて良いタイミングでしょう!
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