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政府、国連委への不拠出伝達 皇室典範見直し勧告に抗議
2025年1月29日 21:48
植木安弘さん他1名の投稿

記者会見する北村外務報道官(29日、外務省)
政府は29日、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)への日本の任意拠出金の使途から国連女性差別撤廃委員会を除外するよう伝達したと明かした。皇室典範を巡る記述の削除要請に応じなかったことへの抗議の意を改めて示した。
拠出金を特定の目的に使わないよう求めるのは異例の措置だ。同委員会の委員が日本の男女共同参画などへの理解増進のために実施してきた来日も、2024年度は取りやめると決めた。外務省の北村俊博外務報道官が29日の記者会見で、27日に同委員会に伝えたと説明した。
同委員会は24年10月に公表した日本の女性政策についての最終見解で、皇室典範は「改正により男女の平等な皇位継承を保障すべきだ」と勧告した。皇室典範は同委員会の審査対象ではないとする日本政府の立場に触れながら、継承を男系男子に限るのは女性差別撤廃条約に反すると指摘した。
日本政府は委員会に強く抗議し、記述の削除を要請してきた。皇位につく資格は基本的人権に含まれず、皇位継承資格が男系男子に限定されていることは同条約第1条の「女子に対する差別」には該当しないとの見解だ。
OHCHRは同委員会の事務を担う。日本は近年OHCHRの北朝鮮やカンボジアの人権状況の調査、ハンセン病の差別撤廃活動に使用する目的で年間2000万〜3000万円ほどを任意で拠出しているが、確認できる05年以降で女性差別撤廃委員会に支出した記録は残っていない。
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植木安弘上智大学特任教授
ひとこと解説
女性天皇への国民の支持率が8割を超える中で、皇室典範の改正の議論も、単に皇族数の確保だけでなく女性天皇問題も同時に扱い、国民の真を問う時期ではないか。国連の女性差別撤廃委員会の見解はあくまで勧告であり、その見解が日本政府の見解と異なるという理由で国連人権高等弁務官事務所への任意の拠出金を制限するといった感情的な政策は、日本の国連外交を弱めるものではないかとの懸念が高まります。もう少し冷静な対応が望まれます。
2025年1月29日 23:50
原武史政治学者
ひとこと解説
皇位継承資格が男系男子に限定されていることは女性差別撤廃条約第1条の「女性に対する差別」には該当しないと日本政府が言い張るだけでは、国際的な理解が得られるとは思えません。江戸時代までは女性の天皇もいたのに、男系男子に限定するようになったのは明治時代に旧皇室典範が定められてからでした。その背景には、軍事国家のシンボルとして男性的な天皇が求められたという時代の要請がありました。陸海軍が解体された戦後になってもなぜ男系男子でなければならないのか。女性天皇に賛成の声が多数の日本国民に対してすらその理由をきちんと説明できないとすれば、ましてや国際的な理解を得ることは一層難しいと言わざるを得ません。
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