安倍晋三前首相が「70年ぶりの抜本改正」と強調した新漁業法が12月1日に施行された。
〝海の幸を未来に残す〟と仲間と挑んだ、2013年からの7年間の道のり。
ようやく、日本の新しい一歩が始まった。
法令施行の12月1日の日経新聞の記事では、我々の主張を正しく伝えている。
振り返れば、戦後70年も変わらない化けもん相手に挑んでいたと、今になって気が付く。
政治学者が水産学者を追い越したり、日本一博士が多い権威ある経済研究所が魚が減るシミュレーションを作成して公表したり、
国レベルがエントリーする水産資源の持続可能な社会を実現する活動評価でファイナリスト受賞したり、
グローバルの世論を巻き込んで挑んだり、振り返れば見事なくらい刺激的なドラマだった。
これからの世の中を変える者は、マネタリーベースからボランタリーベースだと思う。
本来ならば、銀座のいつものお店に集まり7年間の振り返りの会合となるところ、、、、
魚がいなくなれば美味しいお酒が飲めないんだから、、、とりあえず静かに一人でカンパーイ。
・・・・以下、日経新聞2020年12月1日・・・・
安倍晋三前首相が「70年ぶりの抜本改正」と強調した新漁業法が12月1日に施行される。過剰漁獲に海洋環境の変化が加わり、昨年の漁業生産は養殖を含め416万トンと過去最低に落ち込んだ。ピークだった1984年の3分の1にすぎない。
政府はノルウェーなどの漁業先進国が取り組む厳格な管理を浸透させ、資源と漁業生産の回復をめざす。
理想的な漁業は科学的な調査で正確な資源量をつかみ、それを減らすことなく、持続的に最大利用していくことだ。資源管理が進んだ国では漁業者(漁船)ごとに漁獲枠を決める。アイスランド、ニュージーランドなどでは枠の過不足を取引することもできる。
しかし、海外の先進国と見比べると日本の資源管理は甘いと言わざるを得ない。
資源調査の対象は50魚種のみ。漁業者ごとの枠も決められていないので、漁期が始まると「早くとったもの勝ち」の競争になる。これでは乱獲に陥りやすいうえ、市場価値が高くなる時期に合わせて計画的にとる経営戦略も立てられない。一部の漁業を除き、漁獲データの報告も義務付けられていない。
新漁業法はこうした現状を改め、国際標準の資源管理に近づけることが狙いだ。科学的な資源調査の対象を3年後の2023年度には200種と4倍に増やす。現在はマイワシなど8魚種しかない法的な漁獲可能量(TAC)制度の対象も、15種ほど増やし、全漁獲量の8割をカバーする方針だ。
国際的な資源管理の強化で18年にTAC制度に加わったクロマグロは地域ごとの漁獲枠の配分などをめぐって漁業者の不満が爆発した。ホッケなど今後対象になる見通しの魚種についても反対論は根強い。漁獲報告の義務化も「現場の負担が大きい」との声が漁業者向けの説明会で相次いだ。
それでも現状のままではじり貧が避けられない。漁業者の所得は増えず、新しい漁船もつくれない。農林水産省が13~15年のデータでまとめた比較では、日本の漁船1隻あたりの漁獲量はノルウェーの20分の1、漁業者1人あたりの生産量も8分の1ほどだ。
「現実に水産資源が悪くなっているのだから、すぐに取り組まなければならない」。国内外の資源管理に長く携わってきた水産庁の神谷崇次長は改革を貫く構えだ。国内の資源管理が甘ければ、中国などにサンマなどの資源管理を求める際にも説得力を欠く。
水産庁は漁獲情報をできるだけ早く収集するため、予算をとって電子化も進める。それとて、ノルウェーでは漁獲した漁船上で内外の顧客と電子商取引も始まることを考えれば、日本の改革が周回遅れであることが分かる。
新漁業法は地域の漁業協同組合などに優先して与えられる漁業権の制度を見直し、漁協が適切に管理していない漁場や、利用されていない漁場には企業などが新規参入できるようにした。
既得権益の多い漁業権制度に初めてメスを入れた改革は評価できる。ただ、逆に言えば70年も旧態依然とした漁業が放置されたツケは大きい。規模拡大の障害となり、漁業権行使料の徴収などが不透明な制度はなくし、公平な許可制度などに変えるのが理想だ。
漁業の先には国内生産額で2倍以上の規模を持つ水産加工業もある。加工業も衰退する国内漁業の影響を受けており、イカなどの輸入を増やそうにも古い割当制度が障害になっている。一般の消費者にとってもサンマなどの水産物や加工品の値段が上がり、気軽に買えない存在になってしまった。
漁業に先駆けて改革に取り組んだ農業は若い経営者や企業の参入が増え、大規模な生産者が増えてきた。新しい姿が見えつつある。漁業も規制緩和とともに新規参入を積極的に受け入れ、企業の技術力や経営ノウハウを利用しようとする意識改革が必要になる。
(編集委員 志田富雄)