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聴刻堂日乗

怒らない美徳

老父がよくトイレを汚す。

立ってするから上手にできへんのや。
座って用を足すようにしぃな。

何度も言うのだが改善されない。

昨日トイレを掃除してマットを換えた。
今日行ってみると老母が困惑している。
老父を見るとズボンの前を濡らしてる。

ズボンを脱いでもらって洗濯機に入れる。
トイレを拭いてきれいにする。
老父に、座って用を足すよう言って聞かせる。

老母はそうしたことを息子にさせるのが
申し訳ないようで、老父に苦言を繰り返す。

暫くして、老父が玄関から出て行った。
居間の窓から、庭に立つ老父が見える。

おいおい、便所を汚さんように言われて、
庭で立ちションする親父がどこにおるねん。
怒りを通り越して笑ろてしもた。

老母も気がついたらしい。
ガラガラと居間の窓を開けた。
そして静かに言うのだった。
「本当に困りますよ。そんなことをしては。」

ほぉ、老母は怒らへんのや・・・。そう言えば、
子供の頃からオカンに怒られた記憶は殆んど
あらへん。どんな場面でも怒らないのは
この人の美徳なんやなぁ。改めて認識したわ。

普段ちょっとしたことでカリカリしてる自分は
何とみっともないこっちゃのう。

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