今日は僕の東京時代の話から書きます。
東京には長く住んでいましたが、
ある事からしばらく写真を撮るのをやめていました。
しかし写真への興味が薄れた訳でなく、
むしろ強い関心があり、
他人の撮影にはよく同行しました。
当時伯父がグラフィックデザイナーだった事もあり、
商品の物撮りを見学する事が多々ありました。
もちろんフィルム時代であり、
ある有名会社の靴の広告撮影なんですが、
そこにその靴を作ったご本人も来られて大変でした。
何が大変かと言いますと写真の仕上がりに納得しないのです。
見えているそのまま、質感も再現すれと言いまして
何日間にもわたり撮り直しです。
カメラマンも泣いてましたほんと・・・
今思えばあれがある意味「Retina Photo」
まさに網膜に映る写真を撮らされていた現場でした。
時は過ぎ、美瑛町に来て カメラはデジタルです。
もしかしてあの物撮りの時のように
少しでも見た眼に近づけた風景写真が撮れないか?
そう自問自答しました。
物撮りとの違いはもちろん大きいです。
「靴」なら変化しませんし 自然と違い「光」もコントロール出来ますから…。
しかしそれにしても諦めたくありませんでした。
なぜならそれまでの風景写真はあまりに現実離れしていると
僕は考えていたからです。
もちろんこれはあくまでも僕の考えです。
東京時代の写真仲間も同じ考えでした。
そこから10年間の長い道のりがスタートしました。
特に一番問題だったのが
僕の場所でISDNから「光」に代わったのがなんと2011年6月です。
それまで自分達が研究していた事を世界に殆ど発表出来ませんでした。
そしてもう一つ問題だったのはお金です。
物撮りとの違いはそこにもありました。
ようするに クライアントがいないのに写真を撮り
時間と労力を相当に使い「Retina Photo」を創作しても 全く金にならない。
プロ写真家なら時間的にも金銭的にも出来ません。
しかも当時も今もそうですが
日本ではそんな創作に商品価値などなく
どの企業も買いませんし依頼もありませんでした。
当時から知人の風景写真家はとにかくたくさん撮り
ストックフォトを増やし
クライアントの欲しがりそうな作品を普段から撮りまくっていました。
僕に対して彼は
「それは趣味、君のやってる事は趣味の世界だよ・・・。」 そう言ってました。
当時はたしかにその通りでした・・・。
次の写真を2枚ご覧下さい
最初の一枚は撮って出し、
もう一枚は簡単に現像しました。
元画像
現像後
もちろん風景写真の場合
10人が同じ景色を見れば10人が別の色や感覚で見ます。
それは当然の事です。
しかし共通部分も相当にあります。
例えばこの写真の場合 ご覧の通り雪丘に逆光です。
世界最高のカメラでもフィルター等使わず
しかも太陽を壊さず写せば まず手前の雪面は暗くなります。
しかし本当は10人が見ようが100人が見ようがそうは見えないはずです。
程度の差こそあれ白い雪は白く見えているはずです。
比較して頂ければ一目瞭然です。
要は大切な事は
こういった他人の眼の差よりも カメラで撮れないだけである。
そういう問題も数多くあるのです。
僕達はそれに挑戦していこうと決めました。
ただその工程にはかなり数学的な要素もあり
測定やモニター等の高級機器も必要で 時間も相当にかかる。
・・・しかし金にならない・・・。
このジレンマがあったのです。
金にならない事を趣味と言われながら少しづつ続け
ついに10年が経ちました。
そして一昨年「光」が来て世界に発表できるようになり
劇的に状況は変わりました。
・・・・・・・・・・
ここから書く事は今の状況です。
世界には「画商」に匹敵する「写真商」というような ビジネスが存在します。
要は優れた世界中の写真を
オーナーや専門スタッフが自らの「審美眼」で見つけ出し
ダイレクト・メールがある日来るのです。
「貴方の才能は素晴らしい! 私は貴方の作品をぜひ我社のコレクションに加えたい・・・」
そう書かれたメールが来ました。
どういう事かと言いますと
僕の写真を彼らのお得意様に僕に代わって売ってくれるのです。
もちろん彼らは手数料を取ります。
簡単に言えばそういうビジネスです。
しかしこれは日本で行なわれているストックフォトの会社とは次元が違います。
まず世界中の写真家から選ばれなければいけません。
自分で売り込むのとは違います。
また写真の審査も相当に厳しいです。
しかし一番大きく違うのは
ビッグマネーが動くと言う事です。
日本と違い写真の価格が高い。
2ケタ、3ケタ簡単に違います。
僕は驚きました!
そして少しですが眼の前が明るく見えてきました。
「これなら仲間達もRetina Photoを趣味でなく、 ビジネスとしてやっていけるかもしれない・・・。」
だったら尚更
僕は頑張らないといけない。 仲間のためにも。
たまたまこの会社で初めて選ばれた日本人が僕でした。
昨年は多数売りました。
宿を半年休みスタッフに給料を払いながらも何とか出来ました。
そして今年に入り
大きな仕事が来ました。
画家と同じで
買い手のために写真を撮り
自分の作品を創作して渡すのです。
これは最初に制作費も含めた売価が決まります。
その金額は驚くほど高いのです。
さすが外国だ!
写真の扱いが日本とは全く違う。そう思いました。
向こうでは
商業写真家と芸術写真家、
言わばアーティストは全く別扱いなのです。
しかも「テーマ」が大切です。
買い手は僕の感性と作風が気に入って買う訳ですから
唯一無二、ユニークな作品でなければならず、
まさに「Retina Photo」は最高でした。
「これは素晴らしい!!!」と評価され、
半年後に飾る予定である新築の巨大な別荘内部の写真も送られてきました。
僕の後に続く日本人のためにも
この作品はもちろん、
これから受注する仕事も全て
買い手を満足させるよう全力投球が必要です。
昨年顧客の評判が良かったので
会社は僕の作品を今どんどん宣伝してくれています。
しかしもし一度でも買い手が不満に思えば
会社の僕への評価は下がり注文は来なくなるでしょう。
そういう意味では一度も負ける事の許されない厳しい世界です。
僕は勝ち続けなければいけない。
・・・・・・・・・・
世界は確かに広い。そう思います。
しかし言い換えれば狭いのです。
ネットのない時代では考えられなかったビジネスが生まれ
また参加したくても出来なかった我々日本人も挑戦できるのです。
同じ会社に登録している他国の写真家が僕にメールを寄こしました。
「日本人はカメラ戦争で世界に勝った、お前も俺と戦うのか?」
こういう事を言ってくるのが向こうの写真家。
まあもっとも影でこそこそ悪口言う日本人の半端なプロより遥かにましです。
「もちろん、僕は勝つ。ただし君と戦うことはない。君と僕とはクラスが違う!」
そう書いてやりました・・・笑
ここまで長々とお読み頂きありがとうございました。
読んで頂きましてお分かり頂けたと思いますが、
僕は今後世界の連中と戦い 日本人の評価を上げ
これからも続いて日本人が選ばれるように自ら精進致します。
今後は時間の関係で自分の宿の撮影ツァーや結婚式の撮影等も
多くは他の写真家にお願いする事になると思います。
とにかく今年も世界で戦う
そして勝つように頑張ります。
ケント白石
「Kent Shiraishi Photography」
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