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ルターの肖像画を何枚も残すなど、プロテスタントの宗教改革を理解する上でも重要な作家。宮廷画家だけやっていたのかと思ったら、素早い描写で知られ、版画など工房での大量生産システムも作り、事業として金儲けもちゃんとやっていたり、政治家もやっていたと言うから、ダヴィンチも顔負けの多才な人で、いかにもルネサンスらしい。
プロテスタントのイメージ戦略に乗った画家でありながら、宗教画は案外少ないように思える。ユーディトやルクレティウスと言った女性をモデルにした宗教的エピソードに沿った作品も、エロチシズム漂う“誘惑”と道徳的“警告”と言う相反するメッセージが込められた作品群は、クリムトやエゴンシーレなどのドイツ分離派を彷彿とさせる。
宗教画家と言うよりはその大量生産ぶりから、時代の証人としての側面の方が面白い。肖像画の数々はもちろん名家の人々に限られているとは言え、宗教画とは異なる風俗画として初期の作品だと言える。
西洋美術館なので常設展も楽しみ。お目当てはGustave CourbetとGabriel Dante Rossettiだが、ルネサンス期の作品も、印象派の作品も、そして20世紀の現代アート作品も粒ぞろい。世界遺産に選ばれた建物もさることながら、やはり日本の美術館としては飛び抜けて優れたコレクションを所蔵する美術館だと思う。
それにしても、館内で聞こえる会話は中国語が多い。マナー違反と批判することもできるが、少なくとも日本人より貪欲に文化的洗練を吸収しようとしている。アジア圏ではそれなりに日本が先進国だが、中国の文化的洗練も侮れなくなってきた。