井上荒野,2024,錠剤F,集英社.(11.15.24)
短編の名手が、日常の隙間にひそむ「孤独」を描き出す―著者史上最もグロテスクで怖い10の物語から成る、最高精度の小説集。バイト先のコンビニに現れた女から、青年は「ある頼みごと」をされて―「ぴぴぴーズ」。男を溺れさせる、そんな自分の体にすがって生きるしかない女は―「みみず」。刺繍作家の女は、20年以上ともに暮らした夫の黒い過去を知ってしまい―「刺繍の本棚」。女たちは連れ立って、「ドクターF」と名乗る男との待ち合わせに向かうが―「錠剤F」。…ほか、あなたの孤独を掘り起こす短編10作を収録!
読んでいて、ざわざわ、もやもやする不快感が、人間の負の感情に慣らされて、いつの間にか快感に変わっていく。
こんな不思議な感覚を味あわせてくれる作家は、井上さんをおいてほかにないような気がする。