歌詞解釈の最終回は「楓」です。
自分にとって最も好きな曲であり、最も切ない曲です。
精神的に疲れているときにわざとこの曲を聞くことがあります。
自分も一緒に小さな声で歌うと自然に涙が流れ出てきて、
そのカタルシスによって心がリフレッシュされるのです。
これほどまでに人を愛することができるとは、なんとすばらしいことでしょうか。
しかし、同時に君への思いの強さは凄みすら感じられ、
その業(ごう)の深さを思うと、戦慄で背筋が寒くなることもあります。
もう君以外の人を愛することはできない。
これからの僕の人生は、君に再び会うまでの空しい旅に過ぎないのだと。
この歌を聞き始めたころは、よくある別れをテーマにしたものだと思っていました。
それが、何度も聞いていくうちに「君の声を 抱いて歩いていく」というところに
引っかかるものを感じるようになってきたのです。
そして、これは最愛の人を亡くしてしまった深い悲しみを歌っているのではないだろうかと
思うようになりました。
君がいないこの世界は、もはやほんとうの僕の生きる世界ではない。
しかし、つらくても悲しくても、君と再会することだけのために僕はこれから生きていこう。
この僕の強い決意を歌っているのではないでしょうか。
忘れはしないよ 時が流れても
君と交わした取るに足らないような会話や
つらいこと 嫌なことがあっても 君が笑えばもう
ちっぽけなことだなって気持ちが楽になったことを
未来が見える望遠鏡をふたりでかわるがわるのぞいたけれど
君の目にはどんな姿が映っていたのだろう
僕の見た夢は 一人きりじゃ叶えられないものもあったよ
さよなら 君の声を心に刻んで生きていく
ああ 僕はこの決意を持ち続けることができるだろうか
今では懐かしいあの言葉 君と出会って
初めて僕は手に入れることができた
あの日 窓の外には雨雲が立ちこめていた
まだまだ未熟者の僕だけど
君と一緒に楽しく暮らしていけるという
人並みの幸せを信じていたのに
生きていけば 傷ついたり 誰かを傷つけることもあるだろう
ああ それでも僕はこの決意のまま生きていく
長い年月が過ぎて 僕も君の待つあの世へ旅立つ
そこで僕は君の名前を呼ぶんだ
聴こえる?
そして ずっと心にしまっておいたあの声が遠くで響いて
ふたりの名前がこだまし始める
聴こえるよ