クタバレ!専業主婦

仕事と子育て以外やってます。踊ったり、歌ったり、絵を描いたり、服を作ったり、文章を書いたりして生きています。

子なし専業主婦という生き方

2023-05-02 14:05:16 | エッセイ

10階のビルから豆腐を落としたような気分…

 

私が昨日、中国語の体験レッスンを終えた後の気持ちです。中国語は少しだけ独学で触れていたので、レッスン内容自体は独学の範囲内で内容を深めることができてよかったです。ただ、先生との相性にピンとくるものがありませんでした。ここで落ち込んでしまってはまた暗い穴に逆戻りなので、5月中は色んな体験レッスンを受けに行って最終的に何を学ぶのか決めたいと思います。

 

先生「今日はお休みですね。」

わたし「あ、先生のご家族がですか?」

先生「いえ、海鷂鳥さんが、です。」

わたし「あ、私、仕事していないので。」

先生「それは、幸せですね!じゃあ、お子さんは?」

わたし「あぁ…いないです。」

先生「じゃあこの先できますね?」

わたし「あ…この先もできないと思います。」

先生「いや、そんなことはないです、きっとできます。」

 

これは、レッスン後の中国人である先生との会話です。こういう会話を昨日以外にも20代、30代で何度も経験してきました。その度に尋問されているような…責められているような…自分の人生や存在を否定されているような…胸がギュッとなって心が小さく萎んでいく思いをします。そんな自分を相手から庇ってやることもできず、ヘラヘラと愛想笑いでその場をしのごうとする自分にも腹が立つのです。一方で、説明するのも面倒です。カロリーを使って私なりの事情や心情を説明したとしても、相手にはあまり理解されないでしょう。

 

この質問をされる時、質問をしてくる側にとっては働いているか子育てしているか、あるいはその両方をしていることだけが正解なのだと感じます。そこから外れると「あら、どうして?」と、聞かれます。初対面の人に言われることがほとんどです。そこでまず人として値踏みされている気がします。けれどこのやり取りはもう「定型文」なので、これに対するアンサーを自分自身が持ちたいです。

 

今日は少しだけ、画面の向こうの“誰か”を意識して書いてみます。

 

私は現在40歳です。既婚です。夫とペットのうさぎと暮らしています。仕事はしていません。子なし専業主婦です。高校を卒業してから結婚するまでは、色々な職業を転々としながら働いて一人暮らしをしてきました。家を出たのは21か22歳の頃だったと思います。ほぼ家出でした。

 

私は子どもの頃から精神的にも肉体的にも両親から虐待を受けてきました。それは大人になってからも続きました。父はいつも酒を飲んでいて機嫌が悪く、部屋の隅で息を潜めてじっといたとしても「なんやその目は!」という理由で怒鳴られたり殴られたりしてきました。そんな私を母が庇ってくれたことはなく、常に弟だけを大切に扱い、ストレスやうっ憤を理不尽な理由で私にぶつけてきました。母は宗教二世で、目の前の私のことは信じてはくれないのに、教祖と仏壇だけを信じている人でした。人をこんなにも傷付ける人間が、神を信じて神に祈って救われようとしている姿がバカバカしく、宗教家である母のことは今でも軽蔑しています。

 

私には興味があること、やりたいことがたくさんありました。けれど、両親はその都度根が張る前に根気よくその夢を摘んでいきました。暴力と精神的圧迫で心も体も潰れていきました。子どもの頃から不安定でしたが、14歳で遂に死にたいと思うようになりました。常に監視され、時には家に監禁されて、友人や彼氏を私の目の前で恫喝して関係を断つよう迫られました。

 

脳みそが揺れるのがわかるほどの暴力を受けて、私はますます壊れていきました。19歳でパニック障害を発症し、遂に息ができまくなりました。電車にもバスにも乗れなくなりました。両親にそのことを告げた時も父に全身を殴られ蹴られ、その時の私の様子を見た母が初めて身体を庇ってくれましたが、後日「これはこれだけど、甘やかすことはしないから。あんたが悪いことはこれからもお母さん厳しく注意していくから。」と凄まれ、私は当時の不倫相手の手助けを借りて遂に家を出ました。彼がいなければ、私が私を殺すか、親が私を殺すか、私が親を殺していました。

 

パニック障害をきっかけに、あらゆる精神疾患を併発していきました。もう既に子どもの頃から予兆があったのだと思いますが、新しい病院へ行く度に新しい病名を付けられ、色んな薬を飲まされ、副作用と依存に苦しみ、それでも両親は両親のままでした。けれど、仕事を辞めてしまったら収入を失って実家に逆戻りなので、薬漬けになってでも働きました。それが私の症状をより拗らせていきました。

 

音楽をきっかけに夫と出会ったのですが、当時夫はほぼニートで二人とも満足な収入も貯金もないままで結婚しました。それまでの恋愛も不安定なものばかりで「好きな人=一緒に地獄に落ちて欲しい人」だったのですが、夫のことは“好きな人”というよりは“一緒に生きていきたい人”でした。それを機に、私は自分の療養の為に仕事を辞めて専業主婦になりました。

 

結婚したからと言って私の症状が治るわけではありませんでした。幼い頃から鳴り響き続けた頭の中の警告音は、安全で安心な暮らしを手に入れても私を自由にはしてくれず、それまでと同じように苦しみ続けました。周りを傷付け、夫も疲労困憊していきました。家の中にモンスターがいる状態です。私はカウンセリングを受けながら、自分の心を少しでも健康な状態に戻していくことだけに専念しました。それが家族を救う道でした。働きながら…子育てしながら…私には絶対に無理でした。30年間を生き直す為には、完全に療養できる長い期間が必要だと確信していましたし、結果そこから今日まで10年かかりました。

 

今も精神科に顔を出していますが、もう今は病気じゃないねと言われています。ですが、後遺症として様々な課題や弊害は残るので、社会不安やフラッシュバックに苦しみ、不安定と安定を繰り返しながら、夫の支えもあり、なんとか人の手を借りずに普通に近い暮らしができています。安定剤を飲む機会もぐっと減ったので、遠方へ遊びに行く機会も増えました。公共交通機関にもまた乗れるようになりました。けれど相変わらず人との接点は少ないし、苦手だし、怖い…。でも、少しだけ前に踏み出したいなと思っています。まだそんな段階なんです。

 

子どもは持ちません。妊娠した経験はありますが、子どもが欲しいという感情だけは最後まで持つことは出来ませんでした。それがどういう感覚なのか、どうしたら自分もそう思えるのか10年間の中で必死に考えましたが、得られませんでした。どうしても自分が育った幼少期を思い出してしまい、自分が虐待する側になっていることしか想像しかできず、子どもという存在によって自分がどんどん追い詰められていく未来しか思い描けませんでした。私は私を生かすだけで精一杯でした。

 

共感しない人は大勢いるでしょう。「似たような環境だったけど、それでも頑張ったし努力したし、あなたのはただの甘えだ」と非難する人が多くいることもわかっています。その人たちに認められようとも思いません。こんな思いは共感できない方がいいのです。だから、私はその人たちに向けてい書いているのではなく、私自身と、悩んだり苦しんだりしているこの画面の向こうで生きる「あなた」に向けて書いています。私もそうやってどこかで生きる誰かの言葉や存在に絶望を救われてきました。

 

人の顔や体の特徴や皮膚の色が違うように、心だって人によって大きさも柔らかさもさまざまで、強いとか弱いとか、メンヘラとかって言葉で切り捨てれば簡単ですが、人に対して平気で「メンヘラ」と言える人の心の方に私は病みを感じます。「ふつう」という言葉の暴力にもげんなりします。「あの人ちょっと病んでない?」と他人事のように笑っていた人が、ストレスで心の病になって日常を失った様子も目にしましたし、追い詰められたら人は当たり前に壊れます。それが人間です。そうなったら化け物のように恐ろしいモンスターになってしまうことも身をもって体験しました。そして、それだけがその人のすべてではないことも知っています。回復もできます。でもまた、何かにつまずいたらとても弱ってしまうかもしれません。それでもぎりぎりの状態を隠して生きている人の方が多いのではないでしょうか。

 

閲覧数の少ないこの場所が、誰かの目に届いて、その人が今日死ぬことを諦めてくれれば、その先一週間はその人が生きれるかもしれない。その中でもしかしたら何か見つけられるかもしれない、そんな小さな光と希望のためだけに私は書いています。本当はもう自分の過去のことはあまり書きたくありませんでした。フラッシュバックするし、書いたところで過去はどうにもならないことはわかり切っているからです。けれど、昨日のことを今一度自分の中で整理する必要がありましたし、そのことが誰かの安心に繋がってくれたら…なんて、思いました。

 

これからも私は同じ質問をされて、同じようにヘラヘラと笑ってやり過ごすのかもしれません。けれど、私だけは私のことをわかっていてあげたいです。小さな希望ではあるけれど、「もう一度何かしたい」という自分の心の芽を摘まず、育ててあげたいのです。子育てはできなかったけれど、代わりに自分のことなら育てられます。社会の役には立てていないかもしれないけれど、自分の命を殺さずに生かしてあげるこの小さな取り組みが、誰かや何かに繋がってくれたらいいなと思っています。

 

― 海鷂鳥 ―



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