Kent Shiraishi Photo Blog

北海道美瑛町の大自然や身近な写真を、
海外へ配信するArtistの呟き。

天国で酔っ払ってる相棒へ

2014年01月02日 | フォトエッセイ&フォトアート
天国で酔っ払ってる相棒へ


Blue Frozen Pond
Biei in Hokkaido,Japan.
「青く凍った池」
北海道美瑛町

・・・・・・・

天国で飲んだくれている相棒へ
あけましておめでとう!
本当は昨日、元旦の夜に書こうと思ったんだけど…
昨夜は死ぬ思いだった。

昨日僕は車で出かけていたんだけど、
美瑛町は夕方まで晴れていた。
ところがその後雪が深々と降って、降って、また降って、
何と国道以外の道が無くなってしまった!

それを知らずに夜10時過ぎに、
いつものように丘を走って帰ろうとした自分は…
さあ大変!途中で車が雪に埋まってしまった。
辺りに人家は無し。携帯もアンテナは一本だけ。
ここでJAFを呼んでも、誰も絶対に助けに来れない。僕はそう確信した。

ただ僕はいつも車に色々な装備を積んでいる。
真冬に外で仕事をするための上下のダウンコート、大きな長靴、手袋、
ウールの帽子、懐中電灯、スコップ、雪から脱出するためのヘルパー、
そして万が一エンジンを切って一晩過ごす時のための体温保持シート。
それに頂いた素晴らしい「おせち料理」まである。(笑)

時計を見た、23時5分。僕は決心した。
1時間必死で雪をかいて車の脱出を試みよう。
それでだめなら、エンジン切ってここで一晩寝よう。
エンジンかけて寝たら、多分マフラーが雪に埋まり、
一酸化炭素中毒で明日の朝は死んでいる。

君のところに行ってもいいけど、まだ君は喜ばないだろ?
それに多分明日の朝は晴れる。早朝日の出を撮影しよう。
どうせカメラはいつも持っている。(笑)
そう決心して、スコップで雪を掘って車を動かしたら、
何とか脱出できた!

しかしそれからが大変だ。
もはや前には進めない。もちろんUターンも出来ない。
ひたすらバックするのみ。その距離約2km。
しかも後ろでさえ全く見えないほどの降雪。
自分が走ったタイヤの跡に、
バックしながらタイヤを重ねてゆっくり走る。
何と1時間10分もバックで走行した。

それでも何とかかんとか国道に出て、
やっと助かったと思ったら…
道道の白金街道から右折して宿までの約1km。
今度はその道が無い!

しかもその道で、一台の車が埋もれていた。
近づいて見ると、わざわざ改造して車高を低くしている車。
北海道を嘗めてる20代の若者が運転していた。

彼は僕に言った。
「JAFを呼ぼうと思うんですが…電話番号分かりますか?」
僕は答えた。
「JAFが来るのは朝になる。それも除雪車が来た後だ。
しかも君のこの車があると、ラッセル車は除雪も出来ない。
正月から多くの人に迷惑をかける事になる。
僕がスコップで雪をどけるから、君はゆっくりバックして下さい。」

そう話して、行動を開始した。
しかし彼の車はまるでレース・カーの様に改造してあり、
バンパーも路面すれすれまで低い。
走るとショベルカーの様に雪を集める。
そしてその抵抗ですぐにタイヤがスリップして動けなくなる。
そのつど車を前に少しだし、僕が雪をどけ、またバックする。
ただその繰り返し。
しかし、車はレースカーの様に改造してても、
彼は雪道の運転が下手なため直ぐにわだちに突っ込む。

僕は呆れて言った。
「運転は僕がする。君は雪をどけて下さい。」
しかし…今時の若者はスコップさえまともに使えない!
雪をどけるのにものすごく時間がかかる。
時計を見ると、すでにこの作業を開始してから1時間が経っていた。
彼に訊いたら今までスコップを使った事が無いと言う。

大きな道路「白金街道」まであと約150m。
僕はここで決心した。
「君は僕の車をバックさせて下さい。僕をライトで照らしながら白金街道まで出て下さい。
僕は残り150mを除雪する。それから君の車を運転して街道まで出ます。」

彼に楽な仕事をさせる事にした。
しかしそれでも彼は何度もハンドル操作を誤り相当時間がかかっていた…。

僕はBOSEのワイヤレス・ヘッドフォンを耳につけ、
80年代のUpテンポのロックを聞きながら、150mの除雪を開始した。
どうせやるなら、少しでも楽しい気分でやりたい。

自分の事を「俺は元旦から何て運の悪い男なんだ!」そう思うか、
「長い人生でこんな事は初めてだ。元旦から貴重な経験だな!」
そう思えるか?
この考え方の差はとても大きい。

それから一時間、ひたすら除雪した。
途中空を見上げて考えたよ、
「今頃天国で酔っ払って、俺の事見てんだろうな~って。
何やってんだ元旦から…アホ!」
そう思ってんだろ!(笑)

はははーたしかにアホだな!
踊りながら除雪してるぞ!
ライティング出来るなら、俺はセルフポートレート撮ってるぞ!

そんなこんなで約一時間かけて150mの除雪をして、
彼の車を運転し、途中何度かさらに除雪しながら30分後、
やっと無事に脱出できた。

疲れて憔悴しきった彼に訊いた。
「どこから来たの?」
「東京から遊びに来ました。でもまさかこんな事になるとは…。」

僕は笑いながら言った
「最高の経験じゃないか!これが北海道の冬だよ。
君はたまたま来て偶然経験出来たんだ。金払っても出来ない経験。
君の人生にとって貴重な経験だよ。そう思った方がいい。」

彼もようやく笑った。
「そうですね、そう考えるようにします。ありがとうございました!」

北海道の冬、自然は厳しい。
だからこそ、そこで生きている人間には逞しさと優しさがある。
助け合いながら生きていく協調性もある。

相棒!
元旦からこんな生活している俺は、
今年どんな一年を迎えるのか?
何となく俺は感じる。激動の一年になりそうな気がするよ…。
でもとにかく精一杯頑張る。いつもの様に見ていてくれ。

昨夜は君の事を考えながら、疲れた体に酒を入れた。
そうしたら直ぐにその場で眠ってしまい、夢で君に会えたよ。
挨拶するの忘れてた。今年もよろしくたのむ!


ケント白石

追伸:

今朝起きたら全身が痛い。
今年一年分の運動を昨夜したからな。
今日と明日は寝正月にする、トホホホ(笑)。


北海道を世界に売り込む侍写真家・ケント白石
Professional & SAMURAI Photographer
Kent Shiraishi

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