前回の続きです。贈り物として相応しくないものはまだまだあります。「薬」をプレゼントしてはいけない。「ハンカチ」もダメ、「ネクタイ」もダメ、「靴」もダメ etc. 知っておきたい「転ばぬ先の杖」です。
ダメな理由をひとつずつ解説していきましょう。
「ハンカチ」は涙を誘うと言われ、「不幸を暗示するプレゼントだから」という理由です。「ネクタイ」は女性が男性を拘束するという意味があるそうです。「あなたは私のいいなり・・・」というように、まるで飼い犬に首輪を付けるような感覚なのでしょうか?
「靴」は「これを履いてどこか遠くへ(?)行ってください」という「私から遠ざけたい」という意味があるそうです。また中国語の「靴」(xie)は、「邪」(xie)と同じ音です。これは「あやしい」「おかしい」という意味・・・。他にもまだまだNGアイテムはありそうです。
■地域により品物やその理由はさまざま
前回と今回のコラムで今回贈ってはいけない品物の中から代表的な物を紹介してきましたが・・・。しかし、ここで注意が必要です。「中国のすべての地域で同じ」とは限りません。地域によっていろいろな違いがあり、その理由や背景もさまざまです。
そのすべてを理解することが大切なのではなく、ビジネスシーンに合わせてひとつひとつを自分自身で確認しながら、自分がどう異文化と向かい合っていくべきかを考えるこ、これが異文化理解を深めるためには大切なことではないかと思います。
■中国人や台湾人観光客がドラックストアで「薬」を箱買いする様子をしばしば眼にするが・・・
「薬」は送るということは「病気を招く」という意味で嫌われます。「薬」もプレゼントしてはいけない品物です。しかし、中国人や台湾人観光客がドラックストアで「薬」を箱買いする様子をしばしば眼にします。話を聞くと、「これは○○○に頼まれた・・・」、「これは○○○さんへのお土産・・・」、「これは実家のおばあちゃんへプレゼント・・・」など、完全にお土産アイテムです。
日本の「薬」は、「安心だから、安全だから」ということで人気があります。「キャベジン」や「正露丸」、「龍角散」や「太田胃酸」、風邪薬の「ルル」や「ベンザ」などなど、まとめ買いしていく人も少なくありません。「吉村さん、今度台湾に来るとき、風邪薬を6つ、胃薬を4つ買って来て・・・」といずれも銘柄指定で買い物を頼まれ、スーツケースがいっぱいになるほど薬や化粧品を持って行ったこともありました。(私は「薬の売人」ではありません・・・)(x_x)>
中国や台湾は「漢方」(中医)の国ですから、体に優しいいい薬はたくさんあるのではないかと思うのですが、わざわざ薬を日本で買って、お土産にしたり、自分で使ったりします。やはり、日本製品に対する「安心・安全」信仰は根強いものがあるのでしょうか。誰もが知っている定番のブランドはとても人気があります。
ここで「裏技」をひとつお教えしましょう。「薬」をプレゼントするときは、プレゼントした相手からコインを一枚もらうとよいそうです。つまり、こうすることで「薬を送った」のではなく、「薬を売った」ことにすのです。
■病気の見舞いに「梨」を持って行くのはダメ・・・
病気で入院している友人に果物を持って行ったりします。果物は病気のお見舞いにごく普通の贈り物だと思うのですが・・・。中国では「梨」は絶対にダメだそうです。
日本では病気見舞いに「鉢植え」はダメだと言います。「そこに長く根付く・・・」ことを嫌うからで、「生花」が一般的です。花瓶に花を活けるわけです。
「梨」は中国語で同じ発音の漢字に「離」(li)があり、「離れ離れになる」を意味し、「別れ」を暗示させる言葉です。病人に対して、「もう二度と会えませんね・・・」とお別れを告げる意味です。確かにもらったほうはどんなにおいしい「梨」でも、「これでお別れですね・・・」という送り物はあまりいい気分はしないですね・・・。
To be continued
このコラムの11月18日(2013年)掲載の記事で「絶対に贈ってはいけない品物」という内容を執筆しました。けっこう反響が大きく、たくさんの方からお問い合わせをいただいたので、その続編を3回シリーズで書きます。
11月18日の「絶対に贈ってはいけない品物」はこちらからご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/crosscosmos/e/5fe2f952a0ed632a27ab5749cd66fb09
「時計」は贈ってはいけない、「傘」もダメ、「扇子」もダメ、前回のコラムではこんなポイントを書きました。(詳しくは11月18日のコラムをご覧ください)コラムをご覧いただいた読者の方からこんなメッセージをいただきました。「傘が駄目だと書かれていますが、逆の場合が有るのをご存知でしょうか?」
いただいたメッセージによると、「客家人の嫁入り道具に『紙傘』は欠かせません。紙と子の発音は同じで早生貴子とは早く子供に恵まれますようにの意味です。このように中国の客家人では台湾でも大陸でも同様です。一概に傘が駄目だと言えません」とのことです。
なるほど・・・、傘を縁起物としてプレゼントする地域はあると聞いていましたが、具体的な事例に触れるのは初めてでした。中国といっても北から南まで広い地域です。その地域によってそれぞれ違う風俗や習慣があることは十分に想像できます。中国をステレオタイプで理解しようとしてはいけませんね。中国の広さと奥行きの深さを改めて確認されられたメッセージでした。
「傘は人と言う文字が5つ有るので子孫繁栄の意味も有ります。そして傘の形は丸いので円満の意味も有ります」とのご指摘も・・・。なるほど、これは次のセミナーのネタ(?)で使わせていただきます。(^o^)v
■実は私も「扇子」をもらった経験があります。
中国のお土産に「扇子」をもらったことがあります。「扇子」はダメと聞いていたので、一瞬ドキッとしましたが、この「扇子」のお土産はなかなか心憎い計らいでした。
企業訪問で工場を見学した後、会議室に通され質疑がありました。会議室の戻ってきてテーブルの上を見ると、紙製の手提げ袋が置いてあります。ちらっと袋の中を覗いてみると、中には箱に入れて丁寧に包装された「扇子」が入っていました。
「あれっ?この扇子のお土産は・・・、(歓迎されていない証・・・?)」という思いが頭を過ぎりましたが、「まさかそんなことはないだろう」と総経理が会議室に入ってくるのを待ちました。
総経理はすぐに会議室に戻ってきて、こう切り出しました。
「扇子はスペシャルプレゼントです。この地域の伝統工芸品ですが、ぜひご利用ください」
総経理の言うままにさっそく箱から取り出して開いてみると、そこには大きく文字がひとつ書いてありました。
「この毛筆の文字は私の直筆です。『恕』という文字です。この文字の意味は、これから日本企業の皆さんと助け合いながら、励ましあいながらビジネスを進めていきたいという思いです。譲り合う気持ちを忘れずに長くお付き合いしていきたいという思いを込めて書きました」
総経理直筆の文字をしたためた「扇子」のプレゼント・・・。行書で書かれた文字はなかなかの達筆で、今までいろいろなお土産をいただく機会がありましたが、今でも忘れなれないお土産のひとつです。
■実はお土産も地域によっていろいろ・・・。ステレオタイプで理解するにはなかなか難しい中国人
日本人はどうももの事をパターン化して理解したがるようです。「○○○地方出身で、△△△という経歴で、□□□という学歴で、◇◇◇業界に勤めている彼はどんな人・・・」というように、型に当てはめて人を理解しようとします。ステレオタイプで型に当てはめてもの事を見る傾向があるようです。
しかし、このように型に当てはめて中国人を理解することが本当にできるでしょうか?答えは「NO」です。地域性による違いや世代差による違い、またひとりひとり考え方や生き方の違いなど、さまざまな価値観を持つ人たちの集合体です。
一般的に日本人は「右へ倣えの横並び文化」だと言われます。誤解を恐れずに言うと、他人と同じ行動をすることで何となく安心感を得て、「出る釘は打たれる」のが日本の文化です。「主張することが評価される文化」が中国、「悟り合うことが評価される文化」が日本・・・。
贈り物も地域によって私たちがまだ知らないさまざまな風習があることでしょう。そのすべてを理解することが大切なのではなく、そのひとつひとつを自分自身で確認しながら、自分がどう異文化と向かい合っていくべきかを考えること。これが異文化理解を深めるためには大切なことではないかと思います。
地域による「贈り物」の風習の違いについて、引き続き読者の皆さんからのメッセージの投稿歓迎いたします。
よろしくお願いします。
To be continued
私見ですが・・・。「春節」の時期、人間関係のメンテナンスで重要なのは「忘年会」です。これは日本の「忘年会」とはまた違った意味で重要なイベントでもあります。
「春節」時期、中国や台湾の「忘年会」とは、「社長が社員全員の一年の労をねぎらうために主催する食事会」です。社員全員を集めて、レストランやホテルを貸し切りで行ったり、時には街のホールや集会所で行ったりすることもあります。また、社員の家族も呼んで盛大に行う会社もあります。部署ごとに集まって、10~20人単位で居酒屋で行う日本の忘年会とは様子が違うようです。
もちろん費用は全額会社持ちです。日本のように「会費制」とか、「割り勘」とかではありません。時には「社長自らのポケットマネーで・・・」ということもあります。全員参加のビンゴ大会や部署ごとの余興、カラオケやアトラクションなどを行う会社もあります。社長自らが景品を出して、社員に振る舞うというケースもあります。
「忘年会」にお客さんとして取引先を招くケースも少なくありません。こちらから申し出ればたいていは歓迎してくれるはずです。「紅包」(ご祝儀)を持って出かけて行きましょう。筆者は駐在時代にこうして何度も取引先の「忘年会」に参加しました。
実はこの「忘年会」に参加すると、会社の内部の様子が実によくわかります。単に食事に行くのではなく、会場の中の様子を見回すと・・・。テーブルの数、配置、席順・・・。そして、社長の周りに誰が座っているか、部門ごとのリーダーの位置関係etc. こんなところがチェックポイント・・・。
社内の雰囲気、今年の業績、会社の勢いなど・・・。今年の売上げはどうだったか? 業績を上げているのどの部門か? 社内の人間関係は? 社長が社員に慕われている様子etc. 会社の中の様子がけっこう手を取るようにわかります。社内の雰囲気が実によくチェックできるのです。
もうひとつ大切なチェックポイントは窓口になっている社員の動向です。実は忘年会の時期は転職のシーズンです。新しい年もボーナスをもらって、「春節」休み(お正月休暇)を機に辞表を出して会社を辞めるという人もいます。
「来年もよろしくお願いしますね」というひとことを言うためにわざわざ日本から出張を入るという商社の友人がいます。彼は生き生きと仕事をしているか、会社に不満を持ちんがら仕事をしていないか、お酒を飲みながら話をします。会社に対するホンネを聞く絶好の機会でもあるのです。
商社の友人は長い取引を続けていくためには「忘年会」への出席は毎年欠かさないそうです。「忘年会」は担当者とホンネで話ができる時間を作る貴重な機会なのです。
ぜひ、来年は取り引き先の「忘年会」に乗り込んで言ってみてはどうでしょうか?きっと大歓迎してくれるはずです。ちなみに、来年(2015年)の「春節」は2月19日(木)です。 (^。^)/
「春節」は転職が多い季節です。「春節」の正月休暇を機に会社を辞める人、ボーナスをもらって会社に辞表を出す人、新しい年を新しい職場で迎えようとする人etc.
「春節」の前後は重要な案件の打ち合わせや意思決定は避けたほうが無難です。クリスマスから年末年始、そして「春節」までは何かと慌しい季節です。重要案件の決定は慎重に進めたほうがいでしょう。実は、この「春節」の前後は転職が多い時期なのです。
また、「春節」は転職の季節でもあります。正月明け、その会社を訪問してみると担当者がいなくなっている(転職してしまっている)ということもあります。日本の会社では考えられませんが、中国や台湾では担当者が代わってしまうと商談が最初から組み立てなおしということがよくあります。会社を辞める担当者が後任者に十分な「引き継ぎ」をしないまま会社を辞めてしまうということがよくあるからです。
重要な案件は会社とトップの意向を十分に確認し、実務の担当者とも普段以上に連絡を密に取り合い、十分なコミュニケーションを欠かさないように仕事を進めることをお勧めします。「春節」の前後は特に注意が必要な時期です。
筆者は基本的に「春節前後の出張はできれば避けるべき・・・」と考えますが、「敢えてこの時期に出張を入れている・・・」という商社の友人もいます。その目的は「忘年会」です。彼は「春節」前に敢えて出張を入れて現地で取引先の「忘年会」の梯子をするというのです。
そのひとつの理由は、彼に言わせると「担当者の進退確認・・・」だと言います。「一年間、お疲れ様でした。お世話になりました。来年もいっしょにがんばりましょう・・・」という挨拶。さらに来年の具体的な計画や将来の方向性など、担当者とのコミュニケーションを取り、信頼関係を深めるには、忘年会の時期は絶好の機会なのです。
「春節前後の出張は人間関係のメンテナンスのために重要・・・」と考えるわけです。長年中国でのビジネスに携わってきたからこそ言えるコメントかも知れません。
ビジネスは「会社」対「会社」が基本です。契約書を交わして仕事は会社対会社で進めていきます。しかし、実際の仕事の現場を動かしているのは担当者です。仕事の現場では「人」対「人」の信頼関係が重要。あたりまえのことなのですが、特に華人圏では「人」対「人」の信頼関係を十分に意識してビジネスを進めていく必要があります。
「春節」の時期は転職が多い季節です。ここで注意したいのは業務の「引き継ぎ」です。中国の企業では辞めていく社員から後任者へ業務の「引き継ぎ」が期待できないことが多く、辞めていく社員が後任者に「引き継ぎ」をしないまま突然会社をやめてしまうこともあります。これはそれまでの業務に支障をきたすばかりか、これまで培ってきた人間関係を再構築しなければならないこともあります。
日本なら辞める人が新しい担当者を伴って挨拶にやってくるところでしょう。しかし、そんな日本では「あたりまえ」のことが期待できないことがあるのです。日本人は担当者は辞めた後の業務が滞らないように業務の「引き継ぎ」をすることが「あたりまえ」と考えます。しかし、中国ではそうとも限りません。
挨拶がないどころか、メールでの連絡すらないことがあったり、「後任者」さえ決まっていないというケースがあったり、日本の「あたりまえ」がまったく通用しないこともあるので要注意です。担当者が換わるとプロジェクトはゼロスタートになり、再度打ち合わせが必要となるケースもあります。
「後任者」の人選は、あくまでも取引先である中国企業側内部の問題です。しかし、実は日本側から注意を払っておきたいポイントでもあります。「窓口となっている担当者が突然会社を辞めてしまう可能性がある」、「もしも彼が辞めてしまったら、彼が担当していた業務は誰が引き継いでくれるか」、このような点を日本側から意識しておくことが中国ビジネスでは必要なのです。
担当者が辞めてしまっても業務が滞らないように、彼の同僚や部下、アシスタントの中で誰がキーパーソンになるかある程度検討をつけておきたい。担当者が辞めた後のキーパーソンを予め探しておくことをお勧めします。
そのためには窓口になっている担当者だけではなく、日ごろから彼の同僚や部下とのコミュニケーションを図る機会があれば理想的。メールは必ずCCで複数の担当者に送る。彼の下で誰がどんな権限を持っているかもある程度は把握しておきたいところです。
こうした点は日本企業同士の取引なら気にしなくてもよいポイントです。なぜなら担当者が代わってもしっかり「引き継ぎ」があり、後任の担当者が前任者の業務を引き継いで問題なく進めてくれるうからです。しかし、中国企業との取引の場合、「個人は会社を代表していない」と心得ておくべきです。
もちろんビジネスは「会社」対「会社」の契約で動くのですが、実際にビジネスの現場を動かしているのは現場の担当者です。中国の場合、時には会社間の契約よりも担当者の現場レベルでの判断が優先されることがあり、この点は日本企業が注意すべきポイントのひとつです。人と人の繋がりがビジネスを動かしている。「個人」と「個人」の信頼関係の構築と密接な連絡がより重要なのです。
「春節」の時期、先方とのコミュニケーションに特に注意を払うことをお勧めします。正月休み明け、担当者のメールアドレスがちゃんと活きているかどうか(?)、念のために確認を・・・。
新年快楽! あけましておめでとうございます。
2014年の「春節」は1月31日。旧暦でお正月を祝う中国では「春節」が1年の始まりです。今年も皆さんにとってすばらしい1年になりますように・・。今年もよろしくお願いします。
1月30日が「除夕」(大晦日)、各地で爆竹が鳴り響き、花火が夜空を彩り、商店街も伝統市場でも赤い正月飾りが華やかな雰囲気を盛り上げます。「徐夕」から「春節」を跨いで1週間ほどが正月休暇です。荷物をたくさん抱えて満員の帰省列車に乗り組む風景は日本でもテレビのニュース番組で報道されるこの時期の風物詩になりつつあります。
では、カレンダーの1月1日はどうかと言うと・・・。新暦でお正月を祝う日本のような特別や雰囲気はありません。中国でも1日は祝日になり仕事は休みになりますが、その前後も含めて通常通りの仕事です。旧暦の正月である「春節」を盛大に祝うのが華人圏の習慣なのです。
さて、「春節」のもうひとつの側面・・・。それは「春節」のこの時期は「転職」の季節でもあります。一般的に中国では年末から1月にかけて人事評価があります。個人の査定があり、面接があり、ボーナスの金額や翌年の目標が決まります。
ボーナスを受け取ると「忘年会」のシーズンに入ります。つまり、2014年が明けて「春節」の1月31日にまでは「忘年会」のシーズンが続いているわけです。そして、「忘年会」を前後してボーナスを受け取って、「忘年会」を終えてから「辞表」を出すという社員もいます。「春節」を機に会社を辞め、心機一転、正月休暇後は新しい職場に出社するというパターンです。
「正月休暇後、担当者が換わってしまった」、「窓口だった人が会社を辞めてしまった」というケースもあります。しらずに中国出張を入れると、現地に行ってみて「担当者がいない」、「換わった担当者が前任者から業務を引き継いでいない」といったケースもあります。大きなプロジェクトの最終決定はできればこの時期を避けたほうが無難かもしれません。「重要案件の決定は旧正月明け」、「この時期の出張はできる限り控えている」という人もいます。
「春節」は人が動く季節です。この時期は一年でも最も転職が多い季節なのです。くれぐれも要注意。皆さんの取り引き先の担当者は大丈夫?
アジアビジネス成功の秘訣の3つ目は「本領主義」です。「本領主義」とは、読んで字の如く「本領」を発揮することです。つまり、自分の「強み」を見極め、その「強み」を徹底的に主張し、「強み」をビジネスに活かすということです。アジアビジネスで成功を収めるためには、まずは自らの「強み」を見極めることが第一歩という考え方です。
■「強み」を見極めること、その「強み」を徹底的に発揮すること・・・
リーマンショック、そして尖閣問題を経て、日本企業が中国ビジネスに取り組む姿勢がだいぶ変わりました。「何かビジネスチャンスがありそうだ・・・」、「何かやりたい・・・」という声はほとんど聞かなくなりました。「何かできそうだ・・・」、「とにかく行ってみよう・・・」という方もいなくなったようです。「とにかく中国・・・」、「中国に乗り遅れるな・・・」とばかり中国に眼を向けていた時代は終わったようです。
今、ブームの矛先は東南アジアに向いています。「とにかく行ってみよう・・・」、「乗り遅れるな・・・」という方を今度はベトナムやミャンマーで見かけることがあります。かつて、中国を「ばら色」の可能性と考えた企業が、実は「茨」の道に迷い込んでしまったように、「チャイナリスク」を避けるために東南アジアに向っている企業も、今度はベトナムで、ミャンマーで苦戦を強いられることになるのではないでしょうか。
結局のところ、「強み」を発揮できない企業はどこへ進出しても「茨」の道です。「強み」を徹底的に見極めること、その「強み」を徹底的に主張すること、これはどこへ行っても同じではないでしょうか。「本領主義」とは、自分の「強み」を徹底的に見極め、徹底的に「本領」を発揮することです。自社の「強み」がその地域のニーズに合うかどうか、求められている「強み」として通用するかどうか、これをを徹底的に考えること。これが「本領主義」です。
新たな進出先で中国企業との戦いに巻き込まれるというケースも耳にします。ビジネスチャンスの可能性があるところにはたいてい「華人」がいます。先回りしてネットワークを網の目のように張り巡らして貪欲にビジネスに取り組んでいます。どこへ行こうと中国企業との関わり(華人との関わり)は避けて通れないようです。
彼らは、ビジネスチャンスを得るためには多少の「リスク」がつきものと考えます。そのリスクを最小限に留めて、チャンスをモノにするために、スピーディに、フレキシブルに、チャンレンジ精神を発揮して、ビジネスに挑んでいきます。リスクを克服し、それを「強み」に転換し、ビジネスを切り開いていくためのノウハウ(智慧)とネットワーク(人脈)を持っているのです。
■御社の「強み」を1分間で話してください・・・
こんなことがありました。企業訪問時の出来事です。訪問先は台湾でも有名な大手セキュリティー企業で、公安や軍関係のセキュリティー・システムを一手に引き受けている企業です。グループの総裁がわれわれ日本からの視察団を迎えてくれました。彼は業界ではちょっとした有名人です。
一方、日本側はベンチャー企業の若手社長グループ。ミーティングはまず総裁のひと言から始りました。彼は開口一番、「君たちの会社の『強み』についてポイントを3つにまとめて、1分間で話してください」と切り出しました。決して高飛車な態度ではなく、チャンスがあればアライアンスの接点を探そうという彼の姿勢。相手が中小企業でも、ベンチャーでも、「強み」さえ持っていればその企業と対等に付き合う。こうした姿勢は台湾企業共通の特徴です。
逆に、日本側から見ると相手が大企業であっても物おじする必要はありません。海外では意外と敷居は低いものです。要は主張できる「強み」があるかどうか、その「強み」をきちんと主張するかしないかがポイントです。 しかし、残念ながら日本側は準備不足でした。いきなり「強み」を3つに絞ってと言われてもなかなか即答できるものではありません。
もし、「1分間で会社の『強み』を3つのポイントにまとめて言ってください」といわれたら、皆さんなら何を伝えますか?私が講師を務める「海外市場開拓セミナー<実践講座>」では、こんなワークショップも取り入れています。「強み」を徹底的に見極めること、これが海外でのビジネスを展開するとき、まずは自社で取り組むべき課題の第一歩です。http://www.asia-net.biz/20-2.pdf
■「三本主義」はそのまま日本企業が克服すべきウィークポイント
「三本主義」とは、「本人主義」「本土主義」「本領主義」の3つを指します。つまり、「経営者自ら(決定権を持つ責任者)が、ビジネスの最前線で陣頭指揮を執り、『強み』を徹底的に発揮してビジネスを進める」ということです。この「三本主義」にはアジアビジネス成功ののエッセンスが濃厚に凝縮されていると言えます。
台湾人経営者が言う「三本主義」を日本企業にも当てはめて考えてみた場合、果たしてどうでしょうか。もしかしたら、「三本主義」からそのまま日本企業のウィークポイントが見えてきそうな気がします。スピード、柔軟性、チャレンジ精神、それらを実行するためには「三本主義」が必要であり、日本企業の苦手な部分と言えるのではないでしょうか。
最後に個人的な見解ですが・・・。中国ビジネスはこれから進出しようという新規のビジネスはめっきり少なくなりました。しかし、逆に中国ビジネスに本気で取り組もうとする人が増えたように思います。「ホンキ度」が増したと言ってもいいかもしれません。「今だからこそ中国・・・」、「これからこそ中国・・・」という元気な企業を「三本主義」で応援していきたいと考えいています。
アジアビジネス成功の秘訣の2つ目は「本土主義」です。これは、「現場主義」と言い換えることもできます。ビジネスが実際に動いている「現場」を自分の目で見て、自分の足で歩き、肌で感じ、その現場で陣頭指揮を執るということです。「本人主義」に続いて、この「本土主義」もアジアビジネスで台湾人経営者が重視するポイントです。
スピーディーな経営判断を行うためには、ビジネスの「現場」で活きた情報収集を行う必要があります。そこで集めた情報の分析も「現場」で行い、「現場」で整理し、「現場」で分析し、「現場」で状況判断と意思決定を行うことが重要です。こうした徹底した「現場主義」がアジアビジネスを成功に導く「鍵」であると言えるでしょう。
台湾人経営者のコメントです。「会議室でいろいろ考えても仕方がない。まずは自分の足で現場を歩き、実際に自分の眼で見て確かめるべき」、「自分の耳で現場の生の声を聞いて、活きた情報の中から必要な情報を見極め、経営判断にすばやく役立てる」というのが台湾人経営者の考え。彼は「日本企業は責任者が現場に来ないケースが多い。どうやって経営判断をしているのか」、「とても理解できない」と考えているようです。
■事前のデータ収集はどこまで必要か?
私の事務所では中国や台湾ビジネスに関する「個別相談」を行っていますが、事務所にいらっしゃる方から「中国の経済指標や企業データを入手したいがどうしたらいいか」と相談されることがけっこうあります。相談に来る担当者の方は事業計画を立てるための資料集めが目的であるようです。
政府発表の「統計資料」を取り寄せたり、与信のために企業の「信用調査」を行ったり、熱心にデータ集めをする人がいらっしゃいますが、こうした取り組みはほどほどにしたいものです。実は集めたデータはすべて「過去のもの」です。まったく意味がないとは言いませんが、本当に活きたデータがどのくらい手に入るものでしょうか?データ集めはほどほどにしておきたいものです。
中にはあれもこれもとデータを必要以上に欲しがる人がいます。社内稟議に提出するためだけのデータ集めであったり、集めたデータが多すぎて混乱してしまう方もいました。(中国のデータの場合、出所によってはデータの根拠となる定義やデータ集めの切り口が異なっているケースも少なくなく、整合性を取るのがたいへん難しいケースもあります)
「上司を説得するためだけのデータ集め」というケースもありました。「何ヶ月もデータ集めだけをやっている」という方もいらっしゃいました。統計数字の確認で出口のない迷路に迷い込んでしまう人もいました。何のためのデータなのか甚だ疑問です。こうしたデータはあくまでも補足的な資料と考えるべきで、やはり大切なのは「現場の声」です。
■日本企業はデータ収集にこだわり過ぎる・・・
「日本企業はあまりにもデータにこだわり過ぎる」という声を台湾人経営者からもよく耳にします。ある日本企業の担当者に台湾人経営者を紹介したときのことです。台湾人経営者が「データ集めに奔走する時間があるくらいなら、まずはとにかく『現場』に来て欲しい」と日本人担当者を一喝。「本当にやる気があるのなら、もっとスピーディに動くべき」と意志決定が遅い日本企業に対して苦言を呈したこともありました。
「日本企業はリスクを洗い出して、そのリスクを避けるための方法を考えることに熱心」とはこの台湾人経営者のコメント。台湾企業はリスクは「避けるもの」ではなく、「立ち向かうもの」と考えます。リスクの裏には必ずビジネスチャンスがあると考えるからです。
魅力的なビジネスにはすぐに喰いつくのが台湾人経営者です。石橋を叩いてもなかなか渡らない日本企業に対して痺れを切らし、自らが訪日して日本人経営者に決断を迫ることもありました。彼らはリアルタイムで入ってくるビジネスの現場の「生」の情報こそが重要だと考え、スピーディかつフレキシブルに行動します。
■現場に行ってやっと理解する「現場を見ることの重要さ」
海外視察を企画し、日本企業の皆さんと現地視察に行くと、帰りの飛行機で参加者の皆さんから必ず出る感想があります。ほぼ必ずと言っていいほど聞くことができる感想です。
それは、「やはり現場に行かないとわからない」、「自分の目で見て来てよかった」、「実際の状況は想像していた以上だ」といったコメント。統計や企業データでは見えてこない現場のムードとか、そこで働く人たちの熱気とか、中国経済の勢いとかを現場に行って自分の目で確認してくることが重要なのです。
できれば、我々が企画する海外視察で「やはり現場に行かないとわからない」を確認するのではなく、自らの力で現場に飛び込んで行った欲しいものです。
次回のコラムでは「本領主義」を取り上げます。
今回のコラムで取り上げるテーマは「三本主義」です。これはアジアビジネスを成功に導くための基本姿勢として、台湾人の企業経営者がよく使う言葉です。「三本主義」とは、「本人主義」、「本土主義」、「本領主義」の3つを指します。
1911年の辛亥革命で孫文が唱えたスローガンを「三民主義」と言います。これは「民族」、「民権」、「民生」とういう革命の3つの基本原則です。ここで紹介するのは「三民主義」ではなく、「三本主義」です。これは政治やイデオロギーの話ではありません。あくまでもビジネスの現場での話しとしてご覧いただきたいと思います。
台湾人経営者が唱える「三本主義」に我々日本人も学ぶべき点があるのではないかと思います。「三本主義」をひと言で表現すると、「経営者自らが、現場の最前線に立ち、徹底的に強みを主張すること」です。話を聞かせてくれた台湾人総経理は、「中国でビジネスを成功せさるためにはこれがすべてだ」と力説。その姿がたいへん印象的でした。
■「本人主義」とは・・・
まず、第一に「本人主義」とは、「経営者自らが率先してビジネスの陣頭指揮をとるべき」という考え方です。つまり、これはビジネスを「人任せにしない」ということです。経営者自らが現場で陣頭指揮をとり、スピーディーな情報収集と情報分析を行い、その場で判断し、その場で意思決定を行うことが重要です。変化に対してフレキシブルに対応していくためには、やはり経営者自らが現場に立つことが必要なのです。
責任者自らが現場に立てないケースもあるでしょう。その場合、現場責任者に「権限」がきちんと与えられているかいう点がポイントです。現場の責任者が「決定権」を持ち、それぞれの現場できちんとこの「決定権」が行使できる体制を作ることが必要です。台湾人経営者はこう考えます。
■責任者は誰・・・?
中国で日本企業誘致に携わる地方政府担当者からよくこんな話を聞きました。「日本企業は顔が見えない」、「誰が意思決定者なのかよくわからない」、「現場の責任者が決定権を持たされていないようだ」といったコメント。中国側から見ると、「意思決定ができる責任者がいない」というのはたいへん不思議な光景に映るのでしょう。組織で動く日本企業の実態を知らない中国人には「本当にビジネスをやる気があるの?」とも映るようです。
もちろん、最終的に意思決定をするのは「社長」です。しかし、日本企業の場合(特に大企業では)、社長は意思決定が済んだあとの「調印式」に儀礼的に現場に行くだけというケースもあります。さらに、調査から準備へ、法人立ち上げから工場の建設へ、実務レベルが下から順番に現地にやってくるというケースも奇異に映るようです。
日本の会社の場合、会社として方針決定に到るまで社内での根回しやスタッフ間の十分な意識の共有が必要であり、何度も稟議を重ねます。このように意思決定には一定のプロセスが必要で、一歩ずつ手続きを踏んで「組織」として意思決定がなされることが特徴です。
しかし、これが、日本企業が海外でビジネス展開をする際にブレーキにもなっています。台湾企業の場合、もし経営者本人が現場で陣頭指揮をとれない場合、だれに「権限」があるのかが明確にされます。経営者に代わって全権を委任される経営者の代理人が現場に臨み、強いリーダーシップを発揮して判断と決定を行っていきます。これが台湾企業のスタイルなのです。
次回のコラムは「本土主義」を取り上げます。
■テーマ■「緑の帽子」は「妻を他の男に奪われた男性」という意味 <贈り物の品物選びに要注意 (3)>
「贈る物選びには注意」というテーマです。お土産として相応しくない品物です。答えは①× ②× ③× ③× ④× ⑤× ⑥×です。実は、すべて「贈り物」として相応しくないものです。「時計」はだめ、「傘」も「扇子」もダメ。そして前回は「お菓子」を贈るときには渡すときの言葉に注意という説明をしました。今回の解説は「緑の帽子」です。
■ケーススタディ■「贈り物の品物選びに要注意」
① 職人が手作りで仕上げた伝統工芸品の和傘【×】
② 日本各地の有名お菓子を集めた詰め合わせセット【×】
③ 設立25周年を記念して作ったインテリアとしても美しい木目調の置時計【×】
④ 秋葉原でしか買えない数量限定のキャラクターデザインの可愛い扇子【×】
⑤ 太陽パネルで電池交換の不要なハイテク目覚まし時計【×】
⑥ 会社のエコキャンペーンで製作し、TVでも有名になった緑の帽子
今回は⑥の「緑の帽子」がどうしていけないか。その解説です。
■「緑の帽子」は不倫をイメージさせる
「緑の帽子」をかぶることは「不甲斐ない男性」を意味します。また、「妻を他の男に奪われた男性」という意味もあります。「緑の帽子」がダメな理由について、実は諸説あるようです。
これはそのひとつです。昔の中国の元王朝、明王朝時代に娼婦の親族の家長は「緑色の頭巾」(一説には青)を頭に巻いていたという説があります。また、当時は色によってその階級や身分を表わしていたようで、身に付ける衣服の色まで法律で制限がありました。実は、「緑」や「青」は「賎職」の色とされていました。
当時は階級制度が厳しく、「娼婦など賤職に携わる人々は緑の衣服を身にまとうように」という決まりがあったとも言われています。「娼婦の父および家族は青や緑色の帽子をかぶること」という規則があり、それが「緑の帽子」という形で現代に残り、「戴緑帽子」(dai lumaozi)という中国語は「妻を寝取られた男」という意味するが今でも残っているわけです。
また、こんなエピソードもあります。あるところに浮気をしている女性いました。この女性は自分の夫が出張に行くときに「緑の帽子」を被せて家を送り出したそうです。彼は商人でたびたび出張がありました。女性の浮気相手の男性は帽子の色を見て、女性の家に行くかどうかを判断しました。
つまり、「緑の帽子」をかぶらせて家を送り出した日は、「今夜は夫は帰ってこない」という浮気相手の男性へのサインなのです。何も知らない夫は「緑の帽子」をかぶって仕事に行きます。それで「緑の帽子」が「妻の不倫に気づかない情けない夫」、「妻を他の男に奪われた男」、「不甲斐のない男性」を意味しているわけです。
このエピソードは中国人ならみんな知っています。ですから、中国人の女性の前に「緑色の帽子」をかぶった男性が現れると、彼女たちはくすくす笑います。男性が「緑の帽子」をかぶっているということは、「私の妻は実は不倫をしています」、「私のガールフレンドは別の男性と浮気しています」、「私は甲斐性のない男性です」とみんなの前で公然と宣言しているようなものです。中国へ出張や旅行で出かけるときには、くれぐれも「緑の帽子」はかぶらないように・・・。もちろん、プレゼントとしても相応しくない品物です。
※このコラムは「アジアITニュース&プロダクツ」で連載されている「日曜コラム」と連動しています。こちらのサイトもご覧ください。
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