エロゲ感考おきば

エロゲの感想をメインに、時たま考察を綴ろうと思います。ネタバレありで書きますが、注意書きは入れるようにします。

月の彼方で逢いましょう_感想

2019-07-30 18:56:22 | エロゲ感想



はじめに
とりあえず未プレイの方も見れるような簡単な感想だけして考察でネタバレ入れていこうかと思います。
tone'worksの前作『銀色、遥か』が非常にボリューミィな内容だったので身構えていたのですが、あそこまで長くはなかったです。とは言ったものの一般的なエロゲと比べたらやっぱり量が多いです。
プレイ順なんですが、これは公式が雨音ちゃんラスト推奨って言ってたので従って、灯華→栞菜→うぐいす→霧子→きらり→聖衣良→雨音の順にプレイしていきました。結果から言うと、考察的にも思想的にもキャラの可愛さ的にも雨音ちゃん最後で間違いないです。とりあえず流れをくみたいなら灯華を、それとアフター三人は先にプレイしておくべきかと思います。

感想

本作の一番の魅力は、創作に対して興味をそそられることだと思います。高校時代、奏汰は文芸部でうぐいす先輩に見せるために文章を書いてっていう流れで物語を作っていくのですが、この物語がルートごとに異なり、それによって物書きとして上手くいったりいかなかったりします。いずれにせよ、物語が奏汰の人生を決めてると言っても過言ではなく、物語というのは全登場人物通して重要な要素なようです。そして漫画家の栞菜先生に、作家のきらりさん、編集長の霧子さんと形はどうであれ実際に物語の制作に関与しており、それに加え、アフター三人の話は現実寄りな内容となっていたこともあり、話の作り方だとか、編集の仕事だとか、作家の悩みだとかを見ているときが楽しかったです。ただこの三人のルートは短いのが玉に瑕であります。


各ヒロインの感想です。
・灯華√
さすがメインヒロインって感じでシナリオの締めまで良かったです。ただ不満点もあった。
・うぐいす√
聡明そうに見えて少しおちゃめなうぐいすさんが可愛かったです。ただ不満点もあった。
・雨音√
高校生の頃の雨音ちゃんが最高に可愛かった。最後はガチ泣きした。
・聖衣良√
可愛かった。そしてエロくなった。
・栞菜√
もうピュアピュアできゅんきゅんでした。ハガレン読み返したくなりました。
・霧子√
妥協しないところがかっこよかった。自分で年齢を気にしてるところが可愛かった。
・きらり
エロかった。

簡潔に書くならこんなもんだと思います。ぶっちゃけキャラは全員可愛かったです。特に雨音ちゃんと栞菜先生。ピュアなところが良かったです。この二人はシナリオも最高でした。この二人の√の担当だった白矢たつき先生すげぇってなりました。



唯一の不満点は、SF要素を使いこなせていなかったことなんじゃないかと思います。特に灯華と他ヒロインの話が水と油な気がして上手く組み合わさっていなかったと思えてくるのは私だけでしょうか。あと処女厨の皆さんなら物語の裏側で行われているあの異質さに気づいたことでしょう。ここらへんの話について次の考察で触れようかなと思います。




※この先、ネタバレ注意※




考察
考察と言っておきながら、中々不満混じりのものになってしまってますが、ご了承ください。
まず、全ての問題の出発点は灯華√にあるのです。そして他のルートを進めていって雨音√までクリアするとさらに悲しい現実が待っています。
雨音√で、過去に繋がる条件というのが全て明らかになります。
その条件は
1.通信の送り手と受け手と観測者が必要
2.観測者は死者である
3.スーパームーンの日に世界線が統合される
といったもので、そして共通アフター編で奏汰が過去にメッセージを送れたのは灯華が観測していたからです。つまりアフター編で灯華は死んでしまってるのです。そう知った上で、アフター三人の√について考えたら萎えました。さすがに死人の傍らでイチャイチャできるとはとても思えません。雨音√を先にやってたらたぶんつきかなのプレイ投げてたかもしれません。

 また灯華√自身についても不満点はあります。はじめ灯華と恋愛関係に至らなかった奏汰はアフター編で高校時代の自分と通信を始めます。そして社会人の奏汰のアドバイスによって、高校生の方は灯華と付き合い出すのですが、段々この高校生の奏汰は社会人の方の忠告に聞く耳を持たない傲慢な性格になっていきます。口先だけで勇敢なことを言って見せ、若干不良ぶった言動が鼻につき、こいつにとことんイライラが募ります。

果たしてこんな傲慢な奏汰を本来の奏汰と同一人物と言っていいのでしょうか。
 
 人の人格というのは、その人が過ごしていた環境だとか経験だとかによって決まるといいます。同じ遺伝子を持っていたとしてもその後どう生きたかによって全く別人格になります。現に、二人の奏汰の性格の不一致には違和感を超え不快感すら感じるほど強烈でした。つまりこいつは奏汰ではなく、奏汰の偽物なのです。そして偽物に対し、バカみたいに股を開く灯華。初めの善良な方の奏汰を主人公だと思っていた私には、このシーンは意識を乗っ取られた上でNTRれたような、けれど全くもって抜けないようなそういう不可解な情景として見れました。抜けなかったのは偏に灯華の人格もどこか狂っており、こちらも意識を失って、外見だけ似せた全く別の動物が二匹交尾を行っているように思えたからであります。
 
 その後、まともな方の奏汰が色々調べて上げたおかげで灯華は無事助かり、そんなこんなでスーパームーンの日になって、この傲慢な方の奏汰と統合されてしまいます。そしてそれは灯華も同じです。彼女の場合、死んでいた状態から生き返りますが…。電波塔の上で感動の再開を果たした頃には灯華はすでに非処女です。奏汰も非童貞です。しかしまだこのままだと奏汰は灯華とえっちをしてないのです。事実は存在しようとも経験は伴ってないからです。そして何事もなかったかのように物語は終わります。むしろ何事もないまま終わるのです。
処女性に関して新しい観点を呈したというところは評価すべきなんだろうけど、個人的な感想としてはあまりよろしくなかったです。
 
 あと灯華は死んでるせいで他のアフター編に一切登場しない独立した存在で、加えて一番初めに攻略したこともあり、メインヒロインのくせに攻略以来、完全に空気のように影の薄い存在でした。各ヒロイン、他のルートでも見せ場があるんですけど、灯華だけはなかったです。そもそもいないのだから仕方ないのですが。アフター編に登場するのが自身のルートだけっていう――このせいで灯華だけ本作において他の部分と交わりのない水に浮かぶ油のような存在だったと思いました。そしてメインヒロインの座を完全に雨音ちゃんにもってかれちゃった感じがしました。雨音√では、つらい過去があったからこそ今があるのだと、過去も尊重すべきだと思い、改変を行わないのです。もちろん奏汰に出会えたということもあると思いますが、これは灯華√とついでにうぐいす√を完全に否定してしまっているのです。そして私は雨音ちゃんが言ってることの方が正しいと思いました。たとえ蘇らせることができても、死者は死者のままにして生きていくべきなんだと思います。そう考えてしまうと、どうも灯華√とうぐいす√がかすんで見えてくるわけです。

あんまり批判ばっかりするのもあれなんで、雨音ちゃんの可愛さについて語って終わろうと思います。

個人的に恋に無自覚なまま奏汰を大好きになっていくっていう友達以上恋人未満の関係がとても気に入っています。
バイトを頑張る雨音ちゃんも可愛かったです。と同時に引きこもってバイトをやり過ごそうとする雨音ちゃんも可愛かったです。
炊事も洗濯も掃除も家事は何一つできなかった雨音ちゃんがいつの間にか随分家庭的になってたことに関心しました。
結婚式前夜の両親に一度だけ再開するシーンは号泣ものでした。