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聴刻堂日乗

会話の鍵

老父は物覚えが悪くなりました。

「今日どうしてたの?」と訊いても、
「さあ、どうしてたかなぁ。」

話をしたくないのかとも思いました。
しかし、本当に覚えてないようです。

これでは、世間話ができません。
天気予報の話も、野球の話も通じません。

「ところでオヤジ、どこで生まれたんだっけ?」
会話に窮して、何気なく発した質問でした。

思いがけず、老父が饒舌に話しだしたのです。
堰を切ったように、とはこのことかと思うくらい。

老父と会話するための鍵が見つかった瞬間でした。

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