鶴城夢芸帖

ゲームやらおもちゃやら日々の出来事やらを思いついたまま書く。その名は「鶴城夢芸帖(つるぎむげいちょう)」

前回の続き

2021-08-09 21:14:28 | Weblog
結局、前回取り上げたHJ編集の問題は
当該のツイートを行った編集部員は退職、その上司も揃って降格という非常に重い処分がなされました。
このことについて、さすがにツイート一つで首になるのは行き過ぎではないかという意見もありますが、
模型業界最古参の専門誌としては、業界に悪影響を及ぼすと考えられる転売を容認する発言は業界全体に対する裏切り行為であり、
断固として認めることはできないという姿勢の表れでしょう。

ただ、個人的にはこれで終わりにしてはいけないとも思います。
タイミング的に次号の内容を差し替える時間はあると思われるので、何らかの記事は掲載されると思いますが、
お詫びの文章と、HJ編集部は転売を容認したりはしていないということを書くだけでは不十分だと思います。
この際ですから、編集部の人たちに加えて、メーカー、卸問屋、小売店の人も交えて現状をどう思っているのか、
どういう影響があるのか、今後どうするべきなのか話し合ってもらいたいところです。

今回の騒ぎのある種の収穫としてあちこちで「転売は業界にとって悪である」ということを説明する動画や記事が見られるようになったことがあります。
転売については先日もある経済学者が「転売も流通を促進する面があるから悪ではない」というようなことを言っていたりしましたが、
この人の言う転売というのは例えば、ある地域で作りすぎて売れ残っている商品があるとき、その品を買い込んで、別の地域に持って行って高く売る、
というような行為をさしているようなのですが、流通が非常に発達して国内ほとんどの地域でネットで注文したものが2,3日で届くような現在にはそぐわない古い考え方です。
現在問題となっている転売屋は小売と客の間に割り込んで、利鞘を要求するというものでむしろ円滑な流通の妨げでしかありません。
ですが、この人のように結局欲しい人が金を積んで買ってるだけだし、メーカーも小売りも商品が売れているのだから問題ない、と思っている人も結構いるようです。
そういう状況を踏まえれば、転売の何がよくないのかを説明して、さらには転売屋から購入する行為は転売屋を増殖させて状況の悪化を招くので買ってはいけないということまで訴えてもらいたい。

確かに、なんで客が我慢しなければならないのだ、という意見も分からなくはないのですが、あえて言わせてもらえば、
食料や医薬品と違ってプラモデルは買えなくても別に死にはしない。
というか、予約してから実際に商品が届くまで時間が掛かっていると届くころにはまた別な商品が欲しくなってるだろうから、見送ってもいいじゃないか。
高い金で買わされたプラモデルを気持ちよく作ることができるか?少なくとも私には無理だ。

今回の一件で「HJもう買わないようにしようぜ」「廃刊してしまえ」などと言っている人もいますが、
別にHJが廃刊しても転売屋には痛くもかゆくもないわけで、不買を訴えるなら転売屋に対する不買を訴えるほうが建設的でしょうに。

そういえば先日から今度は「返品祭り」などというワードがネットでみられるようになりました。
これは何かというと、7月に発売されたガンプラHGUCナイチンゲールが転売屋に買い占められていたのですが、
先ごろバンダイから再販のアナウンスがあったので売れなくなって困った転売屋が商品を返品しているというものです。
そしてこれに合わせて、「転売屋ざまあ」「バンダイよくやった」というような声が上がっているのですが、
個人的には、「いや、なにいってんの?」という気持ちです。
普通に考えてプラモデルの返品なんてそうそう受け付けてもらえるわけがないです。
まして発売日には行列ぐらいできたであろう商品です、間違えて買いましたが通じるわけがない。
不良品だとしても在庫品と交換、それが無理ならメーカーに連絡してって言われるのが普通じゃないですかね。
実際に返品しているところを見た、という話もSNSで見られるようですが正直信憑性に欠ける。
おそらく騒いでいる人たちの頭の中では
HJ編集部員のやらかし>バンダイが怒って再販決定>転売屋の商品値崩れ>返品祭り
というような物語ができているようで、実際メルカリなどの価格は下がってきているようです。
しかし、Amazonでみてみると8月9日時点でまだ100件を越える高額出品がなされており、減っている様子はありません。
また、ガンプラの再販なんてこれまでも何度もなされていますし、同じく転売されまくっているバンダイの新製品30MSシリーズは
DMMの予約情報を見ると9月以降毎月新製品1種に再販1種のペースで販売されることがわかりますが、値崩れしていません。
再販決まったから値崩れはあまりに短絡思考ではないですかね。
思うに、話はもっと単純でもともとマニア向けのニッチな商品であるHGナイチンゲールは生産数が少なめだった。
当然だがガンダム系のキットよりかなり少ないと考えるほうが普通。
なのに、ネット上ではマニアの声のほうが大きいのでこれは売れると思い込んだ転売屋が買い占めて店から消える。
でもそもそも、買いたい人はそんなにいないので思ったほど売れない。売れないから値段が下がっていく。
そこに再販の情報が来たので、再販決定で値崩れしたと思い込んで「困って返品しまくってるんじゃないか」と噂になった。
ということだと思いますね。

だから逆に心配になるのが、再販されるナイチンゲールの売れ行き。
もしかしたらあまり売れないかもしれない。リライジングガンダムという前例もあるしね。
今のところ在庫を抱えている転売屋が多いので再販にはあまり寄ってこないかもしれない
(まあ買い占めないと手元の在庫が売れる可能性がなくなるので死ぬ気で買いに来るという線もある)
で、これが売れ残ったりすると今度は小売店のダメージになってしまうし、バンダイはもっと再販に慎重にならざるを得ない。

返品祭りなどとうかれて「転売屋ざまあ」「バンダイえらい」などと言ってる場合ではないと思うよ。



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