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株式会社ドットレッドオーディオデザインズ公式ブログ(日本語版)

WORKFRAME84の設計思想(その3)

2017年07月03日 | モジュラーシンセ

ブログ担当の後藤です。

あまり小出しにしてると、"いったいいつまで続くのか?シリーズ"になってしまうので、巻いていきたいと思います。

では、早速。

 

Q3.レールは自社製ですか?

A3.はい。弊社のオリジナル・レールです。

 

日本にお住まいで、ケースを自作されてる方などは、タカチ社の「FFR」やTipTop社の「Z-Rail」といったレールを

使って製作されているかと思います。

それらと何が違うのか?という目線で弊社のレールのアドバンテージを説明したいと思います。

下の図は、TipTop社の「Z-Rail」と弊社のレールの断面形状を比較した図です。

 

 

モジュールを取り付けるネジの中心を基準に、そこからケース内側方向(図で言うと下方向)の寸法に注目してください。

弊社のレールは、TipTop社の「Z-Rail」よりも、0.8mm薄くなっています。

ということは、弊社のレールを使用すると、上下のレールで合計1.6mmのクリアランスが確保できることになります。

「WORKFRAME84の設計思想(その1)」で、モジュールの基板が若干大きいものだと、"ケースに入らないモジュール"が存在すると

書きましたが、弊社のレールであればケースに入らないという問題を解決できます。(それでも入らないとなると、根本的に問題でしょう)

TipTop社の「Z-Rail」は、Doepfer社が採用しているGie-Tec社のレールと同寸法なので、基本的にはTipTop社の「Z-Rail」を使ったケースで

入ることが前提だと思いますが、それで入らないモジュールも弊社のレールでは救えることができます!

ただ残念なのは、弊社のレールはWORKFRAME84しか採用していないことなんですが...

 

もう1つ。

弊社のレールの特徴は、3箇所に開けられた、四角ナット出し入れ用の穴があることです。

四角ナットにすることで、モジュールの取り付け位置を微調整できたり、モジュールの交換で磨耗したナットがネジ馬鹿になったときは

低コストでナット交換できるなどのメリットが有ります。

四角ナットの交換や補充の際に、ケースの側面を外すとなると、やがてケースの側面のネジもネジ馬鹿になったり....

実際、某社のケースは側面が木製パネルになっていて、早い段階でネジ馬鹿になりました。

弊社のレールは、ケースの側面を外すことなく、四角ナット出し入れ用の穴からナットを出したり入れたりできます。

穴を3箇所にすることで、最低限のモジュールを取り外すことでナットの交換・追加が可能です。

ただ、難点を言えば、ナットや穴が小さくて細かい作業が苦手な人には、恩恵を十分に授かれないです。

その場合は、100円ショップで売られている磁力の強いマグネットを利用すると良いです。

四角ナットは、磁石に着きますが、レールはアルミなので、磁石が着きません。

このシュールな動画でご確認ください。

 Tips for WORKFRAME84 [How to set/remove a square nut]

 

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Q4.なぜヘッダーが14個も有るのですか?

 

A4.モジュールの位置によってケーブルが届かなくて困ることが無いようにとの気遣いと、

  ヘッダーへのプラグの挿しやすさを考えた間隔とのバランスで14個としました。

 

  ....と言いたいところですが。

  正直言いますと、Doepfer社の"A-100 bus board"との互換性を持たせた結果です(汗)

 

  Doepfer社の"A-100 bus board"が、なぜそうなってるのだろう?と考えてみたところ、

  確かに、14個はちょっと多そうに思います。

  が、Doepfer社の真意はさておき、実用性を考えてみると....

  モジュールに付属されているケーブルは長さに一貫性がありません。

  また、モジュールのパネルサイズも2HPというものもあれば、34HPというものなど様々な寸法があるので、

  取り付け方によっては、モジュールに付属のケーブルではヘッダーまで届かないことが発覚して、やむなく

  モジュールの位置関係を変更せざるを得ないなんてことが起こりうることが予想されます。

  それを考えると、ヘッダーへの挿しこみやすさも考慮して、14個くらいが適切な間隔で配置されているのは、

  理にかなっているように思います。

  なので、基本的にDoepfer社の"A-100 bus board"と同じです。

  違いは?というと

  ・メイン電源からの供給部分が違います(弊社"POWER RAIL"は日圧のVHコネクターを採用しています)。

  ・ヘッダーがBOX形状になっています(誤挿入を防止するため)。

  一応、後発ならではの改善を施してます。

 

 

Q5.フライングケーブルじゃなくてバスボードなのは何故?

A5.電源電圧のドロップを低く抑えることと音質を考慮した結果、バスボードとしました。

 

 フライングケーブルはこれ↓です。

 

 電気の通り道となるリボンケーブルなんですが、線が細いので、電流をたくさん流すと電圧がドロップします。

バスボード(プリント基板)でも、多少ドロップすることはありますが、リボンケーブルに比べれば、1桁違うくらいの差です。

例えば、フライングケーブル使用時に0.5Vドロップするとしたら、バスボード使用時は0.05Vという具合です。

0.5Vのドロップは、モジュールの設計次第では、不具合が生じることもあります。

エッチングパターンの幅が適切に設計されたバスボードを使うことで、不具合に対するリスクは低くなります。

弊社の電源ユニット"POWER BASE"にバスボード"POWER RAIL"を接続する専用ハーネスが太い線になっているのは、

電圧のドロップを最小限にするためです。

電圧のドロップを抑えることは、音質にも良い影響を与えます。

電源の設計にも依りますが、歪みが少なく、立ち上がりの速い発音になると、リズム感・テンポ感が良くなります。

場合によっては、フィルタの効き具合も変わります。

 

 今回は以上です。

次回は電源(POWER BASE)のことについて書きたいと思います。