「スメラミシング」(小川哲)
を読んだ。
「ゲームの王様」「地図と拳」に
続いて著者の本は三冊目。今回の
は短編集だ。
6つの短い物語はそれぞれ別もの。
しかし、何か共通する感じがある。
この感じは何だろう?
とてもスケールが大きくて深遠で
抽象的な世界と、まったく卑近で
具体的な世界とが同時に表される
奇妙さ、とでも言うのだろうか。
宇宙とか、歴史とか、宗教とか、
哲学や数学とか。例えば、偉大な
学者がそんな思考を展開する一方
で、猥雑な日常の些事に悩まされ
たりするような。
考えてみれば、この世界はまさに
その通りなのだ。普段気付かない
だけで、私達は宇宙の法則に従っ
た天体に乗っかって生活してる。
2つの異なる世界が併存するのを
見せられて、奇妙な感じにさせら
れて、そのまま放置されると落ち
着かない。"文学的"かもしれない
が、小説としてはオチが欲しい。
そんな自分にとって、6つの短編
の中で一番良かったのは、最後の
「ちょっとした奇跡」だった。