■テーマ■「お菓子をお土産に持って行ってはいけない?」 <贈り物の品物選びに要注意 (2)>
贈る物選びには注意が必要というテーマです。これまで「傘」はダメ、「扇子」も要注意、「時計」は絶対に送ってはいけないという点を解説してきました。(詳しくは前回のコラムをご覧ください)
■ケーススタディ■「贈り物の品物選びに要注意」
① 職人が手作りで仕上げた伝統工芸品の和傘 【×】
② 日本各地の有名お菓子を集めた詰め合わせセット
③ 設立25周年を記念して作ったインテリアとしても美しい木目調の置時計 【×】
④ 秋葉原でしか買えない数量限定のキャラクターデザインの可愛い扇子 【×】
⑤ 太陽パネルで電池交換の不要なハイテク目覚まし時計 【×】
⑥ 会社のエコキャンペーンで製作し、TVでも有名になった緑の帽子
今回は②の「お菓子の詰め合わせ」について解説します。
■「つまらないもの」は要らない
贈り物として「お菓子の詰め合わせ」は絶対に贈ってはいけない品物なのでしょうか?先に「結論」を述べます。「お菓子」自体は贈ってはいけないというわけではありません。問題はお土産を渡すときの「コメント」です。渡し方に要注意というのが今回の解説のポイントです。
「私は毎回手土産にお菓子を買って行く」、「チョコレートや人形焼は中国人にけっこう人気がある」、最近では『白い恋人達』のブームが去って、「東京ばなな」が人気。海外出張のとき、現地スタッフにお菓子を買って行くという人もおおいのではないでしょうか?もう一度繰り返しますが、「お菓子」がダメなわけではありません。問題は渡し方とコメントです。
「つまらないものですが、皆さんで召し上がってください」皆さんはお土産を渡すときに、こんな言い方をするのではないでしょうか?日本人なら普通によく使う言葉の使い方です。
ポイントは「つまらないものですが・・・」という言葉です。日本人なら誰でも理解できることですが、本当に「つまらないもの」をお土産に選んだわけではありません。これは自分を謙らせて相手に対する尊敬の気持ちを表すときの言葉です。お土産が「つまらないもの」ではなく、謙遜の気持ちを表現した言葉です。日本人特有の謙虚さや謙譲の美徳がその背景にあります。
しかし、中国人に対しては必要以上に謙った表現は不要です。「つまらないもの・・・」ではなく、むしろ「陳さんのために『とてもいいもの』を買ってきました」と言ったほうがいいのです。中国人に「贈り物」をするときには、「あなたのために一番いいものを選んできました」、「いっしょう一所懸命選んでわざわざ買って来ました」、「これは一番おいしいお菓子の詰め合わせです。」という言い方をしたほうがむしろ喜ばれるでしょう。
「贈り物は人間関係のバロメーター」というキーワードがあります。実は「つまらいもの」は贈ってはいけないのです。贈り物を選ぶときは、ふたりの関係を象徴するいい物(りっぱなもの、価値のあるもの、それなりに金額の高いもの)を選ぶべきです。儀礼的な贈り物だったり、形だけの贈り物や気持ちだけの贈り物は「必要ない」というケースがしばしばあります。「つまらないもの」なら要らないのです。儀礼的や形だけなら贈るべきではありません。「私とあなたの関係はこの程度・・・」と思わせてしまう可能性があります。この点は中国と日本との文化の違いです。
繰り返しですが、「お菓子の詰め合わせ」が悪いのではなく、心を込めて贈れば「お菓子の詰め合わせ」でも大丈夫です。しかし、ひとことコメントを加えて、「陳さんのためにとっても『おいしいお菓子』を選んできました」というぐらいの言い方はしたいですね。次に中国人にお土産を渡す機会があったら、ぜひ実践してみてください。受け取る側は今まで以上にあなたのお土産に感激するはずです。
■「皆さんで召し上がってください」は相手の面子をつぶす言い方・・・
もうひとつポイントがあります。「皆さんで召し上がってください」という言い方です。これも日本人同士ならあたりまえのように使う言葉ですが、実は、お土産を渡すときにこういう言い方をするのと相手の面子をつぶすことにもなりかねません。相手に対してたいへん失礼な言葉です。
「贈り物」とは基本的に「個人」が「個人」にプレゼントするものです。一対一の関係作りが基本です。お土産は「私」が「陳さん」(相手本人)にプレゼントするものなのです。日本人同士なら「皆さんで召し上がってください」という相手に対する心遣いはわかりますが・・・。この場面では、「どうぞ陳さん受け取ってください」と言って渡すべきです。
受け取った陳さんが、「ありがとうございます。せっかくですから、それではみんなでいただきましょう」と言って、受け取ったお土産を部下に配るかどうかは陳さん自身の問題です。最初から「皆さんで召し上がってください」ということは、陳さんの面子をつぶすことにもなりかねないので注意が必要です。
ここで「実践テク」ですが、お土産を準備するときは「ふたつ」準備することをお勧めします。ひとつは「陳さん用」です。そしてもうひとつは「皆さんで召し上がっていただくため」のお土産です。「これは陳さんどうぞ召し上がってください」と言って陳さんにひとつを手渡し、そして「それからもうひとつはぜひ皆さんで召し上がってください」とって言ってもうひとつを渡します。こうすると陳さんの面子をつぶさずにすみますし、私の気持ちをスタッフ全員に伝えることもできます。
しかし、本当に私の気持ちを伝えたいなら、基本的にお土産は「ひとり」に「ひとつ」ずつ準備することです。陳さんの部下が5人いたら5個、10人いたら10個、人数分準備することが本当に礼を尽くすことです。ひとりひとつが原則なのです。
■日本に来る中国人がお土産を準備するとき・・・
こんなことがよくあります。投資説明会や展示会など中国側が主催して日本で開催されるイベントのお手伝いをすることがあります。中国の企業や地方政府の方々のサポートです。そんな時に彼らが持ってくるお土産はひとりひとつが原則です。こちらが5人いたら5つ、10人いたら10人分を必ず準備してきます。
「皆さんで召し上げってください」というお土産を一度も受け取ったことがないのです。こんなところに中国人の気遣いを改めて発見します。
しかし、結局のところお土産は渡す相手を気遣い、「気持ち」が大切です。毎回人数分のお土産を準備する必要はありません。お土産というのは、相手の肩書きが地位、自分と相手との関係、ふたりで取り組んでいるプロジェクトの重要度など、いつ誰にどんなお土産を準備すべきかは皆さんで判断してください。繰り返しますが、毎回「東京ばなな」を箱買いして大きなダンボールを抱えていく必要はないのです。
そして、気遣いのひとつとしてお土産を渡すときの「コメント」も忘れないでください。「どうしてこの品物を選んだか」、「なぜ陳さんにこれを食べて欲しい(使って欲しい)のか」、言葉にしてしっかり相手に伝えるべきなのです。「つまらないもの」ではなく、「本当に相手に相応しいもの」であることをしっかり伝えるべきです。お土産を準備するときにぜひ実践してみてください。
次回は⑥「会社のエコキャンペーンで製作し、TVでも有名になった緑の帽子」の解説をします。ご期待ください。
To be continued
※このコラムは「アジアITニュース&プロダクツ」で毎週日曜日に執筆している吉村章の[日曜コラム]に連動しています。こちらのサイトのほうもぜひご覧ください。
http://www.ippc.biz/
このコラムではアジアビジネスを進めていく上で注意したい「異文化理解」のポイントについて取りあげていきます。できるだけ具体的な事例を取り上げながら、すぐに役立つ知識やノウハウ、さらには実践的ですぐに使えるテクニックを紹介していきたいと思います。よろしくお願いします。
特に、中国、台湾、香港、シンガポールなど「華人圏」でのビジネスに注目し、彼らとうまくつきあっていくために必要な基本知識やマナー、仕事の進め方や商習慣の違い、ビジネスの上で注意すべきポイントなどを解説していきます。さらに、中国人の価値観や仕事観、彼らが持つ独特なコミュニティ感覚や仕事に対する就業意識まで踏み込んでいけたらと考えています。
「なぜ大きな声でケンカをするように話すのか」、「なぜ列に並ばないのか」、「なぜ列に割り込むのか」、「なぜ残業をしている同僚の仕事を手伝おうとしないのか」、「なぜ食事をご馳走した翌日にお礼を言わないのか」、「なぜ言い訳ばかりするのか(素直に謝らないのか)」etc.
このようにマイナスイメージで中国人を見る日本人も少なくありません。しかし、こうした中国人に対するマイナスイメージは「単なる日本人の誤解」であるケースも少なくありません。彼らの行動にはそれぞれ理由とその背景があり、「異文化理解」に目を向けることが如何に重要であるかを気づかされます。
このコラムではこうした日本人と中国人の価値観や考え方の違いに目を向け、コミュニケーションギャップの原因を考え、彼らとうまくつきあっていくにはどうしたらいいかを考えていきます。ビジネスを進めていく上で知っておきたい「異文化理解」のポイントをひとつでも多く紹介していくことを目的に執筆を始めました。
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■テーマ■「絶対に贈ってはいけない品物」 <贈り物の品物選びに要注意 (1)>
さて、最初に取りあげるテーマは「贈り物の品物選びに要注意」という内容です。皆さん、いっしょに考えてみてください。
■ケーススタディ■ 中国出張のとき、取引先の担当者にお土産を買って行こうと思います。相手は仕事で日頃からお世話になっている中国人です。鈴木さん(仮名)は成田の免税店でお土産を選ぶことにしました。しかし、次の①から⑥の品物の中で、「贈り物」には相応しくない品物があります。贈り物としては絶対に選んではいけない品物があります。さて、「贈り物」として相応しくないのは、どの品物でしょうか?贈り物として相応しくないと思う品物には×を、大丈夫だと思う品物には○をつけてみてください。
① 職人が手作りで仕上げた伝統工芸品の和傘
② 日本各地の有名お菓子を集めた詰め合わせセット
③ 設立25周年を記念して作ったインテリアとしても美しい木目調の置時計
④ 秋葉原でしか買えない数量限定のキャラクターデザインの可愛い扇子
⑤ 太陽パネルで電池交換の不要なハイテク目覚まし時計
⑥ 会社のエコキャンペーンで製作し、TVでも有名になった緑の帽子
ここで解答を読み進める前に、1分間程度自分で考えてみる時間を作ってみてください。
さて、いかがでしょうか。どれが○か、どれが×か・・・。絶対に贈ってはいけない品物はどれか、考えてみましたか?≪解答≫はこのコラムの最後にあります。まず、≪解説≫を確認してから解説の文章を読み進めてください。
■解説■
詳しい解説の前に、先に「解答」(結論)を述べましょう。答えは①× ②× ③× ③× ④× ⑤× ⑥×です。つまり、これらの品物はすべて「贈り物」としては相応しくないものです。②のお菓子の詰め合わせセットは、品物がダメなのではなく、渡すときの言葉に要注意です。後で詳しく解説します。
まず、最も注意しなければならない品物は③と⑤です。ポイントは「時計」です。掛け時計、置時計、目覚まし時計など、中国ではこのような「時計」を送るということは厳禁です。「時計」は中国語で「鐘」(zhong)と発音します。掛け時計は「掛鐘」(kua zhong)、置時計は「坐鐘」(zuo zhong)、目覚まし時計は「閙鐘」(nao zhong)と言います。
「時計」の「鐘」(zhong)という文字の発音が、「終」(zhong)という文字の発音と同じです。「時計」を送るということは、「終了」、「おしまい」を連想させます。つまり、「私たちの関係をこれで終わりにしましょう」という意味です。大げさに言うと「絶縁状」を叩きつける行為、「絶交宣言」なのです。
また、「時計を送る」という意味の「送鐘」(song zhong)という言葉は、まったく同じ発音に「送終」(song zhong)という言葉を連想させ、この言葉の意味は「親の死に水をとる」、「死者を見送る」、「死者を弔う」という意味になります。例えば、皆さんの家族や友人の結婚式に黒いネクタイをして来た人がいたら、皆さんはどう思うでしょうか?「縁起でもない」、「なんて失礼な人なんだ」と思うでしょう。中国人に「時計」を送るということは、これと同じような感覚です。不吉なことを連想させる常識はずれの行為なのです。
選択肢には「会社設立30周年記念」の置時計とか、「キャラクターデザイン」の目覚まし時計とありますが、これらはあまり問題ではありません。会社のノベルティグッツでもキャラクターデザインであってもそうでなくても、「時計」は送ってはいけない品物です。品物がどんなにりっぱでも、希少価値のあるものでも「時計」は贈ってはいけない品物なのです。
発音の音繋がりで①の「傘」や④の「扇子」も避けたほうがいい品物です。中国語の発音では「雨傘」(yusan)、「扇子」(shanzi)と言います。これらの言葉は、中国語の「解散」(jiesan)、「離散」(lisan)の「散」(san)という言葉を連想させます。つまり、「散らばる」、「ばらばらになる」、「別れ別れになる」という意味。「関係が壊れる」、「縁が遠のく」というマイナスイメージを連想させる言葉なのです。日本でも結婚式では「終わり」と言わずに「お開き」と言ったり、「終わる」や「分かれる」といった言葉を使わないように注意を払います。「時計」「傘」「扇子」などは贈り物としては相応しくない品物なのです。
選択肢には日本的な図柄、伝統工芸、職人が作った、日本ブランドといった説明がありますが、これらは特に意味がありません。「傘」と「扇子」という品物が送ってはいけない品物なのです。
②の「お菓子」について、⑥の「緑の帽子」については次回のコラムで解説します。
To be continued
【答え】①× ②× ③× ④× ⑤× ⑥×
Bridging people, business and culture in Asia
- アジアをつなぐ、人をつなぐ、ビジネスをつなぐ -
「情熱」と「志命」が人を動かす原動力となる
アジアのパワー、ビジネスの現場 の熱気と元気に触れて・・・
ホン気になってビジネスに取り組む人のために・・・
勇気を奮い起こして動き出す第一歩を・・・
仲間たちのネットワークが全力支援
「フットワーク力」と「ネットワーク力」がビジネスを動かす推進力となる
フットワーク力とは スピーディな意思決定、
フレキシブルな変化への対応、
チャレンジ精神を発揮してまずは行動すること
ネットワーク力とは 人と人との繋がり、
人の繋がり大切にする心、
「恕」の精神、信頼できる仲間を作ること
アジアビジネスの「架け橋」になる
- アジアをつなぐ、人をつなぐ、ビジネスをつなぐ -
「架け橋」(橋梁/qiao liang)が仕事のテーマであり、人生のテーマ のひとつ
・海外に進出する日本の中小企業の現地視察、
パートナー探し、ビジネスマッチングを積極支援
・異文化理解に取り組む企業の人材育成、
グローバル研修、赴任者研修を積極支援
・ブリッジコーディネーターの育成、
通訳を活用したビジネス展開を積極支援
ASIA-NETはこのような理念と目標で日々の活動に取り組んでいます。
2013年7月4日
吉村 章
「主張の仕方」、「反論の仕方」など、交渉のテクニックが極めて実践的だ。
中国人の交渉手法についてもあまりにもリアルな取り上げ方なので、
「この著者は中国人が嫌い(?)」なのではないかと思った。
しかし、読み進めていくと、そうではなく・・・、
いかに中国人とうまくつきかっていくかということにエネルギーを注いでいる
著者の情熱が伝わってくる。
同時に、この交渉術は「中国人」を対象とするだけでなく、
グローバルビジネス全般で広く応用できると思った。
著者は「中国人との面子」という本も出している。
この本と合わせて読んでみることをお勧めする。
テクニックだけに頼るのではなく、「交渉術」の前に、
まずは、「異文化理解」を深めることのが大切であることを思い知らされた。
交渉の実践的なテクニックと同時に・・・
中国人の「価値観」や「仕事観」などの背景理解、
つまり、「異文化理解」に目を向けている。
「中国人の面子」と2冊まとめていっしょに読んでみることを、ぜひお勧めしたい。
(アマゾン書評より/By 台湾通信)
実は「譲歩」のカードが持つ意外な有効性・・・
前回のコラムでは、「交渉を有利に運ぶためには『譲れるポイント』が重要なカードになる」というところまで書きました。「譲れるポイント」とは、「交渉では『妥協』、『調整』、『譲ること』が重要である」と言いたいわけではありません。「協調の姿勢が重要」ということを言いたいわけでもありません。
論点を明確にする意味でも、まずは「絶対譲れないポイント」を確認しておくべきです。つまり、「絶対に譲れないポイント」の対極にある「譲ってもよいポイント」を洗い出しておきます。そして、この「譲れるポイント」を交渉カードとしてカードを切るタイミングを考えて有効に使うということです。
交渉に臨む前に、まず「絶対に譲れないポイント」を洗い出します。同時に「譲れるポイント」を考えてみるのです。「譲れるポイント」とは、譲っても大勢にはまったく支障のないポイント、むしろ譲ってしまったほうがよいポイント、気づかずに寝かせてしるポイントがないかどうか、徹底的に洗い出します。
重要なのはこの「譲れるポイント」の使い方です。「譲れるポイント」を安売りして最初からどんどんカードを切ることは不可です。むしろ、相手に譲って欲しいポイントを要求して、その交換条件として日本側の譲れるポイントを提示する。または、譲ってしまってもよいポイントをまず絶対に譲れないポイントのように提示して、そのポイントを譲歩する代わりに相手に対して別の要求を突きつける。例えばこのようにさまざまな使い方ができます。「譲れるポイント」を「見せ札」や「捨て札」として使うこと。「譲れるポイント」を「切り札」のように見せかけて使うこと。これが「譲れるポイント」の効果的な使い方です。「譲れるポイント」を先に徹底的に洗い出しておきましょうという理由です。
持論ですが、交渉はひとつでも「譲れるポイント」を準備しておいたほうが有利です。「譲れるポイント」をたくさん準備しておくことはビジネス折衝や交渉を有利に進める「鍵」になります。日本企業がビジネス折衝や交渉に臨む際にまずアドバイスするのは、交渉に臨む前に「譲れること」(譲ってしまってもいいこと)を徹底的に洗い出してみることです。考え得るすべての「譲歩のカード」を準備しておきます。
日本側にとって譲歩してしまっても損にならないものは何か、相手が期待している譲歩は何か、どのタイミングで譲歩のカードを切るべきか、それに見合う反対給付が受けられるかどうか、あらゆる角度から譲れるポイントを徹底的に探し出します。
実は、「譲歩のカード」はどんなつまらないものでもよいのです。譲ってしまっても大勢には何の影響もないこと、むしろ譲ってしまったほうが好都合なこと、中国側が「譲ってほしい」と考えていることなど、そして、これらを交渉カードとして有効に活用します。つまり、「譲歩のカード」がどれだけ準備できるかが、交渉を有利に進めるための重要な「交渉カード」となります。
ただし、「譲れるポイント」を必要以上に安売りすることは厳禁です。 そしてこの「交渉カード」をどのタイミングで出していくかが大切なのです。効果的なタイミングで、相手からの譲歩を引き出すための交換条件としてうまく利用していくのです。
できるだけもめないように、と担当者が気を配って交渉を進めるケースでは、この「交渉カード」の安売りが目立ちます。「交渉カード」は然るべきタイミングで最も有効に出していくべきです。「交渉カード」の安売りは禁物であり、ぎりぎりまで粘って、相手の出方を見ながら、「交渉カード」の切り方を考えるべきです。
もちろん、譲歩することや妥協することが悪いと言っているわけではありません。必要以上に交渉を長引かせたり、焦らしたり、時間稼ぎをしたり、わざとゴネて相手との関係に波風を立てることが目的ではありません。「譲歩」という切り札を交渉のカードのひとつとして最大限有効に活用すべきだということが言いたいわけです。
そのためには、何を譲ればよいか、どのタイミングで譲るべきか、などをしっかり考えたうえで交渉に臨むべきなのです。まずは担当者がこれらの点を明確に意識してください。大切なカードを有効に使うためには相手側に何を主張(要求)するべきか、事前の作戦会議で十分に検討してみてください。
交渉を有利に進めるポイントは「交渉カード」の準備
「まとめるための交渉」に意識が向くのが日本人。一方、「結果を勝ち取るための交渉」を目標にして粘り強く、したたかに交渉を進めるのが中国人。前回はそんな点を取り上げました。
しかし、「落としどころ」は必ずあります。「今回はまとまらないか、交渉決裂か」と考えると、ぎりぎりまで粘ったあとで、必ず妥協点を提示してくるのが中国人です。最後の最後で「落としどころ」へ結果を導いて決着させるのです。つまり、最終的には「落としどころ」を準備していながらも、それまでは自分たちにとって有利な結果を勝ち取るために、徹底的に粘るのが中国流なのです。「早くまとめること」がよい交渉というわけではないのです。
日本人の交渉の進め方は、果たして譲りすぎてはいないでしょうか?必要以上に譲歩してしまっていないでしょうか。交渉の現場に立ち会っていると、つくづくそう感じることがあります。もっと有利な結果を導き出す方法はないか、主張すべきポイントはしっかり主張しているか、他にも主張すべきポイントはないか、最終的に交渉を終わらせる前にもう一度考えてみてはどうでしょうか。
つまり、早くまとめることがよい交渉なのではなく、最後の最後まで粘り、最終的に自分たちとってより多くの有利な結果を勝ち取ることが交渉なのです。この点が中国的交渉と日本的交渉の大きな違いであると思います。
「譲歩のカード」をできるだけ見つけ出す
「譲れるポイント」は交渉の重要なカードになります。これは持論ですが、いかにたくさんの「譲れるポイント」を準備しておくかがビジネス折衝や交渉を有利に進める「鍵」になります。日本企業がビジネス折衝や交渉に臨む際にまずアドバイスするのは、交渉に臨む前に「譲れること」(譲ってしまってもいいこと)を徹底的に洗い出してみることです。考え得るすべての「譲歩のカード」を準備しておきます。
実は、「譲歩のカード」はどんなつまらないものでもよいのです。譲ってしまっても大勢には何の影響もないこと、むしろ譲ってしまったほうが好都合なこと、中国側が「譲ってほしい」と考えていることなど、あらゆる角度から譲れるポイントを徹底的に探し出します。そして、これらを交渉カードとして有効に活用します。つまり、「譲歩のカード」がどれだけ準備できるかが、交渉を有利に進めるための重要な「交渉カード」となります。
主張することが評価される文化
「イエス」は「イエス」と言う、「ノー」は「ノー」と明確に伝える、曖昧な言い方をせずにつたえるべきことをしっかり伝えることが中国人とのコミュニケーションの基本です。中国人特有のオーバージェスチャーで、自信たっぷりの話し方に圧倒されてしまうこともあります。相手にスキを見せずに、時には偉そうな態度で自らの主張をぶつけてくるのが中国人です。中国人同士で会話をしているとき、時にはまるで「喧嘩」をしているような話し方になることも珍しくありません。
◆主張することが評価される文化
「イエス」は「イエス」と言う、「ノー」は「ノー」と明確に伝える、曖昧な言い方をせずにつたえるべきことをしっかり伝えることが中国人とのコミュニケーションの基本です。中国人特有のオーバージェスチャーで、自信たっぷりの話し方に圧倒されてしまうこともあります。相手にスキを見せずに、時には偉そうな態度で自らの主張をぶつけてくるのが中国人です。中国人同士で会話をしているとき、時にはまるで「喧嘩」をしているような話し方になることも珍しくありません。
◆「以心伝心」は通じない
一般的に中国人は自己主張が強く、お互いの意見を真っ向からぶつけ合います。お互いに譲歩点や妥協点を探りながら議論を進める日本人とはだいぶ違うようです。主張すべきことははっきり主張する。曖昧な表現をせず主張したいポイントをはっきり伝える。これらは中国ビジネスの基本姿勢として心得ておきたいポイントです。言いたいことをストレートにはっきり言う。「イエス」は「イエス」と言う。「ノー」は「ノー」と明確に伝える。時にはまるで喧嘩をしているかのように話すのが中国人です。大きな声で「自己主張」することが「あたりまえ」なのです。
「主張する」「相違点を探し出す」「議論すべきポイントを絞る」。このようなプロセスで議論を進めていくのが中国流のコミュニケーションスタイルです。主張と主張を徹底的にぶつけ合い、主張を出し合ったところで双方の相違点を確認します。議論のポイントを探し出すためには、まずは主張することが大切なのです。
◆「反論」に「反論」することで論点の迷走に注意
彼らの主張に反論すると、必ずと言っていいほどその反論が返ってきます。その反論にまた反論すると、相手はまたその反論を返してきます。反論に反論を繰り返し、時には論点をすり換えたり、議論を蒸し返したり、話をかき回して議論を進めていくのが中国流です。「譲らない」「謝らない」「反論に反論する」というのが典型的な中国人です。
しかし、こうして徹底的に主張をし合う中から譲れないポイントと、譲ってもいいポイントを見つけ出していきます。お互いの主張を1つひとつ確認し合い、最後は「消去法」で論点を絞り込んでいきます。お互いの主張内容を比較して自分にとって分が悪い主張は取り下げ、勝ち目のあるポイントを選び出して議論のポイントを絞り、次の突破口を切り開きます。
◆空気を読み、相手の気持ちを悟る(日本人にとってのあたりまえ)
一方で、相手の気持ちを察し、相手が考えていることを悟り、場の雰囲気を感じ取り、「以心伝心」で話し合いを進めていくのが日本人のコミュニケーションスタイルです。時には、遠まわしな表現をしたり、時にはわざと曖昧な表現をしたり、相手に自分の考えを悟らせるような言い方をします。
必要以上の対立を避け、できるだけスムースに、穏便に、譲り合うことで合意点を見つけ出そうとするのが日本的な交渉スタイルの特徴です。相手の立場や気持ちを考えて、互いに譲り合って、どこかに折り合いをつけながら議論を進めるのが日本的なスタイルです。
相手の気持ちを察しながらこちらの考えを伝えます。すると相手も言葉の背景を読んでこちらが言いたいことを察しながら言葉を返してきます。言いたいことを直接言わなくても気持ちを察し合いながらコミュニケーションを図るのが日本的なスタイルなのです。
しかし、中国では主張することが評価される文化です。主張すべきことを主張し合うことで考え方の違いを見つけ出し、議論すべきポイントを見極めていくのが中国的なコミュニケーションのスタイルです。まずは主張すること。自分の考えをはっきり伝えること。これが大切なのです。
日本人は主張すべきことを徹底的に主張することはどうやら苦手なようです。しかし、相手に遠慮して言いたいことを出し合わないと、議論することができません。消去するポイントを見つけ出すことができないのです。
中国的交渉と日本的交渉の違い
ビジネス折衝や交渉の現場で感じることですが・・・。日本人は交渉に臨む際に、できるだけもめないように、スムースに議論が進むように事を進めようとします。もめずにすんだ交渉を「よかった」と考えるのです。
順調に早くまとまった交渉を「うまくいった交渉」と考えます。つまり、「まとめるための交渉」を意識して交渉に臨むのが日本人です。これは日本人自身が気づいていないのではなかと思いますが、日本人の大きな特徴といえるのではないでしょうか。
もちろん、「もめる」よりも「もめない」ほうがいいことではありますが・・・。中国人はちょっと違う交渉の進め方をしてきます。それは、ひと言で言うと、はもめずに交渉をまとめることより、自分たちの要求を徹底的に主張してくるのが中国人です。まずここが中国と日本と交渉に対して大きな考え方の違いではないかと思います。
中国人交渉とは「闘い」であり、交渉とは自分にとって有利な結果を導き出すためのものであると考えます。つまり、「結果を勝ち取るための交渉」をしてくるのが中国人の特徴です。まとめるための交渉ではなはなく、有利な結果を勝ち取るためには繰り返しさまざまな主張や要求を出してくるのが中国人なのです。
「うまくいった交渉とは・・・」
「まとめるための交渉」と「結果を勝ち取るための交渉」の違い、まずはこの違いを認識しておきたいところです。
例えば、あるビジネス折衝で交渉に臨むとき、その交渉期間を「1週間」とします。仮に交渉開始後3日目でその交渉がまとまったとしましょう。そのとき日本人は「交渉がうまくまとまった」、「今回の交渉はスムースにいってよかった」と考えるのではないでしょうか。「予定より早く終わってよかった」、「いい交渉ができた」と考えるのが普通でしょう。
一方、中国人は仮に3日目でまとまりそうになったとしても、ここで決着させません。「合意点」に近づきつつあるそのポイントから、さらにもう一歩踏み込んだ要求を出してくるのです。3日目では決着させずに、4日目、5日目と別の交渉カードを使って、さまざまな要求を突きつけてくるのが中国的交渉の特徴です。
できるだけ早くまとめることがよい交渉なのではなく、最後の最後まで粘り、最終的に自分たちとってより多くの有利な結果を勝ち取ることが中国人にとっての交渉なのです。もちろん、「もめること」「長引かせること」を目的としているわけではありません。勝ち取るべき結果を明確に意識して、それに向けて「闘い」をしかけてくるのが中国的交渉です。
逆に、そんな中国人を「ずるい」「したたか」と考えるのが日本人です。「手強い」「苦手」とか、「わけがわからない」「だから中国人はいやだ」と考える日本人もいるかもれいません。
しかし、本来ビジネスとは結果を勝ち取るための闘いなのではないでしょうか。ボランティアで万民の幸せ(?)のために慈善事業をやっているだけではないはずです。社会的な責任と公共の利益を考えたとしても、会社は利益を出さなければ成り立ちません。(続く・・・)
中国人との実践交渉術
「すぐに役立つ中国人との実践交渉術」
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■中国ビジネスやってはいけない「禁止事項」や「禁止フレーズ」・・・
最低限知っておきたい「マナー」や注意すべき中国流の「ルール」・・・
負けない交渉をするための「実践的なテクニック」がわかります。
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■中国や台湾への出張の際に「空港の書店」でご覧ください。
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◆中国ビジネスの注意点が一日でわかる「セミナー」です。
http://www.crosscosmos.com/mc1.pdf
◆「海外市場開拓セミナー」<実践編>
中国語版ホームページ制作のノウハウなど
http://www.crosscosmos.com/b-asia.html
◆フジサンケイビジネスアイ 毎週月曜日/朝刊 「専欄」にて
「中国人との実践交渉術」 コラム連載中
http://www.sankeibiz.jp/story/topics/sty13949-t.htm
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