えんじゃけん

THE BEE

今日は世田谷のシアタートラムで行われている
野田秀樹演出の「THE BEE」を見てきました。
原作は筒井康隆の「毟(むし)りあい」だそうです。
日本バージョンとロンドンバージョンで上演されたのですが、
私はロンドンバージョンで見てきました。
英語での台詞です。
でも、大丈夫。
舞台両端に縦長の電光掲示板が設置されていて、
それで日本語訳が流れていたので、内容はよくわかりました。
ただ、残念だったのは、外人さんの動き、表情が非常に面白いのに、
電光掲示板の文字に気をとられ、演技をじっくり見れなかったこと。

ある、まじめな普通のサラリーマンが段々悪の深みにはまっていく、
そんな舞台でした。
出演者は4人だけなんですけど、一人の人が何役もして、
4人とは思えない演出ですごかったです。
大の大人が6歳児を演じたり・・・それが、本当に6歳に
見えてしまうのだから驚きです。
あるときは、テレビアナウンサー、あるときは刑事、あるときは
シェフ・・・人ってこんなにも変われるものなんだなぁと
思うくらいすごかったです。

そんな中、ロンドンバージョンでの野田さんの役に注目です。
日本版では、その悪の深みにはまっていくサラリーマンを
演じた野田さんだったんですけど、このロンドンバージョンでは、
なんと、その悪の深みにはまる男(井戸さん)が人質にしてしまう、
井戸さんの奥さんと息子を人質にしている夫のストリッパーの妻を
演じるんですよね。(ややこい説明で申し訳ない)
もうそれがね、面白くって。

話的には、井戸が帰宅しようとしていると、マスコミに囲まれて、
心境を聞かれるんだけど、はじめはなんのことか分からずいて、
それで、マスコミから自分の妻と息子が殺人者に自宅で人質に
されているっていうことを知るんですよね。
それで、彼がとった行動っていうのが・・・
その殺人者の妻と息子を同じように人質にするんですよね。
それで殺人者を脅迫するんだけど、向こうは応じず、
だから、息子の指を一本ずつ切って相手に贈りつけるんだけど、
向こうも同じようにしてきて、息子が死んでしまったので、
今度は妻の指を切って・・・もちろん、これも同じように、
向こうも切って送りつけてくるんですけど、そのうちに
妻も死んでしまうんですよ。
それが毎日の淡々とした中で流れていって・・・
最後には、「私は勝ったんだ!」ってなことを井戸が叫んで、
「こんどは私の指をくれてやる」みたいなことを言って
指を切ろうとする前で幕。

どういう芝居なのかはよくわからないけど、
・・・誰でも犯罪者になりうるってことが言いたいのかな?
あと、思ったのは、最後に「この女が自分の妻なのか、
相手の妻なのか分からなくなった」ってな台詞があるんだけど、
もし、自分の妻だと思ったのに、それでも指を切れたということは・・・
つまりは、最初は誘拐された妻、息子を助けるために行った
立てこもりかと思いきや、そうではなかったということですよね。
普通のサラリーマン。
善良な市民。
そんな存在が果たして存在するだろうか?
この男は、自分が善良な市民であること、善良な父であること、
善良な夫であることに実は不満を抱いていたのではないだろうか?
ということが、悪の深みにはまっていく男を見ながら感じました。

一番怖いのは「善良な」と思われている人ではないだろうか?
「あの人はいい人だから大丈夫」
果たしてそうだろうか?
善良だからこそ無理をしている部分が大きいとは考えられないだろうか?
善良だからこそ、ねぎらいの言葉や大切にしてあげることが
必要なのではないだろうか?とそんなことを考えました。

だって、全く善良な人間なんて存在しないでしょうから。
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