夏までは監修案件や協力も含め舞台関係の仕事が重なり集中するうち過ぎた。なかでも新作ソロ公演は特にエネルギーを使ったが、これによる思索などについては未だ反芻中であり、少し先になるが何度かにわたってこのブログに掲載したい。
後半期には過去作の記録を片っ端から見直す機会があり、映像や写真やノート類など調べながら確かめたことも多く、このところ、ダンスあるいは身体をめぐる新たな作業にも少し近づき始めている実感がある。作品の他にも記録を見直していて、近年ご縁をいただいたもので、23年だったか、現代美術の遠藤麻衣さんが担当されている美学校の授業でゲスト講師をさせていただいたのが非常に面白い経験となって色々ノートしていたのを読み返した。主に身体と受容についての作業だが、これはもう少し温めて、新年の春から新たな会場で展開しようと準備している『踊り入門』のリニューアルクラス(西荻・4/1稽古開き)に反映していきたい。
見聞きしたものは沢山ではなかったが、秋にNHKで放送された写真家・石川直樹さんの記録には相当な感動を覚えた。カメラを他者に向けるのではなく自らの「行動・生きざま」に向け続けていられる。生死の境を旅するような登山を続けながら生み出される写真の一枚から僕は痛いような輝きを感じる。まさに、美しい。いかにしてそれらが撮影されたかが生々しく報じられた。畏敬の念をあらためて抱いた。
最近ではクリストファー・ノーランの「インターステラー」の10年ぶりの再上映が素晴らしかった。既視感がないことに驚愕。今回の最新技術による上映は見えるものも聴こえるものもまるで別で、もはや哲学的ライブだった。絶望と孤独を通奏低音にした、直感と探求と挑戦についての宇宙演劇。巨大な画面と特別な音響の底に、物理学を通じて「愛という何か」を読み解いてゆこうとする思想が脈を打っていることを体感。修羅と希望についての、つまり、愛と未知についての意思がいま映写されている、そう感じた。終映時に満場の拍手が起き、余韻が長く続いた。
書きつつなぜか、メカスの「LOST LOST LOST 」の体験がよぎる。上記いづれも魂の旅に関わる経験だったからか。
もうすぐ新たな年が来る。
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体の調整から創作まで、色々な稽古を楽しめます。
いづれも自然体で取り組める自由度の高い内容です。
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