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本と音楽とねこと

父として考える

東浩紀・宮台真司,2010,父として考える,日本放送出版協会.(2.24.25)

娘ができて初めて見えた日本社会の問題点とは?若者の非婚や少子化をいかに乗り越えるか?育児体験の比較から、教育問題や男女のパートナーシップのあり方までを論じ、「子ども手当」など保育支援策を検討。ツイッターなど新メディアを利用した民主主義の新たな可能性まで、今日の知的課題をも浮き上がらせる白熱の討論。

 宮台さんが言うところには、なるほどそうだよねと共感する部分が多いと同時に、それ、ちがうくね?と疑問をもつところもある。

 一つは、性愛(の経験)の価値の称揚が過剰じゃね?ということ。
 あんたが性欲モンスターなだけでっしゃろい。笑

 もう一つは、家族の価値の称揚についても過剰じゃね?ということ。
 たまたま、自分が配偶者や子どもに恵まれた者のポジショントークにしか聞こえないんだよ。

 東さんも宮台さんも、女性には結婚によって人生のあり様が激変する「バックドア」問題があると言う。
 高学歴女性には、「加齢による市場価値激減問題」(宮台)があり、バックドアを生かせなかった者は、結婚による階層上昇移動のチャンスを逸する、ということなのだろう。

 こうした言説は、「結婚適齢期を逃すといき遅れになるぞ」という昭和オヤジの物言いとどうちがうと言うのだろう?

宮台 (前略)
 結局、女の子だけじゃなく男の子にとってもバックドア問題は重要です。わかりやすく言えば「困ったときに助けてくれるひとがいるかどうか」なんです。「だれかに助けてもらえるかどうか」は「だれかを助けてあげられるかどうか」と表裏一体です。「愛されるかどうか」は「愛せるかどうか」と表裏一体です。
 シンプルと言えばシンプルなことで、「自分が幸せになろうと思えば、ひとを幸せにするしかない」「ひとを幸せにできる人間しか、幸せにはなれない」という基本公理です。愛されるというのは媚びることじゃない。媚びてもひとを幸せにできませんから。
(p.190)

 昭和オヤジみたいな戯言ぬかさずに最初からそう言えよ。笑

 東さんと宮台さんは、上野千鶴子さんの「おひとりさま」擁護論にも噛み付く。

宮台 結論ははっきりしていて、「ひとりきりになっても経済的に困らないように独り立ちしさえすれば・・・・・・」なんてのは、社会が経済的に順風満帆だった時代の、単なる甘えです。甘え以前に、単なる馬鹿だと断言していいでしょう。経済的自立は大切だけど、経済的困窮に陥ったときに支えになる人間関係があっての話でしかありません。
(p.192)

 上野さんは、経済的に自立していさえすれば万事ノープロブレムと言っているわけではないし、誰にも依存せずに、自分の力だけで生きていくことを称揚しているわけではないでしょ?
 他人さまの言うことを勝手に捻じ曲げて叩いちゃいけないよね。

宮台 僕は上野さんの周りにいる団塊おばちゃんたち的取り巻きもそれなりに見てきました。そこにはたしかにトラウマ共同体があります。それが上野さんをずっと支えてきた。それは事実です。でも『おひとりさまの老後』については、トラウマ共同体に共感する読者層プラス、ひとり寂しく死ぬことに対する不安を抱えた層も読者として加わっています。
 つまり「自分はひとりで生きるしかない、どうしたらいいんだろう、そうか、『備えあれば憂いなし』なんだな」というひとたちがいて、それは必ずしもトラウマ共同体の団塊おばちゃんとは重なりません。でも、現実には「備えあっても憂いあり」なんだよね。それが「ひとり寂しく死ぬ」という問題です。その解決策が、シングル女性同士でルームシェアですか。ちょっとお笑いだな。
(pp.196-197)

 宮台さんは、配偶者と子どもに看取られて逝くことを夢見てんだろうか。
 だとしたら、おめでてーな、と言うしかない。
 人間、最期は、ひとりで死んでいくわけじゃん。
 それから、上野さんは、血縁、婚姻縁ではなく、友人縁で扶助し合う共同体を推奨しているわけでしょ?
 自分が「家族」を大事にしているといって、勝手なポジショントークするんじゃねえよ。

【後編】宮台真司/不倫スキャンダル後の家族会議/ナンパ師として未成年売●調査/つまらない日常を打開するためのヒント

 家族という共同体を維持、修復するのもたいへんだね。笑

 以上のように、違和感をもった部分はあったけれども、総じておもしろかったな。
 この二人はさすがだな、とあらためて思った。

目次
第1章 親子コミュニケーションのゆくえ―家族を考える
時間感覚の変化
宮崎アニメへの反応 ほか
第2章 子育てを支える環境―社会を考える
ロスジェネ系議論の問題点
専業主婦願望の背景 ほか
第3章 均質化する学校空間―教育を考える
グループワークができない子どもたち
なぜ班活動は衰退したのか ほか
第4章 コネ階級社会の登場―民主主義を考える
運命の出会いと必然性信仰
バックドア問題 ほか


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