増田カイロプラクティック【読書三昧】

増田カイロプラクティックセンターのスタッフ全員による読書三昧。
ダントツで院長増田裕DCの読書量が多いです…。

ステロイド依存

2008-04-05 14:00:39 | アレルギー参考図書
ステロイド依存―ステロイドを止めたいアトピー性皮膚炎患者のために
深谷 元継
柘植書房新社

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(増田裕記)
本書は当時、国立名古屋病院皮膚科の現役医師が「ステロイドを止めたいアトピー性皮膚炎患者のために」書かれたものである。ステロイドからの離脱を考えるときに大いに参考になる。

「パート1」は「22のケースに見る傾向と対策」である。
ケースはどれもごく普通の湿疹を抱えた患者たちである。それがステロイド外用剤の使用で悪化した。ステロイド依存からの脱却はいろんなケースがあり、とてもマニュアル化されない。

本書は、いろんなケースにぶつかりながら、ステロイドからの離脱を進めた医師の苦闘の物語である。「やってみなければ分からない」という臨床の世界がある。そこから、少しずつ教訓が導かれている。臨床の知恵である。本書の後にはこのうち21ケースの脱ステロイドの経過についての写真が載っている。

たとえば、「職場対策」。ここでは、「上司から見たとき、一番困るのは、ちょっと良くなって出てきたと思ったら、予告もなくまた数日休む、といった不安定な状態がだらだら続くことらしい。それなら三ヵ月とか六ヵ月とか、まとまった休職の形を取ってくれた方が上司としては計画がたてやすい。」(上司の態度は)「決して悪意から発しているのではない(と信じて)粘り強く冷静に交渉する必要がある。」と細かなアドバイスをする。

まず、言葉の定義から、「ステロイド皮膚症」とは「ステロイド剤を中止したときにリバウンドに見舞われるような状態」という。非常に参考になるのは、「離脱の進め方―離脱を進めるに当たっての選択肢」である。ここでは次のようにまとめられている。

離脱の選択肢
1、 当面は現在のステロイド外用を続ける(しばらく保留にして問題を先送りにする
2、 徐々に離脱してみる(弱いものにする、部分的に止めてみる、量や回数を減らしてみる)
3、 一気に断ってみる
離脱しかけたが予想外の強いリバウンドに見舞われたときの選択肢
4、 そのまま耐える
5、 ステロイドの全身投与でいったん抑える
離脱の結果はやってみなければ分からないので、「そのタイミングや方法は患者自身が自
己決定していくしかないと思う」と述べている。医師はそのアドバイザーであるという立場である。

著者はさらに、「離脱の進め方3-強いリバウンドに見舞われた場合」において、「どれが最善とも判然としない複数の選択肢の中から、たった一つの道を選び出す権利は患者にある。なぜなら、良きにつけ悪しきにつけ、その結果を被るのは患者自身なのだから。医者は患者が自ら考えを選ぶにあったての情報提供者を越えてはならない。」
 「そして、患者が道を選んだ以上は、それに付き合い、相談に応じ、見守るのが医師の役割だと思う。『私の治療方針に従わない以上診ることはできない』と叱りつけるステロイド一辺倒の皮膚科医を私は憎む。なぜなら、私のしていることは、彼ら彼女らの尻拭い以外の何物でもないから。」
 
次に、「リバウンドの一般的経過2-古典的アトピー性皮膚炎への回帰」では、リバウンドを克服して、脱ステロイドを達成したら、あとは悪化要因と回避すれば、自然治癒に向かう、と述べられている。ここで、NAETの積極的役割があるように思える。

「民間療法や漢方薬」の項目では、「どうも、このアトピーというのは、いわゆる『薬』の類で治るものではなさそうだ、ということである。湿疹ができるということは、皮膚が過敏なのである。敏感な人が何か変な物を胃袋に入れたり皮膚に塗ったりすれば、良い結果よりも悪い結果が起きる可能性が高い。」と述べている。NAETの臨床と理論からすれば、これは納得できるところである。

 また、「アトピービジネスという言葉がある。一般に非医師が行う民間療法を指すことが多いようだが、良く考えてみると最大のアトピービジネスは皮膚科である。」と述べているのは至言である。

 このほか、「リバンド時に気をつけるべき感染症」、「眼の合併症について」、[ステロイド離脱のあと]、「悪化要因」、「血液検査の読み方」、「痒みについて」など、いろいろ参考になる点が多い。

 「パート2」は「患者・家族たちの声」、「パート3」は「皮膚科学会での現状について」、それに「本書に寄せて」では3人が寄稿している。
 本書で「患者として皮膚科医として」という題で寄稿している安達智江医師(千葉県在住)は現在、NAETの現役認定者として、患者と自分の治療に当たっている。
 
逆にステロイドの使用を擁護する権威筋の医師の立場を知るには、次の本が最適である。「アトピービジネス」(文藝春秋)、「こうして治すアトピー」(岩波アクティブ新書)、いずれも竹原和彦著である。
 
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