桐野夏生,2005,冒険の国,新潮社.(12.21.24)
永井姉妹と森口兄弟は、姉と兄、妹と弟が同級生同士で、常に互いの消息を意識してきた。特に、弟の英二と妹の美浜は、強い絆で結ばれていた。が、ある日、一人が永遠に欠けた。英二が自殺したのだ。美浜は、欠落感を抱えたまま育った街に帰って来る。街はディズニーランドが建設され、急速に発展していた。そこで、美浜は兄の恵一に再会する。バブル前夜の痛々しい青春を描く文庫オリジナル。
桐野さん、小説家キャリアごく初期の作品。
物語は淡々と進む。
あっと驚くようなできごとも展開もない。
あとの桐野作品と比べれば少々退屈かもしれないが、桐野ワールドの元型を本作に見ることができる。
桐野夏生,2017,ローズガーデン(新装版),講談社.(12.21.24)
女探偵・村野ミロの濃密な人生を綴る、シリーズ初の短篇集。高校二年生のあの日。薔薇(ばら)が咲き乱れる自宅のベッドで、ミロの口から「義父と寝た」という驚くべき話を聞かされた。「俺」は激しい嫉妬に囚(とら)われ興奮した──。ジャカルタで自殺した前夫・博夫の視点で、村野ミロの妖艶な青春時代を描いた表題作など、4つの事件簿からなる短篇集。「ミロシリーズ」第3弾!
本作は、思春期のミロのセクシュアリティを描いた「ローズガーデン」と、探偵、ミロの活躍を描いた三つの短編小説から成る。
後者、推理小説三編は、どれも抜群のおもしろさだ。
目次
ローズガーデン
漂う魂
独りにしないで
愛のトンネル
解説 桃谷方子
「新装版」解説 千早茜