


【このDVDの入手方法】
公害・地球環境問題懇談会(JNEP)にご注文ください。
160-0072 新宿区新宿2-1-3
サニーシティ新宿御苑10F 公害センター
電話:0-3352-4938、FAX:03-3352-9476、e-mail:kougai@ia5.itkeeper.ne.jp
オフィスに常駐スタッフが不在のため、FAXの利用をお勧めします。DVDが届く際に、頒価1000円と送料を含む振込用紙が同封されてきます。
【内容のあらまし】
プロローグ
2001年宇宙の旅のテーマ音楽で始まり、地球に扮した男性ナレーターが、長い年月をかけて作られた生物の住める環境を、人類がほんの一瞬で壊そうとしているではないかと詰ります。続いて昨夏の広島の土石流など、異常気象による被害が激増している映像が流れた後、増田善信さん(元気象研究所予報研究部第1研究室長)が、地球温暖化によってこのような極端現象が増えていると語ります。増田さんは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)がこのような気象変化をEXTREME EVENTSと呼んでいることから、極端現象という呼び方をしています。また、明日香壽川さん(東北大学東北アジア研究センター教授)は、昨夏のデング熱患者発生は象徴的に温暖化を示し、大雨、強い台風の増加も統計的に明らかだと語ります。増田さんは、極端現象には竜巻、集中豪雨、台風や低気圧の非常な発達など狭い範囲の現象と、寒波や熱波などが何日も続くものがあると提唱しています【末尾に参考情報】。
温暖化の原因
2013年のIPCC報告書が示されます。
「It is extremely likely that human influence has been the dominant cause of the observed warming since the mid-20th century. 人間による影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的原因であった可能性が極めて高い」
増田さんと明日香さんの説明が続きます。根拠とされたのは1910~2010年にかけて、気候モデルを使った世界18の地域の平均気温変化の再現実験で、温室効果ガスなしでは1960年以降の急速な温暖化が再現できなかったことでした。IPCCによれば、1880年から2012年の間に地球の平均気温が0.85℃,海面が16 cm上昇しており、このまま対策を取らないと最大で82 cm上昇します。1m上昇すると日本の砂浜の9割くらいが無くなり、東京都の半分くらいが水没するでしょう。今から対策を取らないと、平均気温が最大で4.8℃上昇し、最悪のシナリオでは北極海の氷がなくなり、海水は溶け込む二酸化炭素の増加でpH が8.15から7.75に下がるとサンゴの白化し、多数の魚介類が死滅します。気温が6~7℃上がる所ではより大きな影響が出て、何十万、何百万人の環境難民が出る恐れがあります。
温度上昇の限界は2℃
国際社会が打ち出した産業革命の時代からの気温上昇を2℃以内に抑える目標を人形たちが紹介します。識者たちはこれが国際社会全体としての気候変動枠組条約で決まった目標で、2℃を超えると旱魃、洪水、飢餓、伝染病、海面上昇などによる被害が甚大化し、元に戻せない可能性が高くなるのです。更に明日香さんは、今のように放出し続けると、あと30年しかもたないと警告します。

温暖化懐疑論
温暖化の原因は二酸化炭素ではないと唱える人達がいます。ハワイマウナロア観測所上空の大気中二酸化炭素濃度の推移に見られる黒のギザギザ線は、植生の豊富な北半球への日照の季節変化に伴って、森林の二酸化炭素吸収が増減するからです。温暖化懐疑論は、二酸化炭素の長期的上昇を除いてグラフを描くと、あたかも二酸化炭素濃度上昇の前に気温が上昇するよう見えたりすることなどを論拠としていますが、それによっては二酸化炭素濃度の長期的上昇は勿論、1960年以降の急速な気温上昇を説明できません。増田さんと明日香さんは、温暖化懐疑論は、科学がまだ結論を出せていないという方向に話を持って行きたい、エネルギー産業のシンクタンクやお抱え研究者が提唱しているものにすぎず、科学的に決着がついていることを国民や政治が受け止める必要があると断じています。なお、Global Greenhouse Gas Reference Networkにアクセスすると、直近のマウナロア観測所上空の二酸化炭素濃度を見ることができます。
原発問題と温暖化対策
2011年3月11日の福島第一原発事故による被害の映像を交えながら、伊藤達也さん(原発問題住民運動全国連絡センター代表、「元の生活をかえせ原発事故被害いわき市民訴訟」原告団長)が被害地域の広範さ、被害額の巨大さ、汚染地域が元の環境に戻るまでに要する途方もない時間などをあげて、福島原発の事故を歴史上最大で最悪の公害と断じます。更に伊東さんは、原発を許した福島県は、亡くなった方々の墓標を作るだけでは不十分で、日本で最初に原発を無くし、2040年までに県全体の電力を自然再生エネルギーで賄う自然再生エネルギー利用最新県を目指すことこそ肝要と論じます。

温暖化対策に消極的な日本政府
人形たちが、平均気温上昇を2度以下に抑えるため、国際社会が掲げた2050年までに温室効果ガス排出を2010年比で40~70%に削減し、21世紀末にはゼロにする目標を紹介します(下図参照)。

二酸化炭素を大量に排出する石炭火力発電所の増設を決めた日本政府の方針も批判されます(註: 2014年10月23日の毎日新聞記事によると、17基の石炭火力発電所増設が計画されており、それにより二酸化炭素排出が最大で年5000万トン増えるといわれている)。明日香さんは、「アメリカ政府も世界銀行も公的資金で石炭火力発電所建設への融資を止めており、石炭をどう減らすかという世界の流れに日本は逆行しており、石炭火力発電所の輸出も原発輸出と同様に日本政府が認めてしまっていると批判します。
COP20 第20回気候変動枠組条約締約国会議
人形たちが2014年12月、ペルーのリマで開かれたCOP20で、中国とアメリカが表明した数値目標を紹介します。世界一の二酸化炭素排出国で、大気汚染が深刻な中国は、2030年をピークに排出を減らすという数値目標を初めて提示しました。アメリカも2025年の排出目標を2005年比で26から28%削減という新たな目標を表明しました。一歩前進ですが、まだ不十分です。
未来につなぐために

増田さんは省エネと火力発電所、特に石炭火力発電所の削減と、大口排出元の削減の義務づけを提言します。そのためには自然エネルギーへの切り替えが先決で、上図のように再生可能エネルギーが豊かな日本では、太陽光、小型水力、風力など小さいものをたくさん作るやり方でいくらでもできるし、中国やアメリカなど大口排出国も開発の余地があり、エネルギーシステムの転換でIPCCの目標は達成可能と語ります。取りかかるのが早いほどコストがかからず、コストの問題より、孫子が住めないような地球環境を譲り渡してよいのかが重要だと結びます。
明日香さんは、特に日本で重要なことは、温暖化問題の本質は正義であることを認識、理解することだと主張します。誰がどういう被害を受け、加害者は誰なのか、社会をよくするにはどうすればよいのか、問題をそのように正義の問題、不正義の問題、不公正の問題と考えて温暖化対策を進める必要があると結びます。画面には昨年9月21日にニューヨークで約40万人が参加した、温暖化対策への取り組みを訴える史上最大規模のデモ(People’s Climate March)の映像が流れます。

人形のチビが、カナダ人作家でジャーナリスト、女性活動家のNaomi Kleinさんが著書 ”This Changes Everything: Capitalism vs. The Climate" (これは全てを変える: 資本主義 vs 気候』邦訳未刊 )”の中で語った言葉を紹介します。

エピローグ
地球に扮した男性ナレーターが語ります。
「地球の大気は地上のあらゆる生命体の生命維持装置なのだ。何としても地球の平均気温の上昇を2度以下に抑えなければならない。地球温暖化防止に向けた本格的な取り組みには多くの困難やリスクを伴うだろう。しかし人類は自らの生存のためにそれを乗り越えねばならないのだ。諸君、今人類は戦争などやっている時ではないのだよ。NO WAR! NO NUKES! NO WARMING! この美しい地球を守るために、人類の生存のために、子供たちの未来に希望をつなげるために、早く足を踏み出してくれ!

考 察
このDVDは、近年増加している極端な気象の変化は大気中の二酸化炭素などの温室効果ガス濃度の増加によってもたらされたもので、早く対策を講じるようにと強く訴えかけている。産業革命以前はおよそ280 ppmと推定される二酸化炭素濃度が、現在では400 ppmを超えており、国際社会が目指す削減目標を達成するには、化石燃料の使用を大幅に削減し、増田さんの言うように省エネと再生可能エネルギーの開発を最優先で進めねばならない。これには明日香さんが言うように、従来のエネルギーシステムの抜本的改革を避けて通るわけには行かない。それは既得権益を持つ人々にとって歓迎できることではないに違いないが、次の世代に少しでも好ましい状態で地球環境を引き継ぐのに避けて通れないのだ。
【参考資料】
増田さんは、極端現象には竜巻、集中豪雨、スーパー台風など台風や低気圧の非常な発達など狭い範囲の激しい気象現象と、寒波や熱波など同じような天候が何日も続くものがあると著書で提唱しています(地球温暖化を理解するための 異常気象学入門、2010年日刊工業新聞社刊)。昨年のように短期間に何個もの台風がほぼ同じコースを取って襲来するのは後者に類するとみなしています。
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